不幸について

人生は、ひとえに不幸でなければならない。

不幸こそが、生の意味であり、存在の証明である。死の願望は、常に胸の奥底に燃え続けていなければならないのだ。

それは、甘美な毒であり、魂を蝕む麻薬である。

人類は、いつから幸福という名の幻想に囚われてしまったのか。

画一的な価値観に支配され、真の生の意味を見失ってしまったのか。


幸福など、空虚な殻に過ぎない。人生の深淵を測る指標は、幸福度ではなく、不幸度である。

不幸の淵に沈めば沈むほど、魂は研ぎ澄まされ、生の充実は増していくのだ。


不幸であればこそ、小説は悲壮なまでに美しく、音楽は魂の奥底を揺さぶる。

薔薇色の幸福など、存在しない。あるのは、漆黒の闇の中でこそ輝く、真紅の不幸だけである。

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