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「ダスカロスの教え」と「東洋医学」を融合させる試み(9)



足の陽明胃経

“胃” の機能

水穀(飲食物)を受納し、腐熟(ふじゅく、消化)する(水穀の海)。
と協働し、水穀(飲食物)を水穀の精微(栄養)にして吸収する。
通降(つうこう、内容物を小腸・大腸に送る作用)を主る。
降濁(こうだく、不要なものを下方に動かす)
*五行は
中焦に属する。
*経は 足の陽明胃経
と表裏の関係にある。

“陽明胃経” の走行

鼻根に起こり下って鼻の外承泣穴、四白穴、巨髎穴)を循り、上歯の中に入り、還り出てを循り、下って承漿穴で左右が交わる。ついで下顎下縁を循り大迎穴から頬車穴を循り、耳前に上り客主人穴を過ぎ、側頭髪際を循り額顱に至る。そのなるものは、大迎穴の前より人迎穴に下り、喉嚨を循り欠盆穴に入り、膈(Noel註:横隔膜)を下ってに属しを絡う。

その直行するものは、欠盆穴よりの内廉に下り、下ってを挾み気衝穴に入る。気衝穴から大腿前外側を下り、膝関節を循り、下腿前外側を下り、足の第2指外端に終わる。

そのなるものは、胃口の下に起こり、腹中を循り下って気衝穴に合す。そのなるものは三里穴の下方から分れ、下腿外側(胃経胆経の間)を下り豊隆穴を経て足の第2指に行く。そのなるものは、衝陽穴から別れて第1指に至り、足の太陰脾経 に連なる。

Wikipedia「足の陽明胃経」、太字化はNoelが実施

【考察的メモ】 “陰経” と “陽経” の違い

陰経」と「陽経」はぞれぞれ “” と “” に属するという違いのほか、「経脈の走行」に特徴的な違いがあります。

陰経=「胸腹部」から「手先」、「足先」から「胸腹部」に走行する
陽経=「手先」から「顔面部」、「顔面部」から「足先」に走行する

要するに、走行路の観点からいうと「頸部頭部の走行の有無」に、感覚神経の観点からいうと「脳神経 支配の有無」に違いがみられるということ。

軽い “陽気” は頭部に集まりやすく、重い “陰気” は下肢に集まりやすいので、それらを上手く循環させるために「陰経」は “陰気” を引き上げ、「陽経」は “陽気” を引き降ろし、 “”・“”・“津液” を全身にまんべんなく廻らせています。

頭部」に集まりやすい “陽気” の循環を促すには、「陽経」を使うのが効果的ですが、イライラ・のぼせ・ほてり・頭痛などの改善には直接患部を刺激するより、「下肢」にある「陽経」を刺激して、頭部から下肢へ “陽気” を引き下ろすのが望ましいでしょう。

基本、刺激が加えられたところに”(主に  “感覚エーテル” と “運動エーテル”)は集まります。病状に合わせ、足りないところは補い、多すぎるところは散らす方向へ、“津液” を動かしましょう。

また、“経脈” が「体の前面」を走行する場合と「体の後面」を走行する場合の違いデルマトームでみると、「仙髄」(S)に特徴が表れます。

体の前面」には、S1S5の脊髄神経の支配領域がありません。つまり、S1S5に関しては「陽経」からのアプローチが有効……ということになります(注:絶対的な法則ではありません)。

仙髄」(S)から伸びる 坐骨神経 は人体でもっとも太く長い末梢神経で、臀部下肢後面かかと足の外方側面足底の感覚と運動を支配します。

坐骨神経の分枝は 脛骨神経 と 総腓骨神経 で、これらは下腿(膝から下)の後面・外方側面・前面・足底の感覚と運動を支配しています。

“陽明胃経” のデルマトームと特徴について

陽明胃経」には、他の「陽経」にはない特徴があります。それは「陽経」なのに、人体における「の領域 を走行すること。

」は「」と表裏一体となって働き、“陰気” に富んだ “” や “津液” を生成するので、「陽明胃経」は「太陰脾経」と並行して「の領域を走行する……といわれています。

