「ダスカロスの教え」と「東洋医学」を融合させる試み(13)
手の厥陰心包経
“心包” の機能
「心包」は形のない “臓腑”(エーテル・センター)とされます。そんな「心包」を Noel は、「心」(ハート・センター)を保護する エーテル の働きと捉えています。「心」の機能停止は致命的ですから、、、「心包」という保護膜で覆っているのです。
“厥陰心包経” の走行と特徴、デルマトーム
「厥陰心包経」は、「太陰肺経」と「少陰心経」の “間”(腕の内側中央部)を走行します。
「厥陰心包経」が中央の 正中神経、「太陰肺経」が親指側の 橈骨神経 と 橈骨動脈、「少陰心経」が小指側の 尺骨神経 と 尺骨動脈 上にあると覚えると、3つの陰経の位置関係が分かりやすくなります。
ちなみに、「厥陰心包経」の走行上には正中動脈と呼べる血管はありません。が、それに該当するような “動脈” を持つひとが増えてきているのだとか……
ともあれ、「厥陰心包経」と「少陽三焦経」は三陰三陽の経脈をつなぎ、全身を廻る “陰気” と “陽気” をバランスさせる 絡脈(らくみゃく)的な働きを持つと考えると、スッキリ “腑” に落ちると思います (*^^)v
“厥陰心包経” の経穴
【PC1 天池/皮枝はT4】
【PC2 天泉/皮枝はT1】
【PC3 曲沢=心包経の合穴/皮枝はT1】
「厥陰心包経」の始点は「天池」と同じ高さの「膻中」(心包の 募穴)にあると Noel はみていて、経脈は「膻中」(心臓)→「天池」(肺)→「天泉」(上腕)→ 「曲沢」(肘)へと走行します。
「天池」・「天泉」・「曲沢」の名称がすべて “水” に因むのは、「厥陰心包経」が「少陰腎経」(太陽神経叢)の “水”(陰気)を引き継ぎ、「心肺」(ハート・センター)の “陽気” をチャージして流すことを暗示していると感じます。
【PC4 郄門=心包経の郄穴/皮枝はT1】
【PC5 間使=心包経の経穴/皮枝はC8】
【PC6 内関=心包経の絡穴、陰維脈の総穴/皮枝はC7】
【P7 大陵=心包の原穴、心包経の兪穴/皮枝はC7】
長掌筋 腱 と 橈側手根屈筋 腱は、以下のようにすると浮き出てきます。
「郄門」・「間使」・「内関」・「大陵」は、正中神経 上にある経穴です。
正中神経が傷害されると小指以外の指がしびれたり、親指と人指し指で丸をつくりにくいなどの症状が現れ、手根管(手根骨+屈筋支帯)内で圧迫されると 手根管症候群 という病名がつきます(西洋医学は病名つけないと始まらない感じ、、、^_^;)。
「内関」は「陰維脈」の 総穴 で、「心」(ハート・センター)の陰陽バランスを整えるのに適しています。
「陰維脈」は “水”(陰気)の経脈をつなぐ経脈 で、そのような経脈の総穴が「厥陰心包経」にあるのは、陰陽のバランスを取るために “火”(陽気)の性質 が必要だからでしょう。
【PC8 労宮=心包経の榮穴/皮枝はC7】
【PC9 中衝=心包経の井穴/皮枝はC7】
「労宮」および指先にある 井穴 については こちら で書いた通りで、指先の井穴には “気” を放出する “陰経”と、“気” を吸い込む “陽経” の違いがあると感じます。
経脈の流れに沿っていうと、親指・中指=放出、人差し指・薬指=吸収、小指=放出と吸収の両方……ということになります。
この性質に従って指を使い分けると、エーテル・バイタリティー を外界に流すときは親指・中指、情報収集や診察のときは人差し指・薬指を使うとよい……ということになります。小指はじぶん自身の陰陽バランスを取るための指と感じますので、あまり使わなくてもいいようになっているのかもしれません。
手の少陽三焦経
“三焦” の機能
「心包」と同様に形のない「三焦」の機能は、全身を廻る “気” と “水” の流れを、上焦・中焦・下焦にある “臓腑” の働きに沿って解釈するとみえてきます。
上焦・中焦・下焦の区分は、以下のようになっています。
“水” は “気” によって動かされます。
「三焦」が “水” の通路となるのは、“諸気”(さまざまな種類の “気”)の通路であるからに他なりません。“水” の代謝には「肺」・「脾」・「腎」・「小腸」・「大腸」・「膀胱」などの “臓腑”(エーテル・センター)の協調が必要です。Noel は「三焦」を、さまざまな “臓腑” の協調を促す エーテル の働きとみていて、それを 免疫系 や リンパ系 を含むホメオスタシス(恒常性)と捉えてもよいのでは?……と考えています。
“少陽三焦経” の走行と特徴、デルマトーム
「少陽三焦経」は「陽明大腸経」と「太陽小腸経」の “間”(腕の外側中央部)を走行し、3つの “陽経” をつないでバランスさせます。かつ、表裏関係にある「厥陰心包経」と連絡し、“気” と “水” の廻りを全身的に整えます。
「少陽三焦経」が上焦の「膻中」(心包の 募穴)で左右が会し、そこから 中焦 → 下焦 に流れるのは、「心包」と「三焦」が担う軽い “気” と重たい “水” の調和的運行を促すためといえます。
「心包」と「三焦」の 背部兪穴 が、それぞれ “水の上源” と呼ばれる「肺」、“水の下源” と呼ばれる「腎」に接するところにあるのも同様の意味があると感じます。
「心包」と「三焦」の経脈をつないで “陰陽” をバランスさせる作用は、これらの経脈が骨や筋肉の “間” を縫うように走行することにも表出していのではないでしょうか?
