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小説同人誌のできるまで

この記事は、フォロワーが「小説本……出そうかな」と言うので「出して!!!!!!!!」と言うために拵えたものです。出してくれ。
大まかな流れや必要な準備など書き連ねるので、小説同人誌を出してみたい人の参考になりますと幸いです。
難しいことはない!適当でも本は出せるんだ!!言いたいことはそれだけだ。

参ります


1 イベントに申し込む

まず目標(ゴール)を決めます。
締め切りがないと人は書かない(少なくとも私は)。まずは退路を断ち、ケツに火をつけるのだ。
今回は同人誌のつくり方に焦点を当てるため、詳細は省略します。

2 本の表紙を検討する

個人的に、小説本を出すぞ!になった時、何よりも最初に考えるのはこれです。本文は一旦置いておいて、本の外見を決める。
何故かと言えば、それでこの後のタスクと締め切りがかなり変わるからです。とにかく締め切りが見えないとね、始まりませんからね。
最初から全部カチカチに決める必要はありません。ただ、ある程度把握して選択肢を絞ったほうが良いです。自分がどんな本を出したいかも見えてきます。
この項目は、「3 装丁と印刷所を検討する」と関連する内容ですので、両方を行ったり来たりしながら検討してください。

さて、小説本の表紙のつくり方については、大きく2つの選択肢があります。
「他人に頼むか」OR「自分で作るか」
です。
まず、ここが大きな分岐になると思います。
たぶん小説本を作る上で最初のネックはここだと思うので、丁寧に書きます。よって長いです。ご容赦。

2-1他人に頼む

他人に依頼し、イラストを描いてもらって表紙にするパターンです。依頼先は知人から有償サービスまで様々です(この後解説します)
いずれにせよ、依頼するにあたり、事前にある程度内容が決まっている必要があります。表紙かいてください!中身何も決まってないです!は流石によろしくないからです。

【依頼するときに必要な情報】

  • 本のタイトル

  • サークル名

  • どのイベントに出す予定の本か

  • 表紙の締切(提出してほしい日程)

  • 本のサイズ(A5、B5、文庫本等)

  • 本の内容、どんな表紙にしてほしいか

  • 年齢制限の有無(R18表記が必要か)

  • 裏表紙のデザインの必要有無

  • 使用予定の印刷所(印刷所によって表紙のテンプレが異なるので必要)

  • 大まかなページ数(背幅を決めるのに必要、後からでも多分大丈夫だけど目安があると良い)

  • 報酬(金銭、献本、その他)

このあたりは、依頼時に伝えられるようにしたいところです。
よって、ノープランキチキチ原稿の場合、依頼は諦めたほうが無難です。

①知人に頼む

友人、フォロワー等、気心の知れた人に頼むパターン。
頼むぞ!と決めたら、なるべくすぐに上記の【依頼するときに必要な情報】をまとめた依頼文をお送りし、伺いをたてましょう。相手の検討時間や作業時間はなるべく長いほうが良いですからね。後は、個々の関係値とやり取りの問題になるので割愛。

②有償サービスを利用する

表紙のためのイラストが欲しい!でも頼める相手がいない!そういう時は、有償サービスを利用するのも手です。

こういったサイトには、有償で同人誌表紙を引き受けてくれるイラストレーターさんが多数いらっしゃいます。人気の方は直近の予定が埋まっていることも多いので、依頼は早めにしておきましょう。そのイラストレーターさんごとに事前の相談内容が違うと思いますので、しっかり確認しておくこと。
なお、Skebは同人誌表紙には使えません。

③印刷所のフルオーダーサービスを利用する

印刷所のなかには、表紙デザインを引き受けてくれるサービスをしているところがあります。作品イメージやキーアイテム、イメージカラーなどを答えると、一からデザインを作ってくださいます。具体的な指示やリテイクは不可ですので、どんなものになるかちょっと博打です。が、それもまた楽しい。
価格も納期もしっかりかかりますので、ちょっと余裕があって冒険したいときにお勧めです(早割が使えるかの確認も忘れずに!)