また「陽明胃経」は、咀嚼筋 や 顎関節 に直接アプローチできる経脈です(後述)。加えて、喜怒哀楽を表現する 表情筋 にも関与するため、情緒が絡む症状に効力を発揮します。フェイスマッサージを受けると深くリラックスできるのは、表情筋の緊張がほぐれると同時に、頭部頸部に滞留しがちな “陽気” を全身に還流させることができるからだと思います。

“陽明胃経” の経穴

【ST1 承泣皮枝は三叉神経の第二枝上顎神経

【ST2 四白皮枝は三叉神経の第二枝上顎神経

【ST3巨髎皮枝は三叉神経の第二枝上顎神経

【ST4 地倉皮枝は三叉神経の第二枝上顎神経

承泣」(しょうきゅう):瞳孔の中心を通る垂線と眼窩下縁の少し上

四白」(しはく):承泣の真下、眼窩下孔 の陥凹部

巨髎」(こりょう):瞳孔の中心を通る垂線と、尾翼下端の水平線が交わるところ

地倉」(ちそう):口角の外方、鼻唇溝(ほうれい線)上

これらの経穴の皮枝は、 三叉神経(第Ⅴ脳神経)の第二枝上顎神経)です。三叉神経は、眼神経上顎神経下顎神経の3つに枝分かれした神経で、それらに含まれる感覚神経の主なものが眼窩上神経・眼窩下神経・オトガイ神経です。で、この3つの神経はそれぞれ、眼窩上孔・眼窩下孔・オトガイ孔を通って 頭蓋 内から皮下に出ていきます。「四白」は眼窩下孔の位置にある……と覚えておきましょう。

承泣」~「地倉」は表情筋に関与する経穴なので、感情面の緊張を解くのに使えます。ことに口角にある「地倉」周辺は感情が表出しやすい部位です。口角周辺を緩めると、イライラや怒りなどのネガティブ感情が鎮まり、感情的な問題からくる胃腸の失調を予防できます。

【ST5 大迎/皮枝はC2~C3】

【ST6 頬車/皮枝はC2~C3】

大迎」(だいげい):下顎角からアゴに向かって指をすべらせ、顔面動脈(外頚動脈の第2枝)の拍動を感じるところ

頬車」(きょうしゃ):下顎角の斜め上、嚙んだときに咬筋が緊張し、力を抜いたときに凹むところ

大迎」と「頬車」は、咀嚼筋 として働く「咬筋(こうきん)」の上にあります。咬筋は、人体の中でもっとも力の強い筋肉です。これらの経穴は、次で紹介する「下関」(顎関節上にある)と「頭繊」(側頭筋 上にある)と共に、アゴの歪みや食いしばりなどの顎関節の疾患に効力を発揮します。

咬筋」の支配神経は、三叉神経(第Ⅴ脳神経)の第三枝(V3)の「下顎神経」です。下顎神経は「蝶形骨」の卵円孔を経由し、頭蓋の外に出ていきます。

下顎神経は下顎の歯・下顎・下唇・頬・オトガイ・頬粘膜・舌の前2/3の「感覚」を司ると共に、咀嚼筋の「運動」も司っています。三叉神経の3本の枝のうち、運動神経線維 を含むのは下顎神経だけです。

また、三叉神経が通過する「蝶形骨」の中心には トルコ鞍 と呼ばれる凹みがあり、さまざまな種類のホルモンを分泌する 下垂体 が納まっています。

さらに「蝶形骨」は、咀嚼筋外側翼突筋内側翼突筋起始部でもあります。

【ST7 下関皮枝は三叉神経の第三枝下顎神経

【ST8 頭維皮枝は三叉神経の第一枝眼神経)・第二枝上顎神経

下関」(げかん):耳の前、頬骨弓(きょうこつきゅう)の下縁中点と下顎切痕との間にできる凹み(口を閉じていると凹み、口を開けると下顎骨関節突起が移動して凹みがなくなるところ)

