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詩人・物部木絹子さんについて

はじめに
 
これを書いた僕についてですが、普段は看護師をしております。『ヨシ』とでも呼んで下さい。物部さん(本名・高橋由子)のパートナーでした。

 彼女は、2024年6月13日に亡くなりました。
今回は、そんな彼女のことについて、僕の視点からその人となり及び作家・詩人像を知ってもらえたらと思い、この記事を書くに至りました。全文無料にするつもりですが、サポートでもし頂いた分は紛争地帯(主に現在はガザ地区)への寄付に充てさせて頂こうと思います。彼女なら、それを望むと思うので…

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蝶は魂を意味すると最近聞きました。彼女も蝶は好きなようでしたが、彼女自身が蝶ではないかと思うほど、浮世離れした、僕にとっては天使のような存在の、とても美しい詩を書く美しい人でした。僕自身、今まで小説や詩や哲学などは全くと言っていいほど興味がなかったのですが、彼女の死をきっかけに触れるようになると、その奥深さに戦慄に似た感覚を覚え、今では自分でもひっそりと詩を書くようになりました。

彼女はとても内向的で、パートナーである僕にさえなかなか話してくれないことがよくありました。非常に繊細で優しいだけでなく、芯が強く、人の痛みに寄り添って行動できる強さも備えた人でした。2021年8月、文芸社さんより自費出版で『スートピア』という小説群の本を出版しました。これは僕も読みました。
本人は『Amazonの星の評価は低いし展開が自分勝手って言われるし、やっぱり私に才能はないわ…』と落ち込んでいました。また、「『読んで傷ついた』と言ってた人がいる。読む前は私に好印象持ってくれてたみたいだからよけい、それが申し訳ない」なども言っていました。
彼らがどういう基準で評価したかはわかりませんが、僕は、彼女の小説は『純文学』や『大衆小説』『ラノベ』など区分するような評価の仕方に納まらないものだと思っております。
『スートピア』は彼女が、世間がなんと思おうと、僕は傑作だと思っています。読んでいて、ほんとうに純真な人が書いているのだな、とわかるのです。

また、彼女は福岡拠点のしろねこ社様より『空中傍観者』という詩集も出しています。こちらも拝読しました。
著名な詩人の方で、『シャボン玉のように繊細な詩篇群で、すぐに壊れてしまいそうで感想が詳しく書けなかった』『才能は十分認めていた』旨の呟きを見かけました。またその同じ方が、購入時すぐ、感想とは言えずともちらりと、『どこまでも自身であろうとする著者のもがきが読者の胸を打つ』と書かれていたのも拝見しました。お名前は伏せますが、凄く本質を見てくださっていたのだな、そして、慎重に、いろいろと考えて下さっていたのだな、と思いました。僕は詩歴は浅いですが、彼女の詩は基本、真っ直ぐの銃弾もしくは正拳パンチなんです。

彼女自身がそうであったように。

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最近、文学のことをちょくちょく学ぶうち、彼女は宮沢賢治に似た人だったのでは、と思うようになりました。彼女も、中学生のときにプロテスタント教会に通いだしましたが、実家の、特に父親が威圧的な人で孤独な心境のまま洗礼を一人受けたのではないか、と思います。(19歳で受けたみたいです)

でも、通う教会の牧師が神社や他宗教の悪口を言ったり、(20年近く前のことだと思いますので今はわかりません)
『毎週教会に来ないあなたは救われない』などの教会の方からの言葉、果ては進化論と天地創造論の矛盾などで心から信仰できなくなり通わなくなった、と話してくれました。あまり語らないなかで語ってくれたことの一部なのでよく記憶しています。

その後、信仰しているかはわかりませんでしたが神社の巫女を率先してやったり神社の御朱印を集めたり、祝詞を唱えたり瞑想したりしていました。僕が思うに、とても真っ直ぐで優しい人だったので、この社会で生きていくには何か聖なるものに縋りたかったのではないかと思います。

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いろんな人から話をきくに、これまで自死せずにいたのが不思議なくらいほんとうに繊細で、それでもその感性を守りぬいた人なのだと思います。思春期頃からずっと自律神経失調症で社会参加もままならなかったみたいです。それでも、いつも相手を気遣っていた人です。優生思想の強い感覚の保護者に育てられた方なので、とても『自分はだめな人間だ』と思わせられていたのではないかと思います。彼女の作品を読んだら改めてそう思いました。


物部木絹子さんのXアカウント(@yuko_momen)


皮肉にも、亡くなってから、たくさんのことを教えられました。そして、文学、詩、ことばの持つ力を、心から、改めて、実感しました。

彼女のような、詩人の心を持った方がそのままでいられるよう、僕自身職業柄も、そしてプライベートでもできることは率先してやっていきたいです。

ここまで読んで下さった方、ほんとうにありがとうございます。非常に冷酷な世界となっております。どうか、誰もが幸せになれますように。


物部木絹子さん(自宅にて)


(下鴨神社にて)

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