クリスマスの思い出

 クリスマスの日の楽しみ。

 それは家の全部を使って行う、塾生のお楽しみ会だった。

 母は塾の先生をしている。年末は決まって、塾生を労るお楽しみ会を開催するのが決まりだった。

 クリスマスの日といったが、みんなの都合で26日、27日だったこともある。クリスマス会ではなく忘年会、と笑って流すこともあった。だが大体クリスマスの日である。


 居間と寝室にかかる大きな引き戸を外し、庭まで持っていって置いておく。合計12畳になった部屋を、折り畳みのテーブルで埋め尽くす。そうすれば、4人家族の我が家が、子供が16人も入れる巨大なクラスルームに変化する。

 だいたいこの辺りの日に終業式があるので、半ドンで帰ってきたら、家族総出で部屋をお楽しみ会仕様に変える。その変化振りが楽しくて、お楽しみ会の朝は楽しみだった。掃除機をかけたり、紙皿や紙コップを準備するのは私の仕事。自分の仕事が「ある」ということは、大変楽しい。


 宅配ピザを頼んで、みんなでミニ食事会。食べ終わったら、ポテチをつまみながら軽くゲーム。16人で神経衰弱を楽しんだり、ビンゴゲームに歓声を上げたりした。

 その後はお絵かき大会。みんなスケッチブックに好き放題書き合った。何を書くでもなく、ただ色鉛筆を走らせ、棒人間のファニーな動きに笑い合った。

 お楽しみ会を思い出して考えることは、「小さい頃の私、働き者だったな……」ということ。掃除も準備も片付けも全力で行っていた。若かったから体力有り余ってるとしても、とても働いていた。塾の子供達との交流というよりも、「自分が役立っていること」の実感で何よりも充実していた。

 だから、心地良く疲れた後は、ひとねむりのご褒美。

 紙皿やら色鉛筆やらの片付けが終わり、引き戸も戻して元通りになった部屋。ホットカーペットのついた居間で、ふっかふかのダッフルコートをお布団代わりに一眠りするのが大好きだった。ホットカーペットの熱をダッフルコートはがっちり逃がさず、ぽっかぽっかなのだ。15分ほど、ものすごく深くて心地良い眠りに浸れる。疲れた後のご褒美である。

 明日からは楽しい冬休み。何をしよう、どんなゲームをしよう、どこに行こう。そんなことを考えて、まだまだ冬の楽しみはこれからなのだ。

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