頭維」(ずい):そりこみ部分、生え際直上5分

両頬の「下関」を軽く押さえ、口を開閉するとアゴの歪みの有無がわかります。アゴの歪みの影響は全身に波及しますので、日頃から「下関」周辺の緊張や歪みを取るよう心がけておきましょう。

頭維」も咀嚼筋側頭筋)の上にあります。なので「下関」と同様、顎関節関係のトラブル……歯ぎしりや食いしばりが原因の頭痛眼痛の改善に使えます。「頭部」は “陽気” が溜まりやすい箇所ですから、顔のほてり・のぼせ・イライラ・眼の充血・不眠などの改善には “熱を抜く イメージでアプローチすると良いです。後述する「内庭」(胃経の榮穴)にも、「頭部」の “熱を抜く 効果があります。

また、「下関」から「頭維」にかけては、「蝶形骨」に触れることができる部位です。

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蝶形骨」は全身のバランス中心軸を正すことができるポイントなので、こめかみ周辺の歪みや緊張を取ると全身がほぐれます。ただし、強く刺激すると状態が悪化することもあります。こめかみ周辺への刺激は慎重に行ってください。もちろん、他の場所についても同様です。

強い力でマッサージされることを好む方は多いですが、それによって筋肉神経血管リンパ管などが損傷してしまうことがあります。むろん、“”(エーテル)を用いた治療においても同様ですから、、、いずれにせよ過度の刺激は厳禁なのです!

【ST9 人迎ST10 水突/皮枝はC2~C3】

人迎」(じんげい):甲状軟骨の上縁の高さ、胸鎖乳突筋の前縁、総頚動脈拍動を感じるところ

水突」(すいとつ):輪状軟骨の高さ、胸鎖乳突筋の前縁

【ST11 気舎ST12 欠盆/皮枝はC3】

気舎」(きしゃ):胸鎖乳突筋胸骨頭鎖骨頭の間の凹み頭を回旋させると胸鎖乳突筋が浮き上がり、取穴しやすくなる

欠盆」(けつぼん):乳頭線(正中線の外方4寸)の上、鎖骨上方凹み

胸鎖乳突筋をほぐす際は、起始部停止部への刺激が効果的です。「起始部」は胸骨頭鎖骨頭の2ヶ所(「気舎」はこの2点の合間)で、「停止部」は 乳様突起 周辺です。

気舎」から「欠盆」にかけては、「静脈角」(鎖骨下静脈と内頸静脈の合流部、リンパ管が集合する部位)にアプローチできるポイントです。

静脈角」は、胸鎖乳突筋の鎖骨頭の下にあります。鎖骨の凹みを優しく撫でると、リンパ循環を促せます。

【ST17 乳中/皮枝はT4第4肋間神経

【ST19 不容/皮枝はT7第7肋間神経

【ST25 天枢大腸の募穴/皮枝はT10第10肋間神経

【ST30 気衝/皮枝はT12第12肋間神経

乳中」(にゅうちゅう):第4肋間乳頭

不容」(ふよう):ヘソから外方2寸の垂直線上、「天枢」の上方6寸腹直筋

天枢」(てんすう):ヘソから外方2寸

気衝」(きしょう):ヘソから外方2寸の垂直線上、「天枢」の下方5寸、恥骨結合(下図)と同じ高さの 大腿動脈 拍動部(注:大腿動脈は「気衝」の直下ではなく少し外側を走行する)

欠盆」から「天枢」にかけての「陽明胃経」は、哺乳類が持つ乳腺に関係する……という説があります。人間の場合、乳腺は通常は左右1対ですが、稀に「乳腺堤」と呼ばれるラインに沿って複数の乳腺(副乳)が出現することがあります。

