このトロイメライにさよならを告げて
今日もまた、揺蕩う心に泳いでいる。
揺れた心が、今日も私を締め付ける。
あぁ、私にもうちょっと勇気があれば、なにか変われたのか。
そんなもやもやを抱えながら、今日も私は泳いでいる。
「へい!今日もしけた顔してるならうむの姉さんよ!」
「サモン君・・・」
「もしかして彼のことかい?」
「・・・」
「無言は肯定と受けとるぜ☆」
「・・・」
そう、私は、随分と前から、ある人間の男の子に恋をした。
しかし私は、人の集合的無意識に住まうセイレーン。人と交わる事は出来ない。
少なくとも、そんな前例は、無い。
「ふむふむ、これは・・・あの昔話みたいだな」
「昔話?」
「人間達に伝わる話では、いまの姉さんみたいに人種を超えた恋物語ってのはあるらしいぜ!少なくとも人間達では、こんなの夢でも幻でもないんだぜ。今は色んな人種がいるんだから」
「そう・・・なんですね」
「おや、もしかして姉さん・・・いまの人の世界をご存知ではない?」
「・・・お恥ずかしながら」
「はぁ・・・ほい!」
「わっ・・・こ、これは?」
「その本に書かれてる呪文、詠唱してみてよ」
「え・・・?顕現せし我が体。いまこそ望みし体に作り替えん。そして叶えろその願い・・・うわ!?これ、何!?」
「その思い、空想で終わらせちゃいけないぜ姉さん☆」
「え・・・?」
「だから叶えるまで帰っちゃダメだぜ姉さん☆」
「え、えええええええええ~~~~~!?」
私は、本から現れた渦に飲まれ、体が再構築されていった。
そうして目が覚めたとき、私が目を覚ましたのは・・・
『セトウチ』と呼ばれる、人たちが住まう世界の一つだった。
そこは奇しくも、あの人が住んでる場所であったのだ。
人として転生した、セイレーンのらうむ。
彼女は人に恋をし、そしていま、恋した人が住まう『セトウチ』に現れた。
この物語は、夢や空想で終わらせない、ある一人のセイレーンの物語である。
この先、どうなるのだろうか・・・その後の物語は、あなたの夢の中で紡がれるのかもしれない・・・
「なーんて。この先も続くよ!姉さんを応援したいからね!」
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