七不思議(終)~中東の女神門
イラク バビロンの空中庭園
世界七不思議、最後に紹介するのは「バビロンの空中庭園」。イラクです。気軽に行ける場所ではないので、ここで仕事していた知人に頼んでポストカードを買ってきてもらいました。それで写真を代用します。
古代イラクはティグリス川とユーフラテス川が流れる肥沃な大地。メソポタミア文明の中心地でした。そのイラク北部をアッシリア、南部をバビロニアといい、バビロニアの北部をアッカド、南部をシュメールといいました。
メソポタミア文明は世界で最も古く、紀元前3100年頃にシュメール人が楔型文字を発明。農業を主要産業として、ウル、ウルク(イラク国名の語源)、ラガシュなどといった都市国家乱立の時代、アッカド人サルゴン王による統一。ウルを中心としたシュメール王朝の復活。古バビロニア(ハンムラビ法典などの時代)、異民族の侵入(アラム人、エラム人、ミタンニ、カッシートなど)、アッシリア帝国、新バビロニア帝国(ユダヤ人のバビロン捕囚など)と2500年の歴史を積み重ねます。
その長い歴史のうちの紀元前600年頃、新バビロニア帝国のネブカドネザル2世は隣国メディア王国から妻を迎えますが、彼女は元気を失っていました。王はそれを憐れみ、宮殿内に緑豊かな庭園を建設しました。高層階の建物に木々や花が彩り、これが「空中庭園」と呼ばれましたとさ。ただし、空中庭園を裏付ける考古学的な証拠は今のところ見つかっていません。現地の発掘調査は全体の2割にも満たないそうです。
空中庭園と並び有名なのが「バベルの塔」。メソポタミア文明の巨大神殿「ジッグラト」がモデルではないかといわれています。イラクに行けない代わりにイランに残るジッグラトを見に行きました。個人的にはエジプトのピラミッド以上に感動しました。
メソポタミア文明といえば、世界最古の物語「ギルガメシュ叙事詩」がよく知られています。紀元前2600年頃といわれるウルク王ギルガメシュを主人公とした物語。エンキドゥとの死闘と友情。森の神フンババ(フワワ=可愛い名前だね)との戦い。ウトナピシュティムは、神による大洪水を生き残り不老不死を得た仙人(旧約聖書ノアの箱舟の原作)。そこで聞く「永遠の命を求める」ことへの答えとは・・・
イラクやメソポタミア文明への興味は尽きず、話が長くなるので別の機会に改めます。都市遺跡バビロンは2019年に世界遺産登録されました。日本は大阪の古墳群の話題一色でしたが、私はこちらのニュースも嬉しかったです。遅すぎるくらいだけどさ。イラクやシリアに入国できないということは、例えば日本史が好きなのに京都や奈良に行けないくらい悲しいことです。他にも歴史深いイエメン、リビア・・・政情不安な国々ですが、いつか旅行できる日が来ることを夢見ています。
尚、メソポタミア各地の遺跡の発掘品はイラクだけでなく、ドイツ・ベルリンのペルガモン博物館、イギリス・ロンドンの大英博物館、フランス・パリのルーブル美術館などでも豊富にみることができます。エジプトや中世ルネッサンス時代の絵画彫刻などに目が行きがちですが、メソポタミアにも目を向けてほしいと思います。
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◆私の歩き方:イラクへは2022年現在、行けません。お隣イランのジックラトがあるチョガーザンビール遺跡へは、テヘランからハマーダーン(古代名:エクバタナ=アカイメネス朝ペルシア帝国の首都のひとつ。アレクサンダー大王も拠点にした)、ケルマーンシャー(近郊にアカイメネス朝ペルシア、ササーン朝ペルシアの各遺跡を見学)、シューシュ(古代名:スース=ペルシア帝国の首都のひとつ)と、数日かけて各地を見ながらバスや乗り合いタクシーで移動した後、シューシュでタクシーを半日チャーターして行きました。その後、シーラーズで近郊のパサルガダエ(ペルシア帝国最初の首都)や、ペルセポリス(ペルシア帝国最大の首都)へと駆け抜けました。イラン一周の旅もまたの機会に。
(訪問日:2018年10月26日)