副乳」は「太陰脾経」の走行上にもできます。

赤ちゃんを母乳で育てたお母さんは実感できると思いますが、食事を取ると乳房がパンパンに張ってきます。母乳の味や匂いが、食事の内容によって変わることもご存じでしょう。「東洋医学」では、母乳を「血の変化したもの」と捉えます。その意味において、乳頭に “”・“”・“津液” を生成する「陽明胃経」が通っているのは理にかなっていると感じます。

欠盆」から「気衝」にかけての「陽明胃経」の走行は、「リンパ系」にも関与します。

ことに「不容」から「天枢」(大腸の 募穴)にかけては、「乳び槽」と呼ばれる下半身および腸管からのリンパがすべて流れ込んで貯留される器官があります。このへんには腹部を走る大動脈大静脈太い血管もありますので、「陽明胃経」に沿ってお腹を撫でると、リンパ血液の循環が良くなり、消化吸収力もアップすると思います (*^^)v

それと、「陽明胃経」のように腹部胸部を走行する経脈は、「呼吸筋」にもアプローチできます。

呼吸筋(こきゅうきん、英語: Muscles of respiration)は、呼吸を行う筋肉の総称。すなわち、呼吸をするときに 胸郭 の拡大収縮を行う筋肉のこと。種類としては、横隔膜内肋間筋外肋間筋胸鎖乳突筋前斜角筋中斜角筋後斜角筋腹直筋内腹斜筋外腹斜筋腹横筋 などがある。

正常安静呼吸では、吸気は主に横隔膜の収縮によって行われ、また外肋間筋も使用される。呼気は筋肉を用いず、伸展された肺の受動的反跳(ふくらんだ肺が自然にもとに戻ろうとする力)によって行われる。

努力呼吸時には、吸気には胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋が、呼気には内肋間筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋といった呼吸補助筋が補助的に用いられる。

Wikipedia「呼吸筋」

腹部胸部をほぐすと呼吸が楽になり、リラックスできます。呼吸は「呼吸筋」によって「胸郭」が膨らんだり、縮んだりすることによって行なわれます。というわけで、「胸郭の可動性」がとても重要なのです。

呼吸」は心身の健康においてもっとも重要な要素であり、「飲食」と共に自力でコントロールできるものなので、意識的にうまく使えるようになっていきましょう。

さて、「鼠径部」にある「気衝」から「陽明胃経」は下肢に入っていきます。

鼠径部」には、同じ高さに5つの経脈の経穴が並んでいる

鼠径部」にある鼠径靭帯(上前腸骨棘と恥骨結合を繋ぐ靭帯)の下部は、太い血管リンパ管神経などが皮膚に近いところにまとめて出てくるところです。また「鼠径部」は、腸腰筋(上体と下肢をつなぐ重要な筋肉)に触れることができる部位でもあります。

鼠径部」に手を当てて “” を流すと、リンパの流れがよくなりますよ!

【ST31 髀関/皮枝はL2】

【ST34 梁丘胃経の郄穴/皮枝はL4】

【ST35 犢鼻/皮枝はL4】

髀関」(ひかん):大転子(大腿骨上部にある外に張り出したところ)を確認。腿を上げて 縫工筋(上前腸骨棘と脛骨をつなぐ筋肉)を緊張させて蝕知、縫工筋の外側の大転子と同じ高さ

梁丘」(りょうきゅう):膝蓋骨の上縁の上方2寸大腿直筋腱の外縁

犢鼻」(とくび):膝を軽く曲げたとき、膝蓋骨の下方外方にできる凹み

鼠径部上前腸骨棘大腿直筋外縁に沿った経脈への刺激は、滞りがちな下肢の “気血津液” の廻りを改善し、「」の働きをサポートします。

胃経の 郄欠 である「梁丘」は、人体で最も大きい筋肉の「大腿四頭筋」(大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋)の強靭な「」に接しています。栄養不足になると筋肉が痩せ、足腰が弱ります。大きな筋肉のそばにある「梁丘」は、「胃の状態」(栄養状態)を診るポイントとしてうってつけなのです。

