マイルドセブン/染野太朗
バンドの練習が終わって、メンバーが二人スタジオの喫煙室にいるのを見つけたとき、腹の底から怒りが湧いた。久しぶりの突き上げるような怒りだった。その場を離れ、深呼吸をし、水を飲んだ。少し冷静になり、会計しよう、と喫煙室の外から声をかけた。声に苛立ちが含まれていたかもしれない。苛立ちが伝わっていたらどうしよう、とそのあとしばらく不安だった。そのような類いの不安を感じるのも久しぶりだった。すぐに会計をするとわかっているはずなのになぜ自分を待たせるんだ、と思った。けれども、そんなことは