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普通の会話だったつもりがWeChatブロックされてピンチになった話

素人が中国深センでいきなりバー経営をはじめて、およそ3週間が経過しました。

お店のコンセプトを考えて、頭を抱えたり。
たくさんある南山のバーのなかで、なぜお客さんはうちを選んで来てくれるのだろう、うちのお店の魅力ってなんだろう、私なんかのどこがいいんだろうか…なんて10代の思春期かっつーくらいに悩みはつきない日々。

「私は私! 私以外私じゃないわ!」
と下手すぎる思考法で意味不明な限界突破を迎えたと思えば、一回りは年下であろうキュートな中国人にたいそう気に入られ、「ゆきの! ゆきの!」と大はしゃぎで連日来店していただく。

私も彼もすんごいニッコニコなんだけど
彼の言ってること、わたし、ひとつも分かってない。

周りの通訳ボランティア(友人&お客さん)に助けてもらいながら、必死にコミュニケーションをはかります。
前回も楽しんでもらったみたいでなによりです!
しかしまあ冷静に考えたとしても、私なんかのどこが…(思春期の無限思考ループがここで再び)

そのほかにも、メニュー考えたり、新メニュー試作したり、カクテルやウイスキーの勉強と練習に、それらの商品をつくるための材料を仕入れてそろえて。

ココ!
毎回なにかしらハプニングはあるんだけど、今回はココでした。

素人が見知らぬ土地しかも海外でいきなり飲食店経営。土地勘とか物価とか相場とか、何一つ知らない状況で、助けてくれたのが元オーナーです。

彼の話によると、お酒類、ジュース、おつまみなどなど、基本的にお世話になるのは巨大ネットショッピングモール・タオバオ(淘宝)だそう。
教えてもらった商品リンクをタップして、スマホでポチポチと仕入れ。なにもしゃべらなくても、最安値も最短着荷日も画面で一発確認。
なんて便利なスマート仕入れ!

さらに元オーナーは地元の卸業者のWeChat ID も教えてくれました。
わあ、酒屋さんの業者なんて、まるで三河屋のサブちゃんみたい!
ときめき具合が明らかに昭和。

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ビールやジュースなどかさばるモノは、ここに頼むといいよ、とのことで、さっそくWeChat でポチポチ問い合わせ。
オール中国語ですが、会話じゃなくて文字でのやりとりなら落ちついてやればなんとかなります。てか漢字だし。

ソーダ水はありますか?
無糖のウーロン茶もありますか? (画像添付を見て)いやそれ微糖だから。差不多(似たようなもんだろ、という中国語)じゃないから。

できるだけ注文ロット数を増やした方がいいかな、と日本式発想であれこれ質問してみた。
結局、あるものとないものがあったので、初回は仕入れ重要度の高いビールとコーラを仕入れることに。

私「明日の午後3時ごろにお店に配達してもらえますか?」
卸「わからん」
私「はい!」

そうですよね、時間指定なんてぜいたく言っちゃいけません。甘ったれてました!

その翌日の午後4時ごろに、商品をお店に届けてくれました。 ちなみに仕入れ値はタオバオの商品と比較しても、ぶっちぎりで最安値。
WeChat の送金機能で代金を支払って完了。こういうお金のやりとりもチャットでできると、金額とかお釣りとか会話ゼロで確実に支払い記録も残るので、ストレスなくてありがたいです。

三河屋のサブちゃんみたいに話を聞いてくれるものだと、勝手な予想は裏切られたけど、安かったし届いたし、まあいいかな、という印象でした。

その翌週、2回目の注文。

今回は、ソーダ水はありますか?
できれば、無糖のウーロン茶もありますか? (画像添付を見て)いやそれ微糖だから。差不多(似たようなもんだろ、という中国語)じゃないから。前回もやったやん、この会話。

「明日の午後ならたぶん入荷しているから、入荷したあとにそっちにまとめて届ける」

というメッセージを受けて、今回はビールとコーラに加えてあといくつか発注しました。
1箱2箱じゃあ届けてもらうのも申し訳ないので、まとめて買ったほうがあちらにとっても商売になるだろう、と勝手な予想をしました。今思えば、この「勝手な予想」が多すぎたんですよね。

翌日、配達が来ない。4時になっても5時になっても来ない。
ちょっと待ってよ開店前からビール売り切れなんて!