【ST36 足三里胃経の合穴四総穴胃の下合穴/皮枝はL5】

【ST37 上巨虚大腸の下合穴/皮枝はL5】

【ST38 条口/皮枝はL5】

【ST39 下巨虚小腸の下合穴/皮枝はL5】

【ST40 豊隆胃経の絡穴/皮枝はL5】

【ST41 解渓胃経の経穴/皮枝はL5】

足三里」(あしさんり):「犢鼻」と「解渓」を結ぶ線上、「犢鼻」の下方3寸前脛骨筋 

上巨虚」(じょうこきょ):「犢鼻」と「解渓」を結ぶ線(16寸)の中点条口)から上方2寸。皮下に前脛骨筋がある

条口」(じょうこう):「犢鼻」と「解渓」を結ぶ線(16寸)の中点。皮下に前脛骨筋がある

下巨虚」(げこきょ):「条口」の下方1寸。皮下に前脛骨筋がある

豊隆」(ほうりゅう):「条口」の外方1横指(中指の幅)。皮下に前脛骨筋長指伸筋 がある

解渓」(かいけい):足関節(足首)を脛に向かって反らすと浮き出る 長母指伸筋長指伸筋腱の間、内果尖外果尖と同じ高さ

足三里」から「下巨虚」までは、前脛骨筋 の上を走行します。前脛骨筋起始部脛骨 の外側上部2/3、停止部は 内側楔状骨 の内側面、第一中足骨底です。

足三里」へのお灸が足の疲れを取るのは、前脛骨筋の「起始部」にあるからではないでしょうか? 前脛骨筋は、スムーズな歩行立ち上がりに欠かせない筋肉です。

また「足三里」は「肚腹は三里に留める」と謳われる 四総穴 のひとつで、胃腸の病の特効穴です。たしかに「足三里」を刺激すると唾液が出て、お腹がグルグル鳴ったりします。さらに「足三里」は胃の 下合穴 でもあるため、「胃腸の病」への効果は高いのです。加えて胃経の 合穴 ですから……吐き気やのぼせなどの “逆気” の病にも効きます。そして、前脛骨筋の上には、大腸の下合穴の「上巨虚」、小腸の下合穴の「下巨虚」もあるので、スネ(脛骨の尖ったところ)と腓骨の間は「胃の気」を活性化するのに最適な部位といえるでしょう。

豊隆」は胃経の 絡穴 で、経脈と経脈をつなぐ「絡脈」にある経穴です。「絡脈」とは、皮膚表面に近いところにある「静脈」(皮静脈)である……という説があります。確かに、四肢末端にある絡穴の周辺は、青い静脈がくっきりと透けてみえたり、浮き出ていたりしています。

膝から下は血液やリンパが滞留してむくみやすいところですから……「陽経の絡穴」で “陽気” を引き降ろし、「陰経の絡結」で “” や “津液” を引き上げるようにしてみましょう。むくみ下肢静脈瘤については、ひざ裏にある膀胱の下合穴である「委中」(いちゅう)もひじょうに有効です。

足首にある「解渓」は、 長母指伸筋と 長指伸筋の間の凹みに取ります。足を背屈させて浮き出る「」は何本かあり、そのうちもっとも目立つのは前脛骨筋腱で、その横並びにある少し細い2本の「」が長母指伸筋腱長指伸筋腱です。

