「ダスカロスの教え」と「東洋医学」を融合させる試み(12)
足の少陰腎経
“腎” の機能
“精” を蓄えることが、「腎」のもっとも重要な機能です。
Noel は “精” を「ダスカロスの教え」でいうところの “マインド” と捉え、ヘソを中心にぐるっと円を描く「大腸」を “太陽神経叢” の外周部、”エーテル・バイタリティー” を貯蔵する “太陽神経叢” の機能を担うのが「腎」……と考えています。
“臓器” としての「腎臓」は、第12胸椎 ~ 第3腰椎の間にあります。
「腎臓」は “太陽神経叢” の上部、「膀胱」は下部にあり、中心部には腹部大動脈 と 下大静脈(人体でもっとも大きな静脈)があります。
“太陽神経叢”(エーテル・センター)の中心に “太い血管”(“血液”= エーテル・バイタリティー に富む “水”)があるのは、ナルホド~という感じですよね (*^^)v
腹部大動脈からは、無対性の 腹腔動脈(左胃動脈・脾動脈・総肝動脈に分枝)・上腸間膜動脈・下腸間膜動脈、有対性の 腎動脈・精巣動脈もしくは卵巣動脈・腰動脈・下横隔動脈 が分岐し、さまざまな臓器組織に “血液” を送っています。
胃や腸などの 消化管 に送られた “血液” は栄養を吸収し、門脈 を通って肝臓に入ります。
栄養を吸収する “消化管”、および栄養を運搬する “血管” のネットワークが、“太陽神経叢” の働きを物質レベルで支える……と Noel は考えています。もちろん、“水” の循環に関与する腎臓と膀胱も、“太陽神経叢” の働きを担っています。つまり「東洋医学」における「腎」の機能は、胃・腸・脾臓・肝臓・生殖器・腎臓・膀胱・血管系・リンパ系 などの働きを総合的に捉えたものといえます。
「腎」は “陰“ と “陽” の双方の機能を有します。
「腎」の “陰気” を「腎陰」、“陽気” を「腎陽」(命門の火)と呼称し、「腎陽」によって “精” は “元気”(生命活動の原動力)に化成され、「命門の火」が全身の “水”(陰気)を温煦し動かす……という「東洋医学」の捉え方は、“太陽神経叢” の働きそのものといえます。
“水”(津液)の循環を、「東洋医学」的に説明してみましょう。
というわけで、「東洋医学」では「肺」を水の上源、「腎」を水の下源、「命門の火」によって “水” が「三焦」を廻ることを三焦気化と呼ぶのです。
“少陰腎経” の走行と特徴、デルマトーム
「少陰腎経」は、「任脈」にごく近いところを走行します。
これは、「腎」が “太陽神経叢” と “性センター” 双方の機能を持った エーテル・センター ゆえのものでしょう(注:ヨーガの分類でいうと 第1チャクラの位置は任脈の「会陰」(CV1)、第2チャクラの位置は「曲骨」(CV2)~「神闕」(CV8)・「長強」(GV1)~「腰兪」(GV2)に相当します が、Noel は第1チャクラと第2チャクラをまとめて “性センター” とします)。
左右の肢を上ってきた「少陰腎経」は督脈の「長強」(ちょうきょう、皮枝はS2~S4)で合流し、体内に入ります。
そこから「腎」と「膀胱」を通過し、「肝」→「舌本」および「肺」→「心」に至る流れは、「少陰腎経」が「湧泉」から “陰気”(地の気)を吸い上げて順次、“太陽神経叢”→“ハート・センター”→“ヘッド・センター” を充足することを示す……と考えています。
“少陰腎経” の経穴
【KI1 湧泉=腎経の井穴/皮枝はS1】
「正経十二経脈」の経穴のうち、足の裏にあるのは「湧泉」のみ……で、足の裏は “地の気”(陰気)を取り込むところです。
「少陰腎経」のスタート地点が足の裏なのは、一身の “陰液“ の根本である「腎」の働きを如実に示すものといえます。
【KI2 然谷=腎経の 榮穴/皮枝はS1】
【KI4 大鍾=腎経の 絡穴/皮枝はL4】
【KI5 水泉=腎経の 郄穴/皮枝はL4】
「少陰腎経」は足部で “渦” を巻きます。
これも他の「正経十二経脈」にはない特徴で、「少陰腎経」が重たい “陰気”(水・地の気)を引き上げるからでしょう。軽い “陽気” と 重たい “陰気” の接触が “渦” をつくるのです。
