ぬくもり|平澤まりこさんの『tree of life』『満ちた夜』から浮かんだ詩
外の世界を見に行ってきたわ。
すごかったのよ。
誰よりも早く、または長く駆けられる強くしなやかな脚。
遠くへと旅してゆけるたくましい尾ひれに、見るたびにハッとさせられる虹色のウロコ。
大勢を魅了するなめらかな歌声。
歩むうちに自然と仲間を見つけて流れをつくってゆけること。
いいもの、おいしいものを見つけられる嗅覚。
素晴らしい景色に近づける想いの強さ。
たくさんのものを見てきたわ。
そんなうつくしさの持ち主って、ほんとうに、ほんとうにいるのね。
それで、わたしも真似して同じようにやってみたこともあるのよ。
そうしたらね、知らなかったいろんな気持ちがわたしの中にあるってわかって、ビックリしたのよ。
はぁ。
たくさん見てきたけど、きっとこれでぜんぶではないわね。まだまだ見つくせないどころか、どんどん変わってゆくみたい。
でも、つぎからつぎへと外を味わって、わたしのことが前よりもわかって、少し安心したから、いちど帰ろうっておもうようになったの。
大通りから一歩、また一歩と退いてるあいだは、ほんとにこれでいいのかわからなくなることもあったけど、そこでやっぱり通りに戻ろうって気には不思議とならなかったのよね。
それらしき目印とは、ちょっとちがうほうを選ぶようにしてみたら、こうしてあなたの背中に辿り着いた。さいしょにそうとわかっていたら、不安とかさみしさとかは出てこれなかったかもしれないわね。あてどもなかったけど、今となっては、「おや? ずっと探していたのはこの背中だったのかもしれない」、っておもえてきてならないわ。
何でもない一日の終わりに、目の前にあらわれるぬくもりがあったのねって。
また、あたらしいわたしに会いに、つぎ羽ばたくときまで、あなたの背中で休ませてちょうだいね。
外を飛び回っているときも、あなたの背中はずっとそこにあるんだってことを、今度は忘れずにいるわ。
星の一葉 ⁂ ほしのひとは