よわよわスイレーンは今日も揺蕩う


世界には、様々な生物が存在している。

夢を喰らう魔物、トラックに挑みつづける猫又、様々な演技をする王水など、さまざまだ。

そんな中、とある存在が噂されていた。

人の心に巣くうセイレーンが、存在しているのだとか。

「・・・・・・えっと、あなたは・・・・・・」

「あ、えっと、どうも、セイレーンでーす・・・・・・」

第一話、よわよわセイレーン、地上に降り立つ

「で、あなたは、本当にセイレーンなんですか?」

「いぃん・・・・・・そうです」

僕の目の前に表れた謎の女性。彼女はいわゆるセイレーンだというのだが、なんというか、なんかそうは見えない。

「私、そのー、人の心の中に潜むセイレーンでして」

「あー、聞いたことある。え?本物?」

「はいぃ」

ふむ。確かにそんな存在がいるとはされているが、本当にいるとは思わなかったなぁ。

「まぁ、あなたの存在はわかったよ。でも、どうしてここに?」

「いぃん・・・・・・それが分からないんです。いつのまにやらここにいて」

「そう・・・・・・あの、戻れるんです?」

「戻れないんです・・・・・・まずいですよ」

「なにがまずいんですか?」

「実は私、お仕事がありまして、いまは休暇をもらっているのでしばらくは大丈夫なんですが」

「ふーん・・・・・・」

「あの、いきなりで申し訳ないんですが、匿ってもらえませんか?ほら!私、これでも人型ですし、人間生活に紛れますよ!」

「えー、いや、まぁ、嫌なんですけど・・・・・・まぁ、頑張ってください。自分はこれで」

「そうですか・・・・・・では、仕方ないですね」

そういうと、セイレーンは何かを溜めだした。

「心溺れろ・・・・・・そして震えろ・・・・・・」

すごい、なんか溜めてる・・・・・・んだけど、なんか長くない?これ、今のうちに抑えられるかな。

「今、その身を閉ざしあいたぁ!ちょっと!こういうのは待つのが常識じゃありませんか!?」

「いや、隙だらけだし」

「だからといって攻撃するバカがいますか!?」

「いっかい落ち着こうか」

「いたい!」

・・・・・・え?こんなに弱いの?なんか、もうちょっとこう・・・・・・

「はぁ、わかった。しばらく家にいればいい」

「へ?」

「まぁ、うん、気が変わった。どこかで野垂れ死られても目覚めわりぃしな」

「・・・・・・そうですか」

「お前、名前は?」

「へ?」
「名前だよ名前。こっちで過ごすんなら必要だろ?」

「名前・・・・・・ですか。らうむ、とはよく言われますけれど」

「僕は、湊音夜夢。なら、君の名前は湊音らうむだね」

こうして、ちょっと心配になる弱そうなセイレーン、らうむとの生活が始まるのであった。


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