あわててメッセージを送って聞いてみると、「まだ来ない。入荷を待ってる。明日になるかも」とのこと。
あっちもこっちも、「まだ来ない」状態。
アイヤー!

小さな店舗スペースで、在庫を確保できないため、仕入れが1回なくなると大打撃。
「今回はキャンセルします!」とWeChatで連絡して、近所の酒屋にビールを買いに走りました。そこでは卸価格ではなく小売価格なので、割高ですが仕方ない。
その日は緊急準備でまかないました。

そして3回目の注文。
「まだ来ない。入荷を待ってる」とか言われたらいやだなあ、でもまあ安いし、そういうものかな、とモヤモヤした感情でメッセージを送信。

私「你好」
!『送信エラー。相手にメッセージが届きませんでした』
私「あれ? おかしいな、もう一度。你好」
!『送信エラー。相手にメッセージが届きませんでした』

まさかの卸業者にアカウントブロックされて二度とメッセージが送れなくなる事態。
どうやら、「ソーダ水ある? ウーロン茶は? やっぱキャンセルで!」という一連の会話の結果、「この外国人はワガママばっかりで迷惑だ」と判断されたようです。

1箱2箱じゃあ届けてもらうのも申し訳ないので、まとめて買ったほうがあちらにとっても商売になるだろう、とか、1日遅れたくらいで注文キャンセル、とか、タイミングもあったのでしょうがとにかく印象が悪かった。

さあ、唯一の直接仕入先を失った! どうしよう!
みなさんならここでどうしますか?
私がざっと考えた選択肢は以下の通りです。

1)誰かに聞いてもらおう、note に書こう (たいていのハプニングはコンテンツにして発信すると乗り越えられる)
2)ほかの卸業者を探す (価格は交渉次第)
3)近所のスーパーや酒屋でなるべく安く買ってデリバリーを依頼する (小売価格なので割高)
4)タオバオで中国全土から最安値を探し出して買う (安いっちゃ安いけど時間がかかる)

というわけで、とりあえず全部やってみました。
複数選択で全方向にチャレンジ! が基本です。

このパッと浮かんだ選択肢を見て、ふと感じたことが、「謝ってもう一度取引をしてもらう」という発想が自分にはなかったこと。

確かにあの卸業者は安かった。だけど、なんかモヤモヤしたんですよね。
いろいろ注文つけた私が悪かったんだけど、ないならないでいいし、発送日が遅れるならあらかじめ知らせてくれたらこちらで対応もできた。

ほかのスーパーや酒屋で買えば、割高だけど時間通りに注文の商品が届くし、タオバオで買えば時間はかかるけど安く買うこともできる。

お客さんや消費者が目的にあわせて好きなお店を選ぶように、お店や供給者も相手に売るかどうかを選ぶんだな、というのがWeChat ブロックされたことをふりかえったときの率直な感想です。

お店は私に「売らない」という意思表示をしたので、その結果をうけて私は「ほかのところで買う」という決定をしました。

こういう、小さな意思決定の繰り返しで関係性を築いたり、失ったりするのだなあと。
その中で私はどうやってお客さんに「あのバーに行きたいね」とか「行ってみようかな」と選択してもらえるのかなあと。

なんかそんなことを考えました。

それから数日後。
「卸業者からWeChat ブロックされちゃってさ。参ったよー!」
とバーで軽快なトークを繰り広げていたら「ちょっと待ってなさい。それ私がどうにかするから」とおもむろにスマホを取り出したのは元オーナーと一緒に働いていた元スタッフ。
以前のお客さんも、元スタッフも、頻繁に訪問してくれるのが嬉しい バー mosaic 酒場です。

私がブロックされた卸業者によく注文していたという元スタッフの彼女は、その場ですばやく電話をかけて「久しぶり〜。なんかごめんね、うちのお店の外国人、注文の仕方とかよく分かってなくてさ」みたいな親しげな雰囲気(言葉はわからないのでイメージ)で会話をはずませ、3分程度で通話は終了しました。

「無茶なこと言わなければ、また取引してくれるって」

やっぱり私、無茶なこと言ってたんだ!
キュートな元スタッフに「あんたはわかってない」と怒られながら、次回からの注文での注意事項を教わりました。
誰かに聞いてもらおうとせっせと話していたら、ひょんなことからスピード解決。

自分の中に留めておかないので、発信するのって大切だなあと再認識すると同時に、深センの人の優しさに支えられている日々に改めて感謝しました。

次回からはめっちゃ気をつけて注文しようと思います。

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