見出し画像

授賞式、せっかく久しぶりに東京にいくのでぎっちぎちに他の予定もいれてみたらちょいちょい珍道中だった話。part4

前回はこちら


懇親会がお開きになると、光文社さんの担当さまが、

「星月さん、このあとちょっとごはんどうです?」

と言ってくださったのでご一緒することに。会場を後にし、駅の方へ向かう道すがら、私はリモート顔合わせの時うまく話せなくてもやもやしていたことを話すことに。

「あの、リモートでどんなものを読んできたかうまく答えられなくてひっかかっていたんですけど……」

もちろん、編集者さんや、書評家、現在専業作家でときめいている方ほど本を読んでいるかと聞かれたら、答えはノーです。

それでも読書は子どものころから好きでしたし。私はいつも救いを本の中から見つけてきました。ただ、私は色んなジャンルを読んでいてミステリーを特別沢山読んでいるかというと、客観的に見てそうでもないよなあと思ったんです。それで、中学生の時にシドニー・シェルダンにはまっていたことや、今ピーター・スワンソンにはまっていることなどをお話したんです。

でも自分の読書体験ってそれが要約にはなっていないな。と思ってモヤモヤしていたんですよね。そうお伝えすると担当さんは

「『ヴンダーカンマー』のエピグラフを見て、なんでも読む人なんだなと分かりましたよ」

と言ってくださいました。そう、担当さんはお忙しい中、今日の授賞式までに前作を読んでくださっていたのでした。

「一番好きな作家は山田詠美先生です」

とこれだけは伝えたかったことを伝えました。山田詠美先生はエッセイでよく「作家が先生と呼ばれていい気になってちゃおしまい」と書かれていましたが、それでもやっぱり私にとっては人生の先生なので、先生とおよびしたい。まあ心のなかでは恐れ多くもいつもエイミーと呼ばせていただいておりますが。

人生を変えるような一冊なんてない。と言われる方も多いでしょう。でも、消えてしまいたいと思っていた13歳のころに読んだ山田詠美先生の『風葬の教室』に私はどれほど心を救われたことでしょう。

私は、今、自分の中に新たな感情が生まれたのに気づいています。それは、責任という言葉に続いて、私の心の根底に常備されることでしょう。私の生み出した人の殺し方は、軽蔑という二文字だったのです。

山田詠美『風葬の教室』

主人公の本宮杏ちゃんと同じように私にも心の根底に「軽蔑」の二文字が常備されました。これを常備しているだけで、ぐんと生きやすくなりました。

高校生の頃には『放課後の音符キイノート』を友だちに布教してました。

いつだったろう?20代のころその友人の一人にこう言われました。
「私、高校生のころ放課後の音符みたいな恋がしたかったな。できなかったけど」
「うん。私もできなかった」
って笑いあいました。
でも40代になった今の私は夫と『無銭優雅』の栄と慈雨みたいなカップルにはなれている気がする。こんどその友人に会えたら、そう話してみようかなと思います。エイミーは私にタフネスと自分の心にいかに、そしてどうやって向き合うかということをいつも教えてくれています。

いつかお会いできる機会なんてないとは思いますが「れもん、よむもん!」のはるな檸檬さんのならいもありますし、なによりエイミーが団鬼六さんとの対談で「好きだ好きだって言ってると、いつか会えるのよ」と言っていたので私もここで「好きだ好きだ好きだ」と言っておきます(あえて一回多くしてみました)


さて、編集さんとお店に入り、もちろんもうすでにテキストデータを送信している私の原稿の話もありましたが、本の話。特にミステリーの話をひたすら話しました。編集さんにお会いする機会があると私はチャンスがあればこう聞くことにしています。

「最近、個人的に読んで面白かったものはなんですか?」

そこで教えてもらったものは欲しいものリストに本を追加しておくんです。あとで近所の書店で注文するためですね。
本の話の間に疑問に思っていたことや、こういう時にどうしたらいいのか分からないことがあるんです。ということも尋ねることができたので、お食事をご一緒させていただいて本当に良かったと思います。

気づけば日付が変わっていました。そろそろお開きということで、ビジネスホテルまでタクシーで帰してもらった私。一人、一路赤坂のあの坂の上へ……。

のはずだったんですが、タクシーが夫が昔働いていた店の前に通りかかったので、懐かしさに我慢ができず、

「運転手さん、すみません。そこの角でおろしてもらえます?」
「ええ? もうすぐ目的地ですけど」
「どうしても寄りたいところがあるので」
とタクシーを下りて、その店へ。
私はその店の常連客だったので、夫と共通の知人である、店長がまだ健在かが気になってたんですよね。元気かなあなんて。

70sのソウルミュージックがかかるお店なんです。DJブースと小さなフロアがあって踊りたい人は踊ってもいいというお店ですね。

店長がいなくて、愕然としたんですが、今の店長に聞いてみると「ああ!今新宿にいるんですよ」と。新宿? 前はもう一店舗銀座になかったっけ? どうやら新宿にいつの間にか系列のお店ができたようで、そちらにいるとのこと。私がきたことそのうち伝えてほしいと言ったら、現店長さん、なんと、ご自分の前店長とのラインを開いてメッセージを送らせてくれました。

私はこのお店で誰でもない人になって、一人で踊るのが好きだったんですよね。

この日も好きな曲がかかると踊ってました。途中で明日カリフォルニアに帰るマーフィーにだいぶん絡まれましたが、まあ楽しく過ごせました。

さて、お店から出て今度こそタクシーに……。
乗らなかったんですよね。近くに揚州商人があるからいけたらいきたい。と思っていたんです。揚州商人は関東にしかチェーン展開していない中国ラーメンのお店です。私都内に住んでいるときかなり好きだったんですよね。

やりたいことリストの一つに入っていました。

でも場所がうろ覚え。なのでグーグルマップアプリを起動させると徒歩7分。
全然余裕だ。と思って歩きはじめたんですが、

あれえ? なんでだ?
どれだけ歩いても7分のままだぞ?

どうもアプリの指示に従えていない。歩けどもあるけども到着まであと7分とでる表示……。気づけば繁華街から離れ、住宅街に……。

深夜に完璧な迷子が爆誕です。part3の伏線回収終了ですね(笑)

どうしよう。ホテルにもたどり着ける気がしない。これは明日午前中に入れている予定は無理かも。

そう思いながらも、この状況がなんだかおかしくなってきた私。夫に話したらゲラゲラ笑われるだろうな。食い意地のせいで、迷子って。

と思っていたら奇跡的に空車のタクシーが! 慌てて停めて乗り込みました。

「変な人かと思いましたよ」
ええ。私もそう思う。よくぞ停車してくれました。運転手さん! 神!!
「迷子になっていたんです。もう無理かと思いました」
「ははは。迷子ですか。で、どこへ行きましょう?」

ここで、あのホテルのレビューが呪文になろうとは。本当に人生って何が起こるか分からないものですね。

「TBSの坂を登り切ったところにある、ビジネスホテルって分かります?」

「あーたぶんあれだと思います」

こうしてようやく私はビジネスホテルに帰りました。
ようやく一日が終わりましたが、ちょいちょい珍道中は2日目につづきます!


つづきはこちら
↓↓↓

いいなと思ったら応援しよう!