星揺つき

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母を想って、電波

2DKの古いアパート たった6畳の秘密基地の壁越しに あなたの囁きが聴こえる 「天使の囀りが鳴っているの!」 それはね、となりの畑のカエルの鳴き声だよ 「悪魔の叫び声が響いてるの!」 それはね、病気の人を救う車のサイレンだよ 「宇宙に思考を覗かれてるの!」 それはね、地面を打ちつける雨の音だよ その色はキケンだから着ないでって あなたが悲しそうに泣くから わたしの大好きなロリィタ服 どうしたらいいか わからなくて あなたはイエス・キリストじゃない あなたはせかいの救

    • 空想児童遊園

      やすみ時間が退屈で わたしだけの公園に遊びにいく 桜とアメジストと大水青が混じって 科学的アイスみたいな空 サテン・レースの雲がかかる 子どものころの夢を覚えてる? 目をつむれば会えたお友だちはもういない 銀色のさかなが 空気のなかを泳いでいる 飴みたいなビー玉をからから転がす 幽霊がのったブランコをゆらゆら揺らす 透きとおる砂に秘密の暗号をさらさら描く 昔ここにいた あなたの肌みたい まちがえた朝顔がひとつ 震えながら咲いて 孵化した蛍がその花を抱きしめた 太陽にはか

      • 時空間とカラースプレー (自動筆記/速度5)

        桃が食べたい。桃の皮にすりすりしたいしたい。感覚的世界の諸芸術についての話をしよう。それは水だったり森だったりあるいは色彩的な何かだったりする。大抵は輪郭がなくて時空間に溶ける滲みのようなものだ。そう。私たちはそれを求めている。いつか人はなくなる。人が人である、ひとつのまとまりであるのは最初だけでそれは時間の経過とともにバラバラになっていく。時間が単性の直線軸であるのに対して精神は複数性のものになって座標状にバラバラに配置されていく。本来なら時間も点在であるべきだ。直線が嫌い

        • 普通か特別になりたかった

          普通になりたかった。 街でお淑やかな女子大生が友人と談笑している様子を見ると、胸が苦しくなる。 あるいは、アバンギャルドな格好をして夢中に大作をつくる同期を見たときも。 自分とは真逆の普通。自分とは真逆の特別。 私は普通になるための戦い、自分を特別だと証明する戦い、どちらにも負けてしまった。 幼い頃から周りに馴染めなかった。 人見知りで挨拶もろくにできない子だった。 幼稚園に行くのがつらかった。でも、みんな通っているから通った。ひとりで絵本を読んだり、絵を描いて過ごした。

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