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オノマトペから日本文化を考える。

今回は、政治から離れたトピックです。

先日、私が時折参加させていただいている文化人・芸術家の会合がありました。この会合ではお題が設定され、それぞれがグループに分かれて議論する形式が取られています。日頃使うところとは異なる部分の脳を刺激される面白い時間でした。

オノマトペが豊富な日本語

今回の議題はオノマトペ。私自身はほとんど意識したことがなかったのですが、ほかの言語と比較して日本語には、擬音語、擬声語、擬態語などのオノマトペが圧倒的に多く、外国人にとっては学習が難しいとのことです。オノマトペは日本語と日本社会の独自の性質に関連しているのではないかという議論が交わされました。

単純な例としては、犬の鳴き声は英語では「バウワウ」、猫は「ミュウ」とか「ミャオ」と表現されます。日本語では犬が「ワンワン」、猫が「ニャー」。こうした表現は各言語に同じように存在しています。

日本語の特長は、一例を挙げると痛さを表現する表現だけでも「チクチク」「ズキズキ」「ピリピリ」「ガンガン」といった数多くの表現があることです。雨は「ザーザー」「しとしと」「ポツポツ」「パラパラ」と降り方によって違いますし、雪だと「しんしん」「こんこん」など繊細な響きがあります。

なぜ日本語にはオノマトペが多いのか

参加者の中で共通していたのは、オノマトペは日本語の表現の繊細さを象徴しているという意見でした。ある方は、日本語は目から入った言葉ではなく、耳(音)から入った言葉なのではないかと言われていました。耳から入ってきた音と感覚を繊細に表現しているのがオノマトペと言えるかもしれません。

私も意見を述べる機会があり、日本語のオノマトペは場の雰囲気を設定する効果があるのではないかと発言しました。例えば、「ざわざわ」は、人々がざわついている状況を表す言葉ですが、解散総選挙が近くなると、永田町は物理的に騒がしくなるわけではありませんが、「ざわざわ」してきます。

象徴的な例として「しーん」という言葉があります。日本の漫画を海外に翻訳する際に難しい表現だそうです。"Silence"と訳せば意味は伝わりますが、その雰囲気やニュアンスを伝えることは難しい。緊張感が漂い、誰もが沈黙を破ることをためらう状況を最近は日本漫画の翻訳では"Shinnnn"と表現することもあるそうです。「しーん」という沈黙を破る権限を持つのは、その場をまとめる長老か、ブレイクスルーを起こす若く意欲的な人物です。

こうしてみていくと、言葉は文化そのものであることが分かります。言葉を守り伝えることは、日本文化を保護し、継承していくことそのものだと感じます。

日本語から日本文化を理解する

先日訪れた利賀村で国際交流基金の理事長とお話しました。こうした出会いがあるのも演劇祭の良いところです。

国際交流基金は海外で日本語を教える人々を支援してきたのですが、予算が細って十分な支援が行えなくなってきたというのです。文化政策だけでなく言語教育支援においても、フランス、韓国などに劣る現状に危機感を持ちました。

日本語を学ぶことは、日本文化や日本人の感性を理解することです。海外で日本語を学ぶ機会を増やすことは日本の理解者の裾野を広げ、日本の国益に貢献します。そうして考えれば、日本語の普及は文化戦略の柱に位置付けるべきものです。

政治から離れた話題ということでスタートしましたが、結局政治に返ってきましたね。


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