【ライブレポート】2020/8/13 "KEMURI" at SHINJUKU LOFT~SHUKUSAI~
すでに多くのバンドが配信ライブを実施するなか、ついにSKA PUNK界の雄、KEMURIがその戦場に降り立ちました。しかも会場は新宿LOFT。こんな激アツな状況を目撃しないわけにはいかん、ということで3000円のチケット代を支払い、生視聴…いや生ライブ参戦いたしました。
配信主体はライブナタリー、撮影部隊は東京想舎という座組でのライブ。フロアの熱気込みでこそのKEMURIという感じもするので、どんな配信になるのか、ドキドキします。
※ちなみにですが、8/16 23:59までアーカイブでも楽しめますので見逃した方はぜひチェックしてみてください。
ファンにはおなじみ、NOFXの「All Outta Angst」が流れてメンバーが登場。通常のライブにおけるステージ部分にはドラムの庄至さん、そしてベースの津田さん、ギターの田中"T"幸彦さんの3人がスタンバイ。そしてフロア部分にコバケンさんをはじめとするホーン隊とふみおさんが陣取ります。
観客がいない、ということでステージとフロアを使った贅沢なフォーメーション。
左手にマイクコードをぐるぐると巻き付けて、ふみおさんは叫びます。
「みなさんこんばんは、KEMURIです!!」
いつもなら、ここでフロアから大歓声が起こるところ。でも今日は、誰の声も聞こえません。静寂を確かめるように少し間をおいて「ライブ生配信、始めたいと思います!」と続けるふみおさん。
さらに
「世界中、いろんな場所に住む」
「いろんなものと闘ってるすべての人たちに」
「精一杯声が、音が届くように」
「KEMURIの音楽鳴らしたいと思います!」
と開幕を告げるメッセージを放つとホーン隊が「Broken wine glass, lonely night」のオープニングをパフォーマンス。
解散ライブ時の1曲目を飾ったこの曲で、KEMURIの新しい扉を開けました。撮影部隊が津田さんやTさん、コバケンさんらをアップで映し出してくれるので通常ライブでは最前エリアでしか味わえないような貴重な画を楽しめます。固定カメラで庄至さんのドラミングも間近で見られることの嬉しさよ。
メインとなるカメラには撮影隊もガンガン映り込んでいるんですけど、それがまた臨場感を醸し出していていいな、と思えたんですよね。小綺麗な映像じゃなくて、メンバーやスタッフが動き回る様すべてを映すのがKEMURIらしいというか。
「なんかいろいろある」
「びっくりすることばっかり」
「思い通りにいかないことがあっても」
「不本意なことばかりでも」
「泣いてる暇はないと思います」
「どんなことがあっても挑戦し続けたい」
ふみおさんのMCを挟んで、「Prayer」へ。
イントロでスティック持った右手をぶんまわす庄至さんにこちらのテンションもブチ上がる。この曲を画面見ながらフンフン♪と聴いていられるはずもなく、ヘッドホンからスピーカーに切り替え、部屋で踊りまくる。飛び散る汗もなく、冷房たっぷりな部屋で快適なライブ鑑賞できるのが配信の良いところかもしれませんが、KEMURIに関しては違いました。体が黙っちゃいない。今全国各地でこのライブ観ている人たちが同じようにスカダンしてるんじゃないかと思いながら。
続く「deepest river」でも高速スカダンス炸裂で早くも汗がじわり。膝が心配になるくらい飛び跳ねました。マンションじゃなくて良かった。
3曲目は「Minimum Wage」。増井さんが戻ってきてから初ライブになるのかな。そのあたりも考慮して、なのか初期曲多めのセットリスト。比較的若いファンも入ってきて、再結成後の曲たちがライブでも存在感を発揮しまくっている近年のKEMURIですが、やはり初期の曲もめちゃくちゃカッコいい。
「一緒に歌って、画面の前で」とふみおさんが促してからの…「Ohichyo」!休憩できない!きつい!しんどい!でも頭も体も休もうとしない!大声、とはではいかずとも、ともに歌いながら踊り、飛び跳ね、両手を高く突き上げる。客観的に観たら、部屋でひとり何やってんだって感じですが、そりゃもう楽しいの一言に尽きます。
20分ほど前までは、配信だしな…とおとなしく観るつもりでいたのに。KEMURIが放つ音と熱のせいであっという間に自分の部屋が新宿LOFTになってしまいました。
