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小説『千花と黒い影』 第3話
オリジナルキャラクターストーリー小説『千花と黒い影』の無料公開、4回目です。今回は第3話を公開します。
その前に、まだ前回の話を読んでいないという方のためにリンクと簡単な前回のまとめ(ネタバレあり)を。
前回の話はもう知っているから本編を読みたいという方はお手数ですが、この下の目次から飛ばしてください。しっかりと読んでいただいているのに申し訳ないです。
前回のストーリー
前回の内容を見ずに自身で今までのストーリーを読みたいという方のために、先にリンクを貼ります。
少し行を空けますが、読まないように頑張ってください。
※リンクは『千花と黒い影』のマガジンに飛ぶため、読みたいところを探してお読みください。
《前回 (第2話) の内容》
灰咲千花は友だちと分かれ、黒猫を追いかける。黒猫は細い路地裏を軽々と進んでいく。景色を見ていると黒猫の姿が見えなくなり、追いついた時に黒猫は地面へ飛びついていた。黒猫の手元を黒い影がすり抜け、建物の隙間へと消えていった。黒猫も姿を消し、ふと我に返る千花。建物の隙間から物音が聞こえ、驚かせてしまったお詫びにひとかけらのパンを置いて家へと帰る。
前回 (第2話) の内容を簡単にまとめるとこんな感じです。よくわからないという方は上のリンクで本編をお読みください。
では、続きの第3話本編です。
『千花と黒い影』 第3話 星宮幽鬼
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第3話「黒影さんの正体」
「この前のパンは食べてくれたのかな」
後日、再び路地裏を訪れる。友だちは部活で今日は一人だったため、寄り道することができた。
もちろん、この前のパンの欠片はない。黒影さんが食べたのか、他の動物が食べたのか。
しゃがんで隙間を覗いてみるが、暗くて奥は見えない。
「今日も持ってきたよ」
袋からパンを取り出し、ひとかけらに千切って置く。
建物に寄りかかり、残りのパンをそっと齧る。
ーー私がいるから、怖がって出てこないのかな。でも、パンを食べてくれるのか確認したいしなぁ。
何分待っても出てくる気配はなかった。時々、隙間から鳴き声は聞こえてくるが。
日が暮れてきて、涼しい風が通り抜ける。
「……帰ろうかな」
結局姿を見せてくれることはなかった。
立ち上がって伸びをした時、隙間の方から鳴き声がはっきりと聞こえた。
振り返って隙間を見ると、手のひらに乗るくらいの大きさのネズミがキューキューと鳴き、尻尾を振って見上げている。
「パン、どうぞ」
少し離れたところにしゃがんでネズミを見守る。
ネズミは私とパンを交互に見ていたが、食欲の方が勝ったのかパンに近づいていく。今度はパンを凝視し、匂いを必死に嗅いでいる。やがて、安全なことを確認できたのか、ひとかけらと言っても体と同じくらいの大きさのパンを一口齧った。そして、必死にパンを食べ始める。
あまり人から好かれていないようなネズミだが、食べている姿はとても愛らしく思えた。
「もっと食べたかったかな。さっき、私が残りを食べちゃったからなぁ」
ネズミは食べ終えると、語尾を上げて鳴き、見上げてくる。
「また明日、持ってくるね」
今度ネズミは語尾を下げて鳴いた。
しゃがんだまま微笑みかけてそっと手を振り、路地裏を去る。
『千花と黒い影』第3話でした。お楽しみいただけましたか。
第2話の最後に登場した黒い影→黒影さん→ネズミがメインのお話でした。
次回は少しずつネズミとの距離を縮めていきます。
今回はカクヨムとの変更点はルビくらいで全然修正していません。
ルビは常用漢字外のものに振っています。振り忘れ、誤字脱字等があったらすみません。
次回の第4話は来週の前半に公開予定です。
お楽しみに♪
一応、カクヨムのリンクも貼っておきます。
先に続きを読みたい方はどうぞ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
星宮幽鬼でした♪
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