Ⅰ わくわくドキドキデザインセット(プリントオン)
https://print-on.jp/doujin/comic/price/wakuwaku_design_price.htm
特殊加工で有名なプリントオンさん。デザインだけではなく、装丁(加工)まで決めてくれます。
こちらは、私も一度利用したことがあります。とっても素敵なデザインで大満足でした。

拙作です。爽やかな雰囲気でお願いしました。画像では分かりませんが、光に合わせて艶加工がされています。

Ⅱ オリジナルデザイン表紙作成サービス(しまや出版)
https://www.shimaya.net/bungei/coverdesign/index.html
猫で有名なしまやさん。
「文芸セットの金額が30,000円以上(表紙デザインサービスを含まず)」という条件があります。作例ページがあるので、参考にどうぞ。

2-2 自分で作る

他人に頼まないなら自分でやるしかねえ!というパターンです。
とはいえ、昨今めちゃめちゃ選択肢が増えておりますので結構何とかなるんだなこれが。
自分で表紙をなんとかする!と決めてしまえば、実際に何とかするのはタイトルや内容が決まってからで大丈夫です。背幅(おおよそのページ数)が見えないと作れないので、実際に作るのは締め切りの一ヶ月前とか……最悪一週間前とか……(経験者)まあ、直前は切羽詰まっていて精神が追い詰められているのでお勧めしません。
それでは具体的な方法を紹介していきます。

①自分で絵を描く

最もシンプル。自分で表紙イラストを描く。時間がかかって大変ですが、やりがいはありそう。

②素材を組み合わせて作る

イラストは描けなくともデザインのイメージはある……という時に取る方法。インターネットの海から使用可能な素材をかき集め、それを組み合わせて表紙にします。
フリー素材サイトを漁ったり、Boothで販売されている素材を購入したりして、最強の表紙を創ろう!もちろん、使用規約はよく読んで遵守しましょう。

拙作です。素材の額縁と素材の瓶イラストとフリーフォントで出来ています。

大まかな流れとしては、

  1. 印刷所の表紙テンプレートをダウンロードする

  2. 必要な素材をかき集める

  3. イラストソフト(クリスタ、メディバン、CANVA etc)で加工する

  4. 印刷所の規定の保存形式にして完成

絵を自分で描かないというだけで①にかなり近いですね。自分で一から作るのは大変ですが、しっくりくると嬉しい。
あと、シンプルでも堂々としていればなんとかなります。新潮文庫のプレミアムカバーってかっこいいじゃないですか。

拙作です。青地マットPP+銀箔文字のみ。

③同人誌表紙メーカー

私たちの味方、同人誌表紙メーカーさん!
ウェブサービスなのですが、無償で全部使える上、素材が豊富。あとは文字を入れるだけ!の状態の表紙デザインがい~~っぱいあって、ウェブ上で書き出しまで完結。イラストソフトを使えない人の味方です。

たとえばこういう感じのデザインが作れます。

拙作です。これは文字まで全部同人誌表紙メーカー製です

ちなみにダウンロード後の編集加工OKですので、文字入れは自分でこのフォントを……とか、ちょっと別の素材組み合わせて……というのも可能です。最高。

④印刷所のセミオーダーサービスを利用する

フルオーダーはすでに紹介しましたが、ここではセミオーダーサービスを展開しているところを紹介します。
セミオーダーサービスというのは、ある程度テンプレートが用意されていて、そこから好きなデザインを選んだら文字入れとかデータ作成ををやってもらえるよという形式です。デザイン費として通常の印刷より価格が上がりますが、フルオーダーよりは抑えられます。
私はまだあまり使ったことがないので、見聞きした情報のみになりますご容赦。