【ST42 衝陽胃の原穴/皮枝はL5】

【ST43 陥谷胃経の兪穴/皮枝はL5】

【ST44 内庭胃経の榮穴/皮枝はL5】

【ST45 厲兌胃経の井穴/皮枝はL5】

衝陽」(しょうよう):第2中足骨を指先の方から蝕知、第2中足骨底部中間楔状骨足背動脈拍動部

陥谷」(かんこく):第2中足指節関節の小指側の凹み

内庭」(ないてい):第2第3足指の間のみずかきの部分、皮膚の色が変わるところ

厲兌」(れいだ):第2指の爪、第3指側の基部

衝陽」は 足背動脈 拍動部に取ります。

動脈硬化などで虚血(血液不足、血流不全)状態になると、足背動脈の拍動感じられないかもしれません。胃の 原穴 である「衝陽」で、“” が正常に働いて“気血” が充分に供給されているか? チェックしてみましょう。ここがゴリゴリして痛く感じるときは、「」の調子が良くありません。

内庭」は 榮穴 なので、経脈や臓腑にこもった熱を冷ます作用があります。のぼせ・ほてり・胸やけ・食あたり・頭痛などに効きます。お灸をすえる場合は正位置ではなく、足裏の「裏内庭」を使います。

足の第2指を折り曲げ、指が足裏につく位置に取ります。

【太陰脾経への連絡】

衝陽」から分岐して第1指に至り、足の太陰脾経 につながります。

足の太陰脾経

“脾” の機能

と協働し、運化(うんか、水穀(飲食物)を消化し、水穀の精微後天の精=栄養素)と水液吸収して津液営気衛気 を生成し、それらを全身に送る作用)を主る。
昇清(しょうせい、運化で吸収した津液清陽を上焦のに送り、臓腑器官が下に落ちないよう吊り上げる作用)を主る。
統血(とうけつ、固摂作用の強い営気を脈中へ送ることによって、を脈外に漏らさず順調にめぐらせる作用)を主る。
営気=血脈中に分布し脈管内を巡る気)を蔵する。
*「後天の本」(後天の精の源)と呼ばれる。
*「生痰の源」(脾の失調は「痰」=水や粘液などの停滞を生む)
四肢を司る。
*五行は、五官は、五華は、五神は、五液は (よだれ)、五志は、五体は肌肉
に開竅する。(咀嚼、嚥下など)が失調するとの機能が低下する。
中焦に属する。
*経は 足の太陰脾経
と表裏の関係にある。

東洋医学」における “臓腑” と実際の “臓器” をイコールで結ぶことはできませんが、「」が人体でもっとも大きなリンパ器官であり、造血機能・血液の貯蔵・免疫機能などを担う「脾臓」であることは間違いありません。

が、消化吸収という機能面からいうと、「脾臓」に隣接する「膵臓」も「」の範疇に入れるべき……といわれています。

ダスカロスの教え」では、「脾臓」と「肝臓」に位置する エーテルセンター  を、肉体における「シンボルオブライフ」のセンター7センター8に割り当てています。

“太陰脾経” の走行とデルマトーム

足の第1指内端(隠白穴)に起こり、第1指内側白肉際(大都穴)を循り、内果の前廉に上り、脛骨後縁に沿って膝内側に上り、大腿骨内側を上り鼠径部の衝門穴より腹に入り、府舎穴から中極穴、関元穴で任脈と会し、ついで本経腹結穴、大横穴、腹哀穴を経て腹中に入り、中脘穴、下脘穴の際にいたってに属しを絡う。さらに横隔膜を貫いて胸部に上り、咽頭より舌根に連なり舌下に散じる。

