柿村物語(Minecraft)#2
マイクラの世界には夜になるとゾンビが出てくる世界があるらしい。
そんな怖い世界で生きていくのはいやだ。
だから干し柿はゾンビの出ない平和な世界を選んで生まれてきた。
夜は怖いものではない。
とはいえ、夜目は暗くて作業がはかどらない。
まずは、光源としてたいまつを作る。
木で作ったつるはしで岩を掘ると丸石という材料が手に入る。
丸石を材料に作業台でかまどを作る。
かまどで木材を燃やしすと木炭ができる。
木を切る時に棒が落ちてくるのでそれを拾い、木炭と合わせるとたいまつができる。
たいまつを床や壁に置くと、とたんに辺りが照らされる。
やっぱり、人間は明かりがあるとホッとする。
丸石も手に入ったので、道具を全部石製にグレードアップする。
これで、効率性がほんの少し上がった。
明るくなったし安心して夜も仕事に勤しむ。
手に入れた材料は、チェストと言われる木の箱に収納しておく。
木材や石、土や花、草や種。
いろんなものであっという間にいっぱいになる。
干し柿は昼夜かまわず働く。せっせ、せっせ。
木炭だけでは心もとないから、石炭もほしい。
石の道具を鉄製にグレードアップしたい。
というわけで、近場の山を切り崩し、地下へ掘り進む。
オケラみたいに、どんどん、どんどん掘っていく。
なぜなら、地下深くには、お宝の鉱石が埋まっているから。
石炭は地表にもあるが、地中には鉄鉱石、金鉱石、ラピスラズリ、エメラルド、そしてダイヤモンド!!
これらを手にするには採掘(ブランチマイニング)が手っ取り早い。
ホリホリするのはホント楽しい。
何も考えず無になって掘る。掘る。掘る。
ストレス解消にもってこいなのだ。
しかし、勢い余ると痛い目にあう。
この世界はあちこちに溶岩だまりがあり、渓谷が口を開けている。
いきなり足元に穴があいていて、高いところから落ちたり、マグマが上から流れてきて焼け死ぬ。
序盤は体力がないから、あっけなく死んでしまう。
そのたびに持っていた荷物をすべて失う。
すぐに生まれ変わって戻ってこれるのだが、生まれ落ちるのは最初の地点。
そこからまたやり直し。
収穫物はこまめにチェストに収納しておかなくては。
さて、ブランチマイニングも一息ついて地上に上がると雨。
雨だなぁ。
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マイクラをしているとき、ふと思った。
あれー、マイクラの中でも必死に働いてる!!
昼夜問わず、木を切り、穴を掘り、ものを作る。
気がついたときには唖然としてしまった。
でも、それは「働いている」んじゃなくて、生きていく上で必要なことをしているだけだ。
そして、それは楽しい作業だから、苦じゃないんだ。
そうわかってホッとした。
夢中で働いてきて、燃え尽きそうだというのに、ここでも同じことをしている気がして一瞬ドキッとしたが、それはぜんぜん違う。
仕事はやらされるものだと思っていると、楽しくない。
やりたくないことを強制されたり、自分で「ねばならい」と思い込んだりして我慢してやっているから辛いだけだ。
でも楽しくやっていればゲームと変わらない。
多少、無理しても身体にも心にもさほど負担はかからない。
若い頃はそうやって仕事していた気もする。
やはり年齢を重ねるごとに、楽しいだけでは済まない。苦しんで当然。
と思うようになった。
本当のところはどうなのだろう。
きっと、そんなことはないはずだが、その呪縛を解けずに今に至っている。
そんな自分がこころなしか哀れだ。
この世界で初めて死んだとき、本当にあの世には何にも持っていけないんだなと知った。
この世でも当然、何一つ持っていけない。
そんなことわかりきっているが、実感したのだ。
でも何度でも生まれ変わってやり直せる。
これもまた、なんだか実感した。
また一から始めればいいんだ。いつだって。