中秋の名月2021 | 空の写真展vol.40
窓が少し開いて時折穏やかな夜風がそよぐ台所の窓辺。電気の消された暗い部屋だが窓から入る月明かりでほんのり白んでいる。台所には水切りバットがあって中には1枚の食皿が月明かりを反射していた。少しだけ斜めに立てかけられ、窓の外を臨んでいる。窓の外は金色の稲穂が風のリズムで波を打つ。
そんな台所の窓辺は
お月見の特等席。
中秋の名月の日、そんなシーンがあるとして、仮に皿に意思があったら 何を思うだろう。
…というイメージの作品を作ったのが約1ヶ月前のこと。ある媒体にこそっと書かれ、かろうじて世に出ている。
そんなことを思い出したのはコンビニにおやつを買いに走った横断歩道のこと。定時を終えて残業確定、飲み物を買いに休憩がてら外に出た。道を渡りながらあまりにも見事な大きな満月に驚く。
あれ、今日は何日?
21日だ。
ということは、中秋の名月。
疲弊して外に出たわりに、運が良かったなと気分も回復。横断歩道、2回渡った。笑
都会のジャングルの隙間に見える見事すぎる月。コンビニ帰りはもう雲が出ていて月は隠れていた。
電車にゆられて最寄駅を降りると、今度は月はちいさくなっていた。高くて、そして白く透き通っているようだった。空には雲ひとつないし風もほとんどない。邪魔することのない空は、ほんと空気よんでる。夜道でじっと見てみたけど近所のマンションから見られたら、何してんの? というかんじだと思いそそくさと帰宅した。
ちなみに昨年の中秋の名月はshibuya sky から見て、noteにも書いていたから印象に残っていたのだと思う。
それまで興味を示さなかったのに、月ってきれいだと気づいた瞬間だった。昨年の中秋の名月から1年。どうにか生きていて仕事も守れている。大きな可はないけれど1年がんばったし「生きてるだけで儲けもん」とは、私の場合こういう時思うのかもしれない。
◇
部屋に入って電気を消して、今のうちにと窓を開けた。すると白い月明かりが入り込む。
1ヶ月前は皿を擬人化させてことばを作ってみたけれど、今度は私が皿化された気分だった。窓から見えるぎりぎりの位置に月が見えて、しばらく窓から離れられない。だれか一人でも、私の作った作品の情景のかけらが今夜あったことを認識してくれたらいいなと少しだけ願ってみた。雨が降らなかっただけで、雲がないだけで、幸せな気分だ。
一つだけ後悔したことがあった。お月見しながら食べたのはモナカアイスだった。なぜお団子を買わなかったのかと思う。友人に連絡したら、友人も団子ではなくクレープだという。団子より月…ということにしておこう。