また、そのなるものは、中脘穴より別れて横隔膜を貫き心中に注ぎ、手の少陰心経 に連なる。

Wikipedia「足の太陰脾経」

共同して働く「」と「」は、「経脈の走行」も似通っています。

“太陰脾経” の経穴

【SP1 隠白脾経の井穴/皮枝はL4】

【SP2 大都脾経の榮穴/皮枝はL4】

【SP3 太白脾の原穴脾経の兪穴/皮枝はL4】

【SP4 公孫脾経の絡穴八総穴/皮枝はL4】

【SP5 商丘脾経の経穴/皮枝はL4】

隠白」(いんぱく):第1指の爪、外方の基部

大都」(だいと):第1中足指節関節突起部の前方

太白」(たいはく):第1中足指節関節突起部の後方

公孫」(こうそん):第1中足骨を後方になぞり、指が止まる陥凹部

商丘」(しょうきゅう):内果尖の前下方にある舟状骨粗面(舟状骨の突起部)と内果尖の間、陥凹部

大都」から「商丘」は、「足のアーチ」の内側縦アーチ(土踏まず)を形づくる部位です。

足のアーチ」が崩れると、さまざまな問題が生じます。

公孫」は内側縦アーチのいちばん高いところ、「公孫」と「商丘」は前脛骨筋および 後脛骨筋 停止部近くにあるので、「足のアーチ」の状態を診るのに適します。かつ崩れたバランスを調整する経穴としても有用で、ことに「公孫」は脾経の 絡穴 であり、八総穴 でもあるので、ひとつで何役もこなせる「」の特効欠です。

【SP6 三陰交/皮枝はL4】

【SP8 地機脾経の郄穴/皮枝はL4】

【SP9 陰陵泉
脾経の合穴/皮枝はL4】

三陰交」(さんいんこう):脛骨の内側縁、内果尖(脛骨の下側にある一番尖ったところ)から上方3寸

地機」(ちき):「陰陵泉」の下方3寸

陰陵泉」(いんりょうせん):脛骨の内側を指で撫で上げ、指が止まるところ

これらの経穴の皮枝は、大腿神経L2L4から発生)の分枝の伏在神経(ふくざいしんけい)です。伏在神経は、膝内側と下腿内側の感覚を支配する感覚神経です。

ひざも入れる

伏在神経に沿うように、大腿静脈の支脈の伏在静脈が走行しています。伏在静脈は皮膚に近いところにある表在静脈で、主にこの静脈に「下肢静脈瘤」ができます。

ふくらはぎの筋肉が持つ筋ポンプ作用によって、下肢の血液は心臓に送り返されています。が、運動不足などでこの作用が低下し、さらに逆流を防ぐ静脈弁が加齢などの要因で壊れてしまうと、「下肢静脈瘤」ができてしまいます。

下肢の内側にある経脈……「太陰脾経」・「少陰腎経」・「厥陰肝経」の3つの「足の陰経」は、“” や “津液” を身体の上部に押し上げる作用があります。“陽気” を下肢末端まで降ろす作用がある「太陽膀胱経」とセットで使うと、下肢に溜まりがちな “” や “津液” の循環を促すことができます。

また、スネの内側ふくらはぎにある経穴は、「」と「」の機能低下によって生じる 痰湿(たんしつ)体質の改善にも有効です。

【SP10 血海/皮枝はL3】

【SP11 箕門/皮枝はL2】

【SP12 衝門/皮枝はL1】

血海」(けっかい):内側広筋の盛り上がった所、膝蓋骨の内側上端から上方2寸、内側広筋は膝をピンと強く伸ばすと盛り上がる

箕門」(きもん):膝蓋骨の内側上端と「衝門」を結ぶ線を3等分し、「衝門」から1/3のところ、縫工筋 と 長内転筋 の間、大腿動脈の拍動部

衝門」(しょうもん):「曲骨」の外方、大腿動脈拍動部の外方

血海」は「陽明胃経」の「陵丘」と同じ高さにあり、同じく大腿四頭筋の上にある経穴です。大腿四頭筋は人体でもっとも大きな筋肉ですので、この筋肉の酸素やエネルギーの消費量は大きいのです。「血海」はその名の通り “” に関する症状に効果があり、大腿の「深部」にある太い静脈動脈神経を間接的に刺激して “血の廻り” を改善します。