内果の下にある「照海」は「陰蹻脈」(いんきょうみゃく、奇経八脈)の 総穴 で、足首を挟んだ外側には「陽蹻脈」の「申脈」があります。「陰蹻脈」は「然谷」(足の内側)から始まり、「照海」(足の内側、総穴)→「交信」(下腿の内側、郄欠)→「欠盆」(鎖骨の上)→「人迎」(首・胸鎖乳突筋)→「睛明」(目頭)で「太陽小腸経」・「太陽膀胱経」・「陽明胃経」・「陽蹻脈」と会します。
「陰蹻脈」が「第一の脈であり、彼の脈が動けば諸脈皆通ず」とされる「始原の脈」であり、「一身左右の陰を主る」(吉田啓『経絡と解剖学』154ページ)といわれるのは、他の経脈と連携して “陰気” の循環を促す作用ゆえ……と思われます。
重たい “陰気” の廻りがスムーズであれば、必然的に軽い “陽気” の廻りもスムーズなのです。
【KI7 復溜=腎経の経穴/皮枝はL4】
【KI8 交信=陰蹻脈の郄穴/皮枝はL4】
【KI9 築賓=陰維脈の郄穴/皮枝はL4】
【KI10 陰谷=腎経の合穴/皮枝はL4】
これらの経穴は、伏在神経(大腿神経 の分枝)の上にあります。
伏在神経が障害されると、膝から下の内側に痛みやしびれを感じることがあります(感覚神経ゆえ、運動機能に影響が及ぶことはありません)。
「交信」は「陰蹻脈」(については「照海」のところに記述)の 郄欠、「築賓」は「陰維脈」(いんいみゃく)の郄欠でなので、急性症状への対処に向いているということになります。
「陰維脈」は「築賓」(下腿の内側、郄欠)→「衝門」(そけい部)→「府舎」(そけい部)で「太陰脾経」・「厥陰肝経」・「少陰腎経」・「陽明胃経」と会す →「大横」(腹部)→「腹哀」(腹部)で「太陰脾経」と会す →「期門」(胸部)で「厥陰肝経」と会す →「天突」(首)→「廉泉」(喉・舌骨)で「任脈」と会す……という流れになっています。
「陰維脈」が「諸陰をつなぎ、一身の裏を主る脈」(吉田啓『経絡と解剖学』168ページ)とされるのは、“水”(陰気)の経脈をつなぐものであるからではないでしょうか? そして、「陰維脈」の 総穴 が「厥陰心包経」の「内関」(PC6、次回掲載)なのは、“水”(陰気)の廻りに「心」(神)の力が必要だからと思われます。
【KI11 横骨/皮枝はT12~L1】
【KI12 大赫/皮枝はL1】
【KI13 気穴/皮枝はT11】
【KI14 四満/皮枝はT11】
【KI15 中注/皮枝はT10】
【KI16 肓兪/皮枝はT10】
「横骨」から「肓兪」は、“太陽神経叢” の下半分です。
鍼灸治療では「少陰腎経」より「任脈」を使用することが多いのですが、ヘソ中央の「神闕」は使われません。が、代わりにヘソの左右にある「肓兪」・「天枢」(陽明胃経)・「大横」(太陰脾経)が使われます。
ヘソはわたし達が胎児のころ、へその緒(臍帯)を通じてお母さんから栄養や酸素をもらっていたところです。
“太陽神経叢” の中心にヘソがあるのも、ナルホド~な感じですよね。
【KI17 商曲/皮枝はT9】
【KI18 石関/皮枝はT9】
【KI19 陰都/皮枝はT8】
【KI20 腹通谷/皮枝はT7~T8】
【KI21 幽門/皮枝はT7】
「肓兪」から「幽門」は、“太陽神経叢” の上半分です。
この部位には胃・肝臓・脾臓・膵臓・胆のうなどがありますが、「経穴の幽門」=「胃の幽門」ではないことに注意してください。経穴の「幽門」は、噴門(第11胸椎の左側)と幽門(第1腰椎の右側)の間にあります。
【KI22 歩廊/皮枝はT5】
【KI23 神封/皮枝はT4】
【KI24 霊墟/皮枝はT3】
【KI25 神蔵/皮枝はT2】
【KI26 或中/皮枝はC3~C4】
【KI27 兪府/皮枝はC3~C4】
「歩廊」からは “ハート・センター” の領域になります。
「肺」は主に “呼気” を、「腎」は “吸気” を主ります。ゆったりした横隔膜呼吸(下腹を軽く引き締めて横隔膜をしっかり使う呼吸)で、“ハート・センター” と “太陽神経叢” を整えましょう。
【経厥陰心包経への連絡】
「少陰腎経」は「肺」を出て「心」を絡い、胸中に注いで 手の厥陰心包経 に連なります。
つづく