大乗寺に襖絵を見に行ってみたい人に「取材ディレクターが教える香住の旅行ガイド」
香住の大乗寺まで応挙一門の障壁画をご覧になりたい方に、アクセス方法や周辺の飲食店、観光情報など、私の経験を元にご紹介いたします。
アクセスの悪さが文化財を守った
亀居山大乗寺の住所は、兵庫県美方郡香美町香住区森860、であります。なかなか行かない場所ですよね。でも、このアクセスの悪さが国宝級の絵画を守ったと言えるのです。
山下裕二先生は大乗寺を「丸ごと国宝にすべき日本一の障壁画空間」と評した流れで、「京都あたりには貴重な襖絵のお寺とか、沢山ありそうな気がするでしょ?」と私に問いました。
「ないんですか!?」と私。
「焼けちゃったり改変されたりして、大乗寺みたいに残っている所って他にないんだよね。結局、香住と南紀に残ったんだよ。」
「そうなんですか!」
戦火にも、震災にも遭わなかったから、大乗寺は残ったのです。ただ、100%完成当時のままではないそう。
記録によれば、完成当時は弟子の島田元直が描いた襖絵もあったらしいのですが、山崩れで部屋ごと崩壊。さらに、「山水の間」の絵は明治時代に盗難に遭い、修復されているのだとか。
とはいえ、この規模で現物が残っているのは日本でここだけ。オンリーワンの激レア文化財であることは間違いありません。是非是非、現地で実物を見て、味わって頂きたいと思います。
とゆーわけで、早速香住へとまいりましょう!
①羽田空港から鳥取空港へ
東京から行く想定で書きます。まずは鳥取空港 (鳥取砂丘コナン空港)へ飛んでくださいませ。乗るとしたら、本稿を書いている現時点では、この5つの便のどれかになるはずです。
ANAは空港第2ターミナルです。
保安検査場は「D」が最寄りなのですが、Dは閉まっていることが多いので、空港で待ち合わせるなら「Cの前」がオススメです。
単純な距離で言えば、大乗寺に最も近い空港は但馬飛行場(コウノトリ但馬空港)なのですが、羽田から但馬飛行場への直行便はないのです。だから、鳥取まで飛んで、東へちょっと戻るのがベストルート。
これを読んでいるあなたが大阪の方なら、伊丹空港から但馬飛行場へ飛ぶ便を是非利用してみてください。
②鳥取空港からはレンタカー推奨
鳥取空港から香住まで、車だと大体1時間ちょっとです。
鳥取空港でレンタカーを借りましょう。各社選べます。冬ならスタッドレスタイヤの車をオーダー。
鳥取空港から電車だと2時間半から3時間かかります。香住駅には駅のホームにも、駅を出た所にも、でっかい蟹のモニュメントがあったりして、それはそれで映えスポットなので楽しいと思います。
ただ、現地周辺でも車があった方が何かと便利なのは間違いなく、運転できる人と行くのが良いとは思うのです。
ちなみに我々番組スタッフは撮影機材を沢山運ぶため、東京から車で移動しました。9時間かかりました。朝8時に東京を出て、香住に着いたのが17時です。東京から車で行こう!って方はどうぞご参考ください。
③事前学習
行く前に読んでおくと良いのが、まずこれ。
佐々木先生の文章、少し引用します。
事前に手に入らない方は、大乗寺のミニお土産コーナーにも売っていましたので、見学の後に購入されるのも良いと思います。
『奇想の系譜』の辻惟雄先生が最近こんなインタビューに答えていて、とても面白いです。行きの移動中にスマホでも読むことができます。少し引用してみます。
現在の応挙の不人気っぷりは、辻先生が『奇想の系譜』を書いたせいでもあるという…笑
ちなみに動画ではこんなのがあります。
橋本麻里さんが大乗寺を訪ねて細かいところまで詳しく見ていくのですが、副住職の山岨さんがノリノリのマシンガントークで動画の尺が3時間以上あります。笑
④いざ、大乗寺へ!
こちらが公式HPです。バーチャルツアーなど解説が充実しています。
香住駅からですと、タクシーで5分です。
駅周辺の宿に泊まっているなら、歩いて行ってもグー。いいお散歩になると思います。ちなみに、大乗寺には車を駐める所は沢山あります。広いのでよくUターンする車も入ってきます。気をつけましょう。
大乗寺客殿は美術館と違い、絵はガラスケースの向こうにはありません。襖絵は襖としてそのままあります。だから、拝観には必ず係の人が付き、解説を聞きながら回る形になります。
大乗寺を訪れる人は必ずしも美術ファンばかりではありません。全く知らずに来る人もいます。例えば、城崎温泉に団体で泊まった人たちが観光地の一つとしてバスでやってきたり。そうした人の中の一部には、まったく美術への理解がなく、過去には絵を触っちゃう人がいたりしたそうです。そういう事がないよう、係の人と一緒に回るシステムになったそうな。
さらに、これを読んでいる方だけに耳寄りな情報をふたつ授けましょう。ここまで読んでくれたあなたの応挙への興味を信頼して。
まずは混み合う時間帯についてです。
お客さんで混み合ってくるのは、宿のチェックアウト後の時間帯と、昼食後です。みんな考えることは同じなので、狙い目は、宿のチェックアウト前と昼食前の時間帯。具体的には、午前中の10時前、12時前って感じでしょうか。13時頃から増えて14時くらいまで断続的に訪れたお客さんも、15時頃から減ってきますので、その辺りもまた狙い目です。
さらに、耳寄りな情報をもうひとつ。
ホームページを見ると「内拝料、大人1200円、子供600円」とあります。これには、客殿2階の見学は含まれていません。
客殿の2階には、今や応挙よりも人気の絵師、長沢芦雪が描いた猿の襖絵があり、これも超絶大必見の素晴らしい作品なのですが、通常拝観では案内コースに含まれていません。これをどうしても見たい人は、一周まわった後で聞いてみてください。
「芦雪の猿も見たいんですが、お2階の見学はできますか?」と。
タイミングが良いと別料金で拝観できます。もちろん、混雑状況によっては拝観できません。商業施設ではないので、どうしても観たい!と意地を張るのはおやめ下さい。空いている時間帯を狙い、係員さんがお手隙な状況の時のラッキーだと思って下さいませ。
大乗寺さんも、絵に理解がある人、大乗寺が好きな人、芦雪と知って観に来ている人を大事にしたいのです。
※2023年3月7日加筆
私が担当した番組の放送後、NHKアートシーンでも井浦新さんが訪れた様子が紹介されました。その効果もあってか、大乗寺にはかつてない人が押し寄せているそうです。週末はお寺の前に車の渋滞ができるほどだったとか。
ちなみに、当noteにもかなりのアクセスがありました。これを読んで「別料金で2階を見よう」と思った方も少なくないと思います。
しかし、残念ながら今日から2階の公開は中止となりました。
今後も状況は変わっていくと思います。
行かれる方は、大乗寺さんのフェイスブックかインスタグラムで、最新状況を確認してくださいませ。そして、お電話での問い合わせはできるだけお控えください。対応しきれないそうですので!
