【イベントレポ】2022/05/20 北海道スペースポートトークイベント「スペースポートで北海道はどう変わるのか? 宇宙産業と地方創生」
2021年4月に本格始動した北海道スペースポート(HOSPO)。
この1年で北海道の宇宙ビジネスに対する期待値はどのように変わったのか、さらにプロジェクトを加速化させるためのキードライバーは何か? などについて、衆議院議員 中川 郁子氏、北海道副知事 土屋 俊亮氏をお招きし、HOSPO整備を推進する大樹町長 酒森 正人氏、SPACE COTANの代表取締役 兼 CEOの小田切義憲氏とともにお話いただきました!
40年に渡る宇宙のまちづくりで60年ぶりに人口減ストップ
大樹町長 酒森 正人氏:
HOSPOの取り組みを開始してから1年が経ち、この間に多くの皆さまから、ご理解とご協力をいただいておりますことを重ねてお礼申し上げます。
大樹町は国の地方創生拠点整備交付金を活用して今年度から本格的なHOSPOの整備を行うこととなりました。3年間で23.2億円の事業費に対し、国から半分の11.6億円を交付金として認めていただきました。HOSPOの発射場整備にあたり、残り半分は企業様等からふるさと納税として寄付のご支援をお願いしており、現在88社から総額8.2億円のご寄付をいただいております。超小型衛星打上げ用ロケットを開発するインターステラテクノロジズなどの地元企業と車の両輪のごとく協力し、発射場整備を進めております。世界のロケットベンチャーが大樹町の発射場から衛星を打上げる未来が、もう目の前にきていると強く感じています。
※参考 プレスリリース「北海道大樹町 2021年度企業版ふるさと納税
道内2位、全国6位の7億2800万円」
https://drive.google.com/file/d/1LYPeZ5UPnR56ZFelve8yXO4epCEVBgln/view?usp=sharing
大樹町は60年以上ぶりに人口減少が止まりました。私たちが35年以上にわたって取り組んできた「宇宙」をキーワードとしたまちづくりをさらに進めていきたいと思っております。日本各地のロケット発射場と手を取り、お互いを補完し合いながら日本の航空宇宙を支えていきたいです。
モデレーター SPACE COTAN COO 大出 大輔:
企業版ふるさと納税の募集や地方創生拠点整備交付金の採択など、この1年間の取り組みは大樹町にとって劇的な効果を生みました。土屋副知事はHOSPOや宇宙ビジネスに関してどのようなことを感じておられますか。
北海道副知事 土屋 俊亮氏:
昨年は非常に大きな交付金を採択いただき、本格稼働に向けて進展した1年でした。道としても若手の優秀な職員を役場に派遣し、インターステラテクノロジズさんやSPACE COTANさんと連携しながら整備計画の実現に向け、PRの場の提供やふるさと納税の確保に向けた仕事を行っています。
知事を先頭に宇宙事業を進めようと、去年11月に鈴木知事が岸田総理と面会しました。宇宙に挑戦する地方をぜひ応援してほしいと伝え、総理から力強い言葉を頂戴しました。それが交付金の採択につながったのかなと思っています。道内の宇宙ビジネスの活性化に向けてどう盛り上げていけばよいのか、知事を先頭にビジネス環境整備や企業の情報発信を進めてまいりたいと思います。
大出:
北海道知事から担当者の方まで、本当にたくさんの方にご協力いただき、HOSPOのプロジェクトはスタートダッシュを切ることができました。それでは中川先生、国政の場からみたHOSPOはどのようなものでしょうか。
衆議院議員 中川 郁子氏:
大樹町は私の選挙区でありますが、それ以上に隣町の広尾町が義父・中川一郎の生まれ故郷です。そのご縁で10年前、初当選直後、前大樹町長の伏見悦夫さんにJAXAへ連れて行っていただきました。その時から大樹町の「宇宙のまちづくり」に関わらせていただきました。自民党の宇宙総合戦略小委員会に所属し、現在は副委員長を務めさせていただいています。北海道の関係者の皆様の共通の思いである「射場」を最適地である大樹町に建設するという目標のため、皆様と一緒に頑張って参りました。
紆余曲折はありましたが、政府の「宇宙基本計画」への自民党の第三次提言に「民間の射場」(大樹町)と書き込んでいただくことができました。それまでにお世話になったのが元衆議院議員・河村建夫先生、寺田稔先生(現・総務大臣)、小林鷹之前宇宙担当大臣(現・宇宙小委員会事務局長)です。
特に、河村建夫先生には、小型飛行機に乗り、上空から大樹町を視察していただき、「これほどロケットの打上げに適した土地は世界中を探してもない」と太鼓判を押していただきました。
寺田稔先生には、民間ロケット打上げのための宇宙2法「宇宙活動法」「衛星リモートセンシング法」の整備で、認可制の民間射場建設に向けた準備をいただきました。
令和元年5月、MOMO3号機が、民間単独初のロケットとして宇宙空間に到達しました。また、「射場」など宇宙のまちを応援してくださる皆様からの「企業版ふるさと納税」が寄せられています。そして、「ふるさと納税」と「地方創生臨時交付金」を活用することで着工が決まりました。
大出:
中川先生、ありがとうございました。それでは次のトークテーマに移ります。まずは弊社の小田切より宇宙版シリコンバレーを早期に実現するために必要なことなどを紹介いたします。
支援企業と宇宙ビジネスをつなぎwin-winな関係づくり
SPACE COTAN CEO 小田切 義憲:
会社を立ち上げた初年度は、私どものプロジェクトが本格化したということ、北海道全体で宇宙ビジネスを真剣に取り組んでいくべきだということを認識いただき、多大なる応援とご寄付を頂戴しました。今年度は、企業の皆さまと事業面でもつながりを持ち、win-winな関係づくりをしていきたいです。各企業の本業の強みを活かし、それが宇宙につながっていくことはすごく意味のある取り組みだと思っています。
