【パンを】令和のミッションインポッシブル【焼く】
先日、実家に帰った際にカメリアをもらった。
カメリアは強力粉、パンを作れる小麦粉だ。
父曰く、特売でめちゃめちゃ安かったから買ったけど、パン作らないからお前にやるとのこと。
買うなよ。
もらうけど。
ついでに無職になった報告もする。
無職、職にも食にも困ってるからありがたく頂戴するぜと伝えると、「ちょうどよかったな!」と返された。
「ついでにこれも持ってけ!」とバナナをまるごと一房渡された。これがホントのまるごとバナナ。さんきゅーパッパ。
我が家にはホームベーカリーがある。
その昔、友人の家に遊びに行ったらホームベーカリーで焼いたパンを食べさせてくれて、それがたいそう美味しかったのだ。あまりに感動してその場でAmazonで注文。パンが焼ける匂いで目覚める素敵な生活のスタートだ。
すぐ飽きた。
当然だ、こちらは生粋のものぐさ。
でも完全にやらなくなるわけではない。
ときには数年というインターバルを挟み、気まぐれに「パンでも焼こうかな?」というタイミングがやって来る。
さぁ、今がまさにそのとき。
ホームベーカリーよ、長い眠りから目を覚ますのです。
キッチンワゴンの下段で所在なさげにしていたホームベーカリーを引っ張り出す。
汚ったね。
食品を扱う道具として大丈夫なのかってくらい埃をかぶっている。
時は深夜、すでに0時すぎ。
めんどくせぇ。
でもやるしかない。
ウェットティッシュで拭きまくり、取り外せる部分はとりあえず全部水洗い。
そういえば材料の分量もわからない。
家中を引っ掻き回してホームベーカリーの説明書を発掘。
ようやく準備が整った。
レッツパンづくりタイム!
専用容器にカメリア入れて、ごはん入れて(ごはんパンが好き)、バター入れて、砂糖入れて、水入れて、塩がない。
塩がない。
そうだ、我が家には今、塩がない。
塩と胡椒がひとつのボトルでまとまった「味付塩こしょう」で事が足りており、塩を新調してないんだった。
必要な塩は小さじ1(5g)。
小さじ1って結構な量よな…
入れなかったとして、味にどれくらい影響があるんだ?味付塩こしょう入れるべきか?でもこしょうパンになっちゃわない??
悩む。
でもよく考えたら、5gなんて人体でいえば極微量だ。爪1枚みたいなもんだろう。
そんなに影響ない気がしてきた。
塩は無視しよう。
材料の投入が終わったらホームベーカリーに容器を戻し、ドライイーストをセットして今度こそ本当に準備完了。
スタートボタンをぽちっとな。
間違えた、焼き上がり時間の指定を忘れた。
このままだと朝5時に焼き上がってしまう。
いくらなんでも早すぎる。
取り消そうとするも、止め方がわからない。
とりあえずコンセントを抜く。
止まった。
よっしゃ。
コンセントを入れる。
動いた。
なんでや!
止まって〜止まって〜とホームベーカリーに懇願しながらあらゆるボタンを押しまくる。
なぜ深夜にこんなにも振り回されなきゃいけないんだ。キミは小悪魔かい、ホームベーカリーよ。
取消ボタンを長押ししたところ、ようやく動きが止まった。今度はちゃんと朝8時に焼き上がりを設定して、スタート。
ウィンウィンと動き出すホームベーカリー。
生地をこねているのだ。
あとはもう寝て起きるだけでパンが焼き上がる。
パンを手作りするのは大変だ。
大変なので自分ではやったことがない。
家族がパンを焼くのを傍で見ていて「大変だなぁ」と思っていた。
まず、分量が正確じゃないとダメらしい。「目分量でなんとなく」は、パン作りでは通用しないのだ。
発酵させるのも手間だ。時間がかかるし、なにかひとつでも生地さまのお気に召さないことがあると失敗する。
それなのに、ホームベーカリーは材料をぶち込んでボタンを押すだけで焼き立てのパンが食べられる。
よっぽどのことがなければ失敗しない。
部品のセッティングを忘れるとか、ドライイーストを入れ忘れるとか、よっぽどのポンコツをやらかさなければ成功するのだ。
ちなみに、ドライイーストを忘れると岩の塊を錬成できる。歯にダメージを与えたい猛者はぜひ。
ウィンウィンと頑張って生地をこねるホームベーカリーはかわいい。
実家にいた頃は、フタをあけて生地がグルグルと回転する様を母と二人で眺めていた。
母はコネコネコネコネ回る生地を見ながら「パン焼き機ちゃんは働き者だねぇ、えらいねぇ」と声を掛けていた。
ちなみに、フタを開けるのはルール的にNGらしい。どうぞみなさんはフタを開けず、頭の中でコネコネと生地を回転させてください。
朝、パンが焼ける匂いで起きる。
これだよこれこれ。
フタを開けると、無事焼き上がっている。
よかった、ポンコツはやらかさなかったようだ。
パンは焼き立てに限る。
説明書には「粗熱を取ってね」と指示があるが、なんたってこっちはルールが守れないでおなじみのヒューマン。あっちあっちと言いながらパンを切り分け、早速ひと口食す。
……塩気がない。
塩気がなくて、味気もない…!!
衝撃だ。
焼き立てのパンが美味しくないことあるんだ。
パンは、塩を入れないと美味しくならない。
またまた令和の大発見。
目の前には美味しくないパンが一斤。
これを一人で食べなければならない。
…これが令和のミッションインポッシブル?
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