マスクしないで歌うのは半年以上ぶりだという、コロナの影響を改めて感じさせる発言もありました。そんな逆境ともいえる状況でも、アメリカにいる家族や友人、あるいは北海道や鹿児島など、いろんな場所にいる人たちに同じタイミングでライブを観てもらえる。そう前向きに捉えるKEMURIがいます。
いつもいるファンが目の前にいないのは、なんとなく「ん?」と感じつつも、画面の前でKEMURIを観てくれる人たちのことを思いながらライブができるのはこんなに幸せなことなのかと、配信ライブの良さ、ありがたさを語るふみおさんでした。
早くもライブは中盤戦。今回、20年ぶりに増井さんがトロンボーンのサポートメンバーとして戻ってきたということで、せっかくだからホーン部分をリアレンジしたという説明と「この画面を見ているすべてに人にバンドから愛をこめて」と言葉を添えて「I Love You」を披露します。
イントロからもう原曲と異なるアレンジに思わず反応してしまう。大好きな曲なのでまた新鮮な気持ちで楽しめるのが嬉しい。コバケンさんのソロ、そしてミッチー&増井さんのコンビネーションにも興奮する。
続いてのパフォーマンスは、こんな状況になる前から作っていたけれど、いつのまにかこの状況にピッタリな曲になっていたという新曲「SOLIDARITY」。KEMURI25周年の前に改めてKEMURIとしてみんなで力を合わせて進もう、お互いがお互いを思う気持ちを強くしよう、と思って作った曲なんだそう。演奏直前に「結構踊れると思います」と自信たっぷりな表情でつぶやいたふみおさん。
その言葉通り、これはまた新たなライブ鉄板曲誕生かと思わせる楽しい1曲でした。今回初めて演奏を聴いたのに何の違和感もなく体が動いて踊りまくっていましたから。冒頭から手拍子を促すふみおさんにも煽られて最高のテンションで楽しみました。画面には歌詞(日本語訳)も表示されていて、アーカイブでは歌詞をしっかりチェック。
“沈黙に俺たちの叫びを封鎖させちゃいけないんだ!”
“拳を突き上げろ”
“一緒に乗り越えよう!”
コロナや香港の問題も含めて世界中の様々な問題に向けて歌われているような曲で、ホントにKEMURIらしい歌だなと感じました。
KEMURIでいちばん新しい曲をやったので、KEMURIのいちばん古い曲を…という流れで「New Generation」、さらに「Along The Longest Way...」とベテラン曲たちが続く。サックス片手にスカダンするコバケンさんの姿を観て、ああKEMURIのライブだ!とちょっと感激してしまいました。メンバーもみんな楽しそうで、それが何より嬉しいしホッとする。
Tさんによるギタープレイもたっぷり堪能できるし、床からのアングルで捉えるふみおジャンプがまた絵になる。
「Heart Beat」を演奏する際には、曲の由来に関するコメントも。肌の色は違っていても、流れる血の色や鼓動は同じなんだから肌の色、思想の違いで争ったり差別したりすることはやめよう、という歌。差別反対、差別をなくしたいという気持ちで歌っていたそうです。これは過去のライブでも「Heart Beat」を演奏する前にふみおさんが何度となく語っていました。「20年以上経ってもまったくなくならない、差別、争いは」とも話していましたが、だからこそ粘り強く言い続けて、歌い続けているんだと思います。
差別はなくならないけれど、自分にとって嫌なものと共に生きるという気持ちは大切で、この曲を作った時と少し気持ちは違ってきているものの、根っこの部分は変わらないんだとも話してくれました。
ライブはと言うと、そういった「嫌なもの」への気持ちをぶつけるかのような激しいステージングで、ホーン隊による一斉ジャンプも壮観。全員がぐちゃぐちゃっとなるようなステージを観ていて、ああ!これぞKEMURIのライブ!とまたまた大興奮。先述した床固定カメラがばっちりふみおジャンプの瞬間をキャッチしていて、生配信の中でスイッチャーさんGJ!と心の中で拍手を送りました。
Tさんのスチャスチャ刻むギターが聴こえてきたら「Ato-Ichinen」の、そしてライブ終盤の合図。
「ぜひ画面の前で大きな声で歌っていただきたい!」
「たとえ隣人から苦情がこようと」
「あ、どもすいません!」
「笑顔で謝って」
「そのまま大きな声で歌っていただきたい」
「ホテルで観てる人も」
「自宅で観てる人も」
「大きな声で歌える?」
「歌える?」
「歌える?」