まさに今、ロケット発射場「Launch Complex-1(LC-1)」整備の準備が進んでおります。9月に着工式を行い本格的に土木工事がスタートします。それに続いて、次の発射場である「Launch Complex-2(LC-2)」整備のため、今年度も関係する皆さまとタッグを組んで準備を進めていきたいと思っております。
酒森氏:
昨年は第1回目の北海道宇宙サミットを開催しました。多くの方に参加いただき、予想以上の反響もいただきました。今年度も情報発信に力を入れ、仲間の輪を広げていきたいと思います。また、私どもは地域活性化企業人や地域おこし協力隊などの人材派遣制度を広く活用しています。今年度はプロジェクトに取り組むスタッフのさらなる充実を図っていきたいと考えています。
土屋氏:
道内でも宇宙ビジネスに取り組む意欲的な企業が生まれています。道としてもそうした取り組みを応援するため、今年度から新たに企業立地の補助金、最大15億円を利用した重点的な支援対象として宇宙関連産業を位置付けました。さらに、国の制度を引っ張ってくるのも道の役割だと思っています。発射場整備あるいは安定的に経営していくランニングに対しての補助を含めた支援制度、それと合わせて海域利用に向けて制度を作っていただくことも必要になってきます。宇宙ビジネスの中核拠点に大樹、そして北海道を位置付けていきながら必要な制度や環境整備について要望しているところです。
中川氏:
「経済安全保障推進法」が成立しました。日本は資源が少なく、国土の面積も小さい国です。新型コロナウイルス感染症、その後の状況、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー、食料などの不安も増してきました。
そこで、世界の潮流でもある「経済安全保障」を法制化することで、我が国が他の国にとって「なくてはならない国」になることが必要です。その一つが「宇宙産業」です。宇宙分野で優位性を持つことが日本のプレゼンスを高めていく上で重要なことです。
ー今後の抱負ー
数年が正念場 北海道全域で力を合わせて宇宙事業を
酒森氏:
今年から3ヶ年で進める地方創生拠点整備交付金の事業を円滑に実施したいと思います。実は本日、政府の宇宙開発に関する会議が開催され、岸田総理はこのように発言されました。「わが国のロケット打上げ能力を根本的に強化する必要がある。必要な人工衛星を国内から打上げられる体制を国として整える」。この発言は、北海道大樹町に向けられたものと私は理解しました。総理のご発言の実現に向け、関係する多くの皆さまと鋭意取り組んでいきますので、今後もご支援を頂ければと思います。
小田切:
SPACE COTANがスタートした当初は、とにかく色々なところにお話に行き、ご理解をいただくことに取り組んできました。まさにこの数年が正念場で、北海道全域で力を合わせて事業をやっていくべきですし、それができる場所だと思っています。その理由の一つがやはり地の利だと思いますが、そこにあぐらをかいていると海外の発射場に勝てない可能性も出てきますので、地の利というベースを活かしてどうビジネスにつなげていくのかをしっかり考えていく必要があります。ぜひ皆さまと一緒にやっていきたいと思いますので引き続きご支援を賜りたいと思います。
土屋氏:
北海道大樹町への期待が非常に高まっていると思いますが、一方で国内外にもたくさんのスペースポート計画があると聞いています。その中でHOSPOがどのようにメリットを出していくのかが大切です。宇宙産業を見据えた道内各地の取り組みの効果を情報発信し、宇宙産業を身近なものにしていくことが私どもの務めだと思っています。制度や資金調達の支援をはじめ、本日のようなトークイベントなどのPRの場を用意しながら頑張っていきたいと思っています。
中川氏:
これからの抱負としては、北海道大樹町の優位性を、官・民の皆様に知っていただき、大樹町のプレゼンスを上げることに集中したいと思っています。
「政府調達」などによって民間の宇宙産業に力をつけていくことが必要です。アルテミス計画、火星衛星探査計画など国が主導で実行することと、「小型衛星コンステレーション」といったISTなどの民間に委ねていくことを、分けて考えることが必要です。その上で大樹町ならではの取り組みを発信していくことができればと考えます。
HOSPOが開港して約1年となりますが、北海道、多くの企業や経済団体の皆様のおかげでHOSPOに対する共感、支援の輪が急速に広がった1年だったと感じます。新たなロケット発射場や滑走路延伸は2022年秋からついに工事が着工していきます! 政府の方針でもあるロケット打上げ能力の強化には宇宙港というインフラ開発は不可欠。日本の宇宙産業や経済活性化に貢献するために政府、北海道や各団体との連携をますます強め、オール北海道でHOSPOプロジェクトを加速させていきたいと強く感じました。
さいごに
大樹町やSPACE COTANは、一緒に宇宙港HOSPOを発展させ、日本の新たな産業である宇宙産業の活性化、日本・北海道の経済活性化に取り組んでいただけるパートナーの皆様を募集しています! HOSPO施設の拡充のために企業版ふるさと納税や、個人版ふるさと納税を募集しております。「宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョンに共感いただける皆様のご協力をお待ちしております!
・企業版ふるさと納税詳細:https://www.town.taiki.hokkaido.jp/soshiki/kikaku/uchu/hokkaidospaceport.html
・個人版ふるさと納税詳細:https://www.town.taiki.hokkaido.jp/soshiki/kikaku/uchu/hokkaidospaceport.html