Ⅰ イージーオーダー(ブックネクスト)
タイトルテンプレートと背景テンプレートを組み合わせて選び、表紙デザインを作ってもらうことができます。
タイトルロゴを作ってもらえるのはアドですね。作例のページを見る限り、色合いなど結構融通がききそうです。

ちなみに、ブックネクストさんは、大手印刷会社「栄光」さんの子会社的なやつです。

Ⅱ セミオーダープレミアム(しまや出版)
表紙デザインとタイトルフォントを選ぶと文字入れしてくれる形式です。780種以上あるらしいです、すごい。

Ⅲ 私の小説セット(Pico)
こちらも、表紙デザインとタイトルフォントを選ぶと文字入れしてくれる形式です。通常のデザインの他に、特殊装丁用のテンプレートも用意されています。

3 装丁と印刷所を検討する

表紙を検討しながら、同時並行で装丁を考えます。
PP?特殊紙?箔押し?特殊加工?
加工優先?価格優先?
それによって、印刷所がかわり、締め切りが変わります。
私の考えですが、「とにかく締め切りの目安を早めに知りたい!」ので、いくつか目星を付けて行きます。プランA(早割り特殊加工有)、プランB(通常入稿特殊加工無)……などと何パターンかあると良い。逆に、「この特殊紙を絶対に使いたい!」となったらそれに焦点を合わせます。
なお、基本的に「オンデマンド」印刷を探してください。オフセット印刷は大部数用なので向きません。

印刷所は無限にあるので上げたらきりがないのですが、いくつか紹介まで。

Ⅰ 株式会社ホープツーワン
自分が普段お世話になっている印刷所さんです。安いし早い。どうなってんだ。季節のキャンペーン合わせだとめっちゃ割引あるし可愛い遊び紙もある。
「ポケットセット」「ポケットセット+」「フライトセット」あたりが使えます。

Ⅱ STARBOOKS
こちらも小説書きに人気のある印刷所さん。毎割という割引サービスがあります。
「オンデマンドカスタム」「オンデマンドノベルス」あたりが使えます。

Ⅲ プリントオン
すでに紹介済みですが、特殊装丁にこだわりたいならここは外せませんよね。
レース加工、特殊な箔加工、フランス製本などなど……なんでもやれます。

Ⅳ ちょ古っ都製本工房
装丁にこだわらずとにかく安く仕上げたいならおすすめの印刷所さん。もちろん基本的なPP加工などは対応しています。

他にも!!素敵な印刷所さんってたくさんある!!
小説向け、少部数向けの印刷所まとめ記事もインターネットの海にたくさんあるので、是非調べてみてください。

 ざっくりプランが見えてきた……はず

ここまでをまとめると、
どんな表紙で
どの印刷所で
どんな装丁で
どれくらいの締め切りで
をふんわりでいいので決めること!それによって、いつまでに何をしなくちゃいけないかが見えてくるはずです。あと、本を作る予算も。
具体的にゴールとToDoが見えてきたら、内容に取り掛かりましょう。

4 本文を書く

書きます。方法は何でもいいです。
Word、Googleドキュメント……などなど、知人にはTwitterの自分宛DMで書いてる人もいますし……
私はNolaというサービスを結構気に入って使っています。いろんな端末から入れる、自動字下げが便利、猫が可愛いなどが推しポイントです。

5 奥付を書く

忘れないうちに書きます。最後のページに載るやつです。必ず書かなきゃいけないものですので、間違いのないようしっかり書きましょう。
私は脱稿一週間前には書くようにしています。脱稿直前って余裕がなさすぎるから……。

【奥付に大体書くこと】

  • タイトル

  • 発行日(イベントの日付)

  • サークル名、著者名

  • 連絡先(メールアドレスがベスト)

  • 印刷所

  • 謝辞(表紙かいてもらった人など)

  • (版・刷……再版であれば)

  • (感想フォーム……載せたい場合は。QRコードとかもいいよね)

