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施政方針演説で見えてきた石破総理が目指す「楽しい日本」の姿
所信表明演説が行われる国会開会日というのは、与野党共に高揚感もあって盛り上がるのですが、今日は野党からのヤジも与党からの拍手も少なく、やけに静かでした。
私自身、自衛官の処遇改善のところでは拍手をしましたが、それ以外のところではどこで手をたたいたらいいのかタイミングを掴めず、拍手できませんでした。
謙虚に丁寧に、そして淡々と演説する石破総理のキャラは定着した感があります。高揚感はありませんが、中身は悪くなかったと思います。
浮かび上がってきたキーワードは「楽しい日本」と「令和の日本列島改造」の二つです。
「楽しい日本」ってなんだ?
この言葉は団塊の世代の生みの親である堺屋太一氏の著書から引用されています。
明治維新以降の「強い日本」でも高度経済成長下の「豊かな日本」でもなく「楽しい日本」。直感的に言えば、「楽しい」という表現は、鉄道オタクを自任する石破さんらしい。
楽しいか楽しくないかは個人の主観で決まりますので、演説を聞くまでは、正直言ってピンときていませんでした。
本会議場で施政方針演説をじっくり聞いて、石破総理が言わんとしていることがわかってきました。
「楽しい日本」とは、すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、「今日より明日がよくなる」と実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていける。
この部分を私流に解釈するなら、「安心と安全」とは、石破総理の十八番である安全保障、災害対策、エネルギー・食糧政策などに政府が責任を持つ。安全を脅かされている状況が楽しい人はいませんので大前提です。
「自分の夢」「多様な価値観」という表現は、ダイバーシティを重んじるという方向性を示したものでしょう。
選択的夫婦別姓については触れませんでしたが、総理個人の方向性を暗示したと見るのは深読みに過ぎるでしょうか。
「今日より明日はよくなる」というのは、経済成長と賃上げを実現するという決意表明でしょう。
令和の日本列島改造論
政治の世界に入るきっかけが木曜クラブ(田中派)だった石破茂総理は「田中角栄の最後の愛弟子」を自任しています。
石破総理が日本列島改造という言葉を好んで使うのはそのためです。
安倍政権以降、政府は地方創生という表現を多用してきました。初代地方創生担当大臣だった石破総理もこの言葉に思い入れがあります。
地方創生1.0→地方創生2.0→令和の日本列島改造
ハードからソフトへと路線を転換し、「多極分散型の多様な経済社会を構築」するというのが日本列島改造の大きな方向です。
問題はどうやってそれを実現するかです。
若者や女性に選ばれる地方
令和の日本列島改造を五つの柱で進めると訴えましたが、中心は第一の柱として提示した若者と女性です。
人口減少に歯止めるかけるためには、女性と若者を地方に呼び戻さなければ(込まなければ)なりません。
施政方針演説でも取り上げられましたが、仕事(賃上げ)、教育と医療の充実が大前提。ここは政治の出番です。
教育に力を入れてきた長野県では教育移住が増えています。個別最適の学びが実現した公教育、学びの多様化学校、民間のフリースクールからインターナショナルスクールまで。教育が変われば地方は生き返ります。
「ふるさと納税」ならぬ「ふるさと住民登録制度」というのも登場しました。都市部に住民票を置きながら、出身地や馴染みのある地域との二拠点居住を後押しする仕組みです。
住民登録されていない自治体での育児支援などの行政サービスを受けられたり、二拠点間の交通費の定額制などが検討されています。
詳しい制度設計はこれからのようですが、セカンドハウスに対するさらなる減税などがあれば、おもしろそうです。
防災庁はどこにできる?
石破政権の最重要政策は防災です。
人命・人権最優先の防災立国を構築し、世界一の防災大国にしてまいります。災害対策の知恵や技術を海外に発信し、世界の防災に貢献するとともに、新たな産業の柱にいたします。
TKB(トイレ、キッチン、ベッド・バス)は有名になりました。これを令和8年度中に創設される防災庁で一元管理できれば、自治体任せだった避難所は大きく変わります。
石破総理は、この防災庁などの政府機関を国内最適地に移転するという大方針を出しました。
政府機関の地方移転はかつても議論になりましたが、結果が出たのは文化庁の京都移転のみ。
各省庁には永田町の応援団がついており、地方移転には必ず反対意見がでてきます。
目玉政策の防災庁を令和の日本列島改造に加えるのは石破総理らしい発想ですが、実現には石破政権が永田町で強烈なリーダシップを発揮しなければなりません。
バランス・オブ・パワー
内政と比較すると外交安全保障はあっさりした印象でしたが、バランス・オブ・パワーという冷戦下から使われてきた古めかしい言葉は目を引きました。
トランプ大統領の外交を「新ヤルタ主義」と評価する分析とも通じるものがあります。
新たな時代に求められる安全保障を確立できる政党は自民党しかありません。同僚議員と安全保障のプロの皆さんと新たにYouTubeチャンネルを立ち上げましたのでご覧ください。
岩屋外務大臣と対中強硬派のルビオ国務長官の会談については、心配する声もありましたが、杞憂に終わったようです。
カナダ、メキシコ、EUと関税の圧力を受けている中で(NATO加盟国は軍事費増も)、わが国が圧力を回避できているのには理由があります。
米国から見ると、強大化している中国に向き合うには同盟国である日本を味方につけるしかない。
日本から見ると、東アジアのパワーバランスが変わる中で、日米同盟が最重要。
日米両国の利害は一致しています。石破総理には、国家国民のためにトランプ大統領との日米首脳会談を何としても成功させてもらいたいと思います。
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