ふみおさんによる徹底的な煽りに、おそらく全国のKEMURIファンがスタンバイしたことでしょう。カメラに耳を近づけてみんなの歌声を確かめようとする姿は、ステージと部屋の画面による隔たりなんか一瞬で消しちゃいます。
今でっかいサークルできてるよなあ、とかみんな一斉にスカダンしてるよね…なんて、ここにはいない観客の姿も想像しながら、ひとり踊る部屋。KEMURIのライブに飢えていたみんなもきっと同じ気持ちだろうなと思いながらただただ楽しくスカダン。
曲最後に飛び出す“あと1年!”でウインクしながら人差し指を立てるふみおさん、相変わらずチャーミングです。
この後に投入されたKEMURIの代表曲「PMA(Positive Mental Attitude)」と合わせて、暗い部屋でひとり、モニターつけたまま…な状況とは真逆の、汗をかきながら気持ち晴れやかに過ごしたスカダンタイム。最高でした。
最後の曲を演奏する前に、会場を提供してくれた新宿LOFT、そして音響、照明、楽器、その他スタッフ、スチールカメラマンやビデオカメラマン含めた東京想舎、さらにはライブナタリーへ感謝の言葉を伝えるふみおさん。
配信ライブについては、メンバー皆最初は乗り気じゃなかったそうです。やったことがないし、お客さんがいない前でライブってどうなんだ、と。でも不平不満を言い出したらきりがない。グダグダ言ってないでKEMURIとしてやれることをやろうと気持ちを切り替えての決行。結果「やって良かった」とふみおさんは言ってくれました。
そして最後に、ファンに向けてのメッセージも。
「画面の前で観てくれている皆さん」
「みんながいるからライブ会場で」
「スペシャルな空間で」
「へとへとになっても頑張れるんだなって痛感しました」
「比べるもんじゃないと思うけど」
「音楽って作って演奏する人と会場と」
「お客さんと、みんなで音楽なんだと」
「結成25年たって、やっとわかりました」
「このタイミングでわかって良かったです」
「画面の前のみなさんにバンド代表してお礼言います」
「ありがとうございました」
「一日も早くみんなで一緒に盛り上がれる日がくればいいと」
「願い続けます」
喋るのは好きじゃない、と言いながらもいつだって飾らない言葉でその思いを届けてくれるKEMURIが、ふみおさんが大好きです。
「今はもう会うことができないけど」
「ずっと心の中に住んでいる」
「大切な人たちに」
「絶対にあきらめないって思いを伝えるつもりで」
「最後の一曲やって終わりたいと思います」
ラストを飾ったのは名曲「白いばら」。ホーンによる美しいイントロから始まり、熱量たっぷりに最後まで一気呵成に駆け抜けるアンセムを心と体すべてで受け止めて、【"KEMURI" at SHINJUKU LOFT~SHUKUSAI~】は終幕を迎えました。
ライブ終了後には全メンバーが、それぞれの個性を滲ませるようなメッセージを。
津田さん…
「いつか密々しいライブを」
「それまで待っててください」
庄至さん…は絶叫。
Tさん…
「暑い日が続きますが元気に過ごしてますか?」
「近いうちにみんなに会える日を楽しみに」
コバケンさん
「画面の前のみなさんも購入、視聴ありがとうございます」
「自分に音楽があって、PMAと言う言葉があって助かってます」
ミッチーさん
「言いたいことはほかの人が言ってくれたので」
「またこういう機会があればいいなと」
増井さん
「20年間欠席したまんまですいませんでした」
「LOFTなのに広い」
「ホールじゃないのにこの広さ」
「皆自由だぜ!」
「寝る前に歯を磨くように!」
サポートではあるけれど、新たに増井さんという存在が加わってますます面白くなってきたKEMURI。25周年というキャリアを持ちながら、いつだってエネルギッシュに躍動する彼らの活躍をこれからも楽しみにしたいと思います。
セットリスト
01.Broken wine glass, lonely night
02.Prayer
03.deepest river
04.Minimum Wage
05.Ohichyo
06.I Love You
07.SOLIDARITY
08.New Generation
09.Along The Longest Way...
10.Heart Beat
11.Ato-Ichinen
12.PMA(Positive Mental Attitude)
13.白いばら
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