⑤大乗寺周辺で宿泊するなら
香住の町には、私の大好きなドーミーインがありません。アパホテルも、東横インも、法華インも、ルートインもありません。なんとかインみたいなホテルはないのです。
ってゆーか「ホテル」がありません。
民宿です。
あるのは、民宿。
えー、民宿嫌だわ!って人はもうお断りです。この続きも読まないでヨシ。でも読んでるあなたにだけ教えちゃう。
「応挙寺」のすぐ前に、
「応挙前」って民宿があります。
ここが超絶オススメ(小声)
最高なんです(小声)
ただし、ご予算に余裕があるならです。
私が13年前に泊まった時より、結構値上がりしています。今、大人数での連泊は厳しい。
応挙前に泊まって、応挙寺に行く。これは最高の贅沢。「応挙前」では、もう食べきれないよ!ってくらい美味しいものが次から次へと出てきます。
民宿は民宿でも、料理民宿なのです。とにかく料理がものすごい。
なんせ季節の料理だけじゃありません。
自家製のパンを焼いています。自家製のドーナツまで揚げたてが出てきて、淹れたてのコーヒーまで。一つ一つが全部めちゃくちゃ美味いのです。
あぁ、また泊まりたいなぁ(遠い目)
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•
今回、我々ロケ隊がお世話になったのはビジネスホテル的な趣きの宿、よしだ屋さん。民宿だったのを改装したそうです。きれいで快適。朝ごはんの白飯が美味しくて、こちらもとても良かったですよ!
ちなみに、夕食はよしだ屋さんで頼むこともできますが、周辺にはいくつも飲食店があります。香住に来て魚介を食べないでどうする!と言われそうですが、よしだ屋さんから徒歩1分の所にある「焼肉韓料理 平和」もとても良かったです。
⑥昼食はここで決まり!
前日入りして、朝からたっぷり大乗寺見学をしたら、その足でランチへ。大乗寺の敷地内にある「芭蕉庵」に突撃しましょう。
ここには応挙「芭蕉の間」の絵がかなり大きいサイズで飾られています。だから、芭蕉庵。掘り炬燵の席に座ると、お店のお母さんが大画面テレビで応挙のDVDを再生してくれました。どっぷりと応挙の余韻に。
お店のお母さんはゴマだれうどんを超オススメしてくれるので、そちらを是非です。売店には地元の日本酒「香住鶴」をはじめ、お酒に合いそうな珍味、干し柿、季節の野菜などが売っています。お土産にもいいかもです。
⑦ついでに寄りたい「余部鉄橋」
もう鉄橋じゃないのですが、通称「余部鉄橋」。正確には「余部橋梁」。ここには無料で上がれる「空の駅」があるので、スカイビューを堪能しましょう。
ただし、天気がいいと最高ですが、悪いと最悪です。
また、ほぼ同じ場所に道の駅があるので、地元の名産品を色々と購入することも可能です。
⑧ととのう場所あるよ
地方出張の楽しみは色々とありますが、私はサウナがあるかどうかを必ず検索します。そりゃあ、ドーミーインに泊まっていればサウナもあるし、その必要はありませんけど。
大乗寺から山側に少し車を走らせたところに、日帰り入浴できるサウナ温泉施設があります。かすみ矢田川温泉。
湯船にゆったり10分弱浸かり、体を拭いてサウナに8分、水風呂1分、外気浴5分。これでととのうはず。お試しください。私こと、サウナ・スパ健康アドバイザーからのアドバイスでした。
さて、準備はよろしいですか?
応挙の真筆が再び元の位置で見られる日は、次はいつになるかわかりません。何せ今回が13年ぶりなのです。
展覧会に出品される機会は今後もあると思いますが、残念ながらガラスケースの向こう側です。今しか見られない大乗寺を、空間丸ごと感じていただければと思います。
客殿の順路には、入ってすぐの場所と、終わりの方の2箇所に「駕籠」が吊ってあります。見上げるとあるんです。なんで!?と思います。
また、様々な場所に「亀」が描かれていますが、「亀」という漢字をあしらったデザインも探すとそこかしこにあります。それを探すのも楽しいですよ。
是非、大乗寺で応挙が作り出そうとした空間を味わってみてください。
最後に、オフィシャルな香美町香住観光協会のHPです。
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