“少陽三焦経” の経穴
【TE1 関衝=三焦経の井穴/皮枝はC7】
【TE2 液門=三焦経の榮穴/皮枝はC7】
【TE3 中渚=三焦経の兪穴/皮枝はC8】
【TE4 陽池=三焦の原穴/皮枝はC8】
中手指節間関節は「MP関節」ともいいます。
「中渚」は 兪穴 で主治は体重節痛……身体の節々(関節)の痛みに効く経穴です。手の中指骨の “間” には「中渚」と同じ作用を持つ、「腰痛点」と呼ばれる 奇穴 が2ヶ所あります。
「腰痛点」に限らず、手足の中手骨の “間” の刺激は総じて筋肉の緊張を取り、関節の痛みを和らげる作用があります。
【TE5 外関=三焦経の絡穴、陽維脈の総穴/皮枝はC7~C8】
【TE6 支溝=三焦経の経穴/皮枝はC7】
【TE7 会宗=三焦経の郄穴/皮枝はC8】
【TE9 四瀆/皮枝はC7】
「外関」(少陽三焦経)と「内関」(厥陰心包経)は表裏一体となって働く経穴で、双方とも経脈同士をつなぐ 絡穴 です。絡穴の作用は「心包」と「三焦」の働きと同質ですから……これらの経穴の効果が相乗的に高くなるのは自明でしょう。
「陽維脈」の走行は、「金門」(足側面)→「陽輔」(下腿側面)→「陽交」(下腿側面、陽維脈の 郄欠)→「臂臑」(上腕上部前面)→「天髎」(肩甲骨)→「臑兪」(肩甲骨)→「風池」(うなじ)→「瘂門」(後頭部)→「風府」(後頭部)→「脳空」(後頭部)→「承霊」(頭頂部)→「正営」(頭頂部)→「目窓」(前頭部)→「頭臨泣」(前頭部)→「陽白」(ひたい)→「本神」(前頭部)となっています。
「内関」を総穴とする「陰維脈」は「諸陰をつなぎ、一身の裏を主る脈」で、「陽維脈」は「諸陽をつなぎ、一身の表を主る脈」とされます。「陽維脈」の経穴はすべて “陽” の領域にありますが、そのような経脈の総穴が “陰気”(水)と関係が強い「少陽三焦経」なのは、“陽気” の廻りに “陰気” の廻りを同調させる効果を求めてのものと感じます。
【TE10 天井=三焦経の合穴/皮枝はC6】
【TE13 臑会/皮枝はC5】
【TE14 肩髎/皮枝はC4】
【TE15 天髎/皮枝はC4】
これらの経穴もすべて筋肉や骨の “間”・“縁”・“凹み” にあり、経脈同士をつなぐ「少陽三焦経」の性質がよく出たものとなっています。「天井」は肘関節、「臑会」・「肩髎」・「天髎」は肩関節の痛みに効く経穴です。
【TE16 天牖/皮枝はC2~C3】
【TE17 翳風/皮枝はC2~C3】
「天牖」は 板状筋 にアプローチできる経穴です。
首を回したり、横に傾けたりするのが辛いひとは板状筋が硬くなっていることが多いので、胸鎖乳突筋と僧帽筋の “間” にある「天牖」をピンポイントで狙ってみましょう。
「翳風」の下には 茎状突起 があります。顔面神経(表情筋を支配する運動性の第Ⅷ脳神経) は 茎乳突孔(茎状突起と 乳様突起 との間にある側頭骨 の孔)を通って頭蓋内から出てきます。
「翳風」は 顔面神経麻痺 の特効穴です。
麻痺の主な原因はウイルス(ベル麻痺 は単純ヘルペスウイルス、ハント症候群 は水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化)……というわけで、“風” のつく経穴が持つ感染性疾患への効果が「翳風」にもバッチリ当てはまります。
【TE21 耳門/皮枝は下顎神経=三叉神経の第三枝】
【TE22 和髎/皮枝は下顎神経=三叉神経の第三枝】
【TE23 糸竹空/皮枝は眼神経=三叉神経の第一枝】
「少陽三焦経」は頭部に入ると「耳」の周囲で “渦” を巻きます。この “渦” は「少陽胆経」(次回記載)にもあります。
「耳」は「目系」(蝶形骨周辺、ヘッド・センター)の範囲にあります。「耳」を取り囲む “渦” は、こちらで書いたように “陽気” と “陰気” の接触によるもの でしょう。「少陰腎経」を流れてきた “陰気” をヘッド・センターの “陽気” が受け止めることでエネルギーの “渦” が生じるのです。
面白いことに、「耳」の奥には物質レベルの “渦”(蝸牛 と 半規管)があります。
蝸牛と蝸牛神経(第Ⅷ脳神経の内耳神経 由来)が「聴覚」、前庭系(球形嚢・卵形嚢・半規管)と前庭神経(第Ⅷ脳神経の内耳神経由来)が「平衡感覚」を担っています。「聴覚」と「平衡感覚」はエーテル的な性質が強い知覚ですから……形なき「三焦」にふさわしい機能といえます。
「和髎」は動脈の拍動を感じられる経穴で、“陽気” に富む動脈上の経穴は熱性の痛みの緩和に適します。参考までに、動脈の拍動が感じられる経穴をピックアップしておきます。
「耳門」・「和髎」・「糸竹空」は 三叉神経(第Ⅴ脳神経)にアプローチできる経穴で、三叉神経 由来の疼痛 に効きます。
【少陽胆経への連絡】
「翳風」から耳中に入り耳前に出て、頬を経て外眼角(目尻)のあたりに終わり、足の少陽胆経 に連なります。
つづく