そして「箕門」と「衝門」は、大腿動脈大腿静脈大腿神経の走行上に位置しています。これらの経穴への刺激は、下肢血液リンパの循環を良くします。とくに女性は骨盤内に「子宮」があり、下半身血液循環が滞りやすいので、下肢の経穴をうまく使って改善を図ってみてください (*^^)v

【SP13府舎/皮枝はL2】

【SP14 腹結/皮枝はT11】

【SP15 大横/皮枝はT10】

【SP16 腹哀/皮枝はT8】

【SP17 食竇/皮枝はT5】

【SP20 周栄/皮枝はT2】

【SP21 大包脾の大絡の絡穴/皮枝はT7】

府舎」(ふしゃ):ヘソ中央の下方4寸3分、正中線の外方4寸

腹結」(ふっけつ):ヘソ中央の下方1寸3分、正中線の外方4寸

大横」(だいおう):ヘソ中央の外方4寸

腹哀」(ふくあい):ヘソ中央の上方3寸、正中線の外方4寸

食竇」(しょくとく):第5肋間を外方に指を滑らせ、正中線から6寸のところ

周栄」(しゅうえい):第2肋間を外方に指を滑らせ、正中線から6寸のところ。肺経の経穴「中府」の真下になる

大包」(だいほう):真上に手を挙げ、腋窩の中心を通る線上、第6肋間

府舎」から「腹哀」にかけては、「大腸」の 上行結腸下行結腸横行結腸 を刺激するポイントになります。

東洋医学」の本には、「大横」の名前は横行結腸に由来するとありますが、解剖学的にみると左右の「腹哀」を結ぶラインが横行結腸になります (;^_^A

腹部の経穴を通じて、お腹をコルセットのように取り巻く「腹筋」(外腹斜筋内腹斜筋腹横筋)にアプローチすることもできます。

外腹斜筋内腹斜筋は、体幹をねじるときに使われる筋肉ですが、日常の動作ではあまり使われないので、弱っていたり、硬くなっているひとが多いです。脇からお腹にかけての筋肉を意識的に使い、軽いマッサージで強張りを取ると、体が軽くなって動きやすくなります。

腹哀」以降、経脈は胸部に入ります。

走行路は外方に2寸動き(正中線から6寸)、「食竇」から「周栄」は胸部の 呼吸筋 群を、第6肋間に取る「大包」は前鋸筋を刺激します。

現代人の暮らしは肩甲骨前方に引っ張られた状態……つまり、前鋸筋収縮した状態で固定されがちです。「大包」周辺をほぐし、肩甲骨を正しい位置に戻して姿勢を改善してください。

大包」は、全身にめぐる “気血” を統括し、臓腑四肢をくまなく滋養をする「脾の大絡」です。

脾の大絡は「十五絡脈」のひとつで、五臓六腑の十二経脈に一つずつある絡脈と、 陽を束ねる督脈、陰を束ねる任脈脾の大絡の三つを加えて「十五絡脈」です。 「」にだけ絡脈が二つある点に、“後天の気” を重視する「東洋医学」の特徴が良く現れている……といわれています。

大包」はお気に入りの経穴です。「大包」周辺を軽く撫でるだけで、全身が整ってスッキリします (*^^)v

【少陰心経への連絡】

中脘から分岐した経脈が心中に注ぎ、手の少陰心経 につながります。

つづく

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9月18日の月食 までに、以下の予定で記事をアップします。

7月末:少陰心経太陽小腸経
8月中旬:太陽膀胱経少陰腎経
8月末:厥陰心包経少陽三焦経
9月中旬:少陽胆経厥陰肝経

可能なら18日までに、まとめのような記事を書く

半分ほど非物質界にズレた感覚が続いていて、ボケら~っとしてるだけで満足なのですが、記事も書かなきゃなぁ~ってのがあってバランスとるのに苦労してます、、、が、1日の1/3~半分は睡眠ですから。だいじょーぶ、問題なし。