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ダンカイ高齢世代よ、いずこへ

 今年3月の国連科学委員会(UNSCEAR)の報告でも、2013年の報告とほぼ同様に、福島第一原発事故後、福島の住民に放射線被ばくによる確定的な健康影響は見られていない。将来的な遺伝的影響も予想されない、と述べられている。あれだけの大事故でも死者等の被害は二次的被害として生じていることを考えると、エネルギー危機の最中で基準適合の原発の再稼働を考えることは当然だろうと私は思う。

 超法規的に停止させられたまま、原子力規制委員会の審査も長期化している既存原発は、今後の我々の生活にとって重要なエネルギー源となり得ることは間違いない。南海トラフ巨大地震等はむろん心配であるが、その場合は化石・再エネ共に多大な被害を被るだろう。その時に可能となって残る原発が数台でもあれば、その発電能力はまさに救いとなるのではないか。

 さらには、化石燃料による発電も、世界の水準を超えた日本のCO2排出抑制技術をもつ発電設備は、むしろ途上国をはじめ世界の救いとなるはずである。貴重な輸出分野としても保持発展させるべきではないか。

 エネルギーはあらゆる人間活動の基礎である。

 晩年の吉本隆明がフクシマ後に、「原発は人類が積み上げてきた科学の成果である。自動車でも事故があったからといって無くしてはいない」と発言したのは、いかにも印象的だった。

 選挙前で、票田となる原発ハンタイの老人たちを刺激せぬようにと、政権を有する政治家たちは口をつぐんだままである。その間も世界は日本を置いてきぼりにして原発を増設している。これから、いったいどうなるのか。

……等々、久し振りに会った友人に語ったが、理系出の彼はただ穏やかに微笑むだけで何も答えなかった。それこそ科学的に冷静かつ誠実な態度なのであろう。

 我ら、ダンカイ高齢世代よ、いずこへ。

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