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【介保メモNO.7】介護報酬はプラス改定も厳しい現状は変わらない⁉

来年度の介護報酬はプラス改定

来年度実施される介護報酬改定は、プラス改定になることが決定しました。

私は、今回の介護報酬改定について社会保障審議会の記録を確認しながら見守ってきました。

思えば、社会保障費の増大や介護給付費の増加に伴い、財務省が施設負担やご利用者負担を強いてくる内容ばかりが目につき、介護職員の処遇やサービスの質の向上などは二の次にされている印象を受けていました。

今回、プラス改定という結果になったのは、全国老人福祉施設協議会のロビー活動や厚生労働省が財務省となんとか折り合いをつけてくれた結果であると感じています。

私個人としては、何ひとつ力になれず、状況を見守ることしかできませんでした。報酬改定にあたり、様々な活動してくださった皆様に感謝いたします。

介護報酬プラス改定で介護の未来は⁉

今回、プラス改定になったものの「+1.59%」と低水準に留まり、「なんとかプラスだったか…」という印象しかありません。

このプラス改定の中身を見ていくと、介護業界の未来が不透明であることが見えてきます。一方、先送りとなった評価できる内容もありました。

ポイントは以下の4つです。

  1. プラス改定のほとんどが、処遇改善加算である

  2. プラス改定の内訳次第で、在宅サービスが危機に陥る

  3. ご利用者負担増は先送りへ

  4. 今後の財源確保は利用者へ向かう可能性

ポイント①:プラス改定のほとんどが、処遇改善加算である

実は、今回のプラス改定のうち「0.98%」は介護職員の処遇改善上乗せに充てられます。

処遇改善の仕組から考えると、この報酬は介護職員へ分配しなくてはならず、かつ他職種との平等性を考慮する事業所であれば、持ち出しで他職種へも分配する可能性が高いということです。

つまり、事業所経営に充てられるプラス改定の報酬は「0.61%」に留まることになります。

今回は、診療報酬改定と重なる報酬改定で、見た目上は初めて診療報酬の改定(+0.88%)を上回っていますが、実際の取り分から見れば、前回(2022年度)の「+1.13%」から見れば低く抑えられてしまったという結果でした。

ポイント②:プラス改定の内訳次第で、在宅サービスが危機に⁉

介護報酬プラス改定の中身が、実質「0.61%」であるため、今後の経営が厳しいと考える事業所も多いことが予想できます。

長引く新型コロナウイルスの影響と物価高騰の影響を受けて、介護事業所は厳しい経営を強いられています。

このもの足りない「0.61%」が事業所にどのように配分されるかが気になるところです。

「介護事業経営実態調査」の結果を踏まえると、この配分は特養・老健といった入所施設に配分される可能性が高いことがわかります。

入所施設に比べ、在宅系サービスの収支は悪くないことが理由です。

しかし、下記の記事で述べたように訪問介護事業所を中心に在宅系サービスはかなり厳しい経営を強いられています。

また、介護事業経営実態調査の対象は現在サービスを提供している事業所のみです。訪問介護や通所介護などは、経営が厳しくなれば容易に閉鎖されてしまいます。

今回の報酬配分が、入所施設へ偏る結果となれば、地域を支える在宅サービスはより厳しい状況になるでしょう。

ポイント③:ご利用者負担増は先送りへ

今回の報酬改定で、介護サービス利用時の2割負担の対象拡大が実施される可能性がありましたが、結果として見送られることとなりました。

ただし、2027年度の改正で対象拡大となる可能性が高いです。1.5割負担など、なんとかご利用者負担を増やそうと絶賛検討中です。
あわせて、要介護1・2の訪問介護・通所介護の総合事業化、ケアマネジメントの自己負担の導入も引き続き検討されています。

ポイント④:今後の財源確保は利用者へ向かう可能性

今回は財務省と厚生労働省でうまく妥協した結果だったと思います。

しかし、介護給付費の抑制や利用者負担額の増大は引き続き検討されていくでしょう。

介護保険制度を継続していくためには、介護事業者が事業継続でき、かつ制度が維持できなければなりません。

今後の介護報酬改定は、間違いなく利用者負担増と介護報酬のプラス改定を合わせて考えていく流れになっていくと思われます。

まとめ

2024年度の介護報酬改定は、プラス1.59%と前回より低水準となりました。処遇改善に充てられる0.98%を除くと、実質0.61%の改定にとどまりました。

この結果を受け、介護業界の未来は不透明です。

まず、在宅サービスが危機に陥る可能性があります。

今回のプラス改定は、実質0.61%のうち、多くの割合が特養や老健といった入所施設に配分される可能性があります。

一方、訪問介護や通所介護などの在宅サービスは、経営が厳しい事業所も多いです。

もし、今回の報酬配分が入所施設へ偏れば、地域を支える在宅サービスはより厳しい状況になるでしょう。

また、ご利用者負担増は先送りとなりましたが、2027年度の改正で対象拡大となる可能性が高いです。

さらに、要介護1・2の訪問介護・通所介護の総合事業化、ケアマネジメントの自己負担の導入も検討されています。

これらの動きは、今後の介護財源確保のために、ご利用者負担を増やす方向に進む可能性があります。

今回のプラス改定は、財務省と厚生労働省の妥協の結果でした。しかし、介護給付費の抑制やご利用者負担額の増大は、引き続き検討されていくでしょう。

介護保険制度を継続していくためには、介護事業者が事業継続でき、かつ制度が維持できなければなりません。

今後の介護報酬改定は、間違いなく、ご利用者負担増とプラス改定を合わせて考えていく流れになっていくと思われます。

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