6 書いたものを文字組して書き出す

本文を文字組してデータファイルとして書き出します。
印刷所の指定のフォーマットは必ず事前に確認してください。だいたいPDFで何とかなると思いますが、何事にも例外はあるので……。
今回はPDFの前提で話を進めます。

書き上げたデータをえいやと流し込み、自分好みの文字組に編集し、PDFに変換してください。最終的に紙面そのままの体裁のPDFができていればOK!です。
ポイントですが、PDFのファイル名は実際に本になった時のページ数にするとわかりやすいです(大体の印刷所さんで推奨されているはず、各印刷所さんの入稿方法のページを確認してください)
また、あとがきや中表紙だけ横書きにするなど書式を変えたいときは、そのページのPDFを分けて作成します。要するに、「3-4(中表紙タイトル)」「5-55(小説)」「56(あとがき)」みたいにPDFが分かれて出来上がっている感じです。
なお、本を作るときは表紙が1ページ目、表紙の裏側が2ページ目なので、本体は3ページ目スタートになります。

縦書きの日本語文書をPDFに変換する方法ですが、これは作業環境によって異なると思います。

Ⅰ Wordや一太郎などの文書作成ソフトで作ってPDFに書き出す
PCを持っているならこれがなんだかんだ一番やりやすいでしょう。ページ設定をいじり、エクスポートでPDFに変換すればOK。フリーフォントを使い放題なのもメリットです。ただし、書き出しの際にフォントが埋め込めているか、字崩れが起きていないかを要確認です。

Ⅱ アプリでPDFを作成する
スマホ派やiPadユーザーはこちらが多そうです。勿論アプリは他にも色々ありますが、実際に使っている人が多そうなものをご紹介します。PCを持っていなくともこれだけのことができるとは、好い時代です。

appleのみ

androidにも対応


Ⅲ ウェブサービスでPDFを作成する(シメケンプリント)
シメケンプリントさんは同人誌の印刷所さんですが、PDFメーカーを提供してくださっています。出来上がったPDFはシメケンプリントさんはもちろん、他の印刷所さんでも使用OKです。いいひと。


具体的な本のサイズや文字組は、正直、好みです。私は文庫本が大好きなので常にA6で作っていますが、大きい本も同人誌ぽくて良い。
フォントや行間などは、基本的に、自分が読みやすいものを作れば問題ないでしょう。環境的に可能なら、試しに印刷してどんなふうに見えるのかを試すと安心です。

ちなみに、私の紙面の設定はこうです。なるべく市販の文庫本に近づけようとこだわっています。参考までにどうぞ。

◆サイズ
A6 縦書き
◆フォント
源暎こぶり明朝 v6 サイズ:9pt
◆余白
上:15mm 下:13mm 内:14mm 外:14mm とじしろ:3mm
◆行間
行間:固定 間隔:14pt
◆ページ設定
文字数:41 字送り:8.5pt
行数:16 行送り:13.8pt
◆ヘッダーとフッター
ページ番号:ページの上部 奇数/偶数ページ別指定
奇数ページ:番号のみ1 偶数ページ:番号のみ3 フォント:9pt 
上からのヘッダー位置:10mm

使用ソフト:Word

まあ読めれば何でもいいんですけどね。游明朝で充分だし。とはいえ、文字組は小説の顔ですから、作り手が納得できる形を錬成できると嬉しいです。

7 入稿!

ここまできて、表紙データと本文データが揃っていれば入稿です!
印刷所さんの案内に従い、本の情報を送り、料金を払い、データを送ります。あとは、本が出来上がっている!はず!です!

おつかれさまです!!!!

ということで、ざっくり小説同人誌のつくり方でした。
よく聞かれる、表紙周りや印刷所周り、データ周りを大目に書いたつもりです。勢いで書いてるので抜け漏れあったら随時追記しておきます。

素敵な本が一冊でも多く生まれることをお祈りしております。

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