父の優しさ
JRのホームで電車を待っていたときのこと。
生後数ヶ月の赤ちゃんをベビーカーに乗せたひとりのお父さんが僕の隣に並んだ。
赤ちゃんは気持ちよさそうに寝ていた。
お父さんは赤ちゃんを起こさないようにベビーカーを前へ後ろへ小さく前後し始めた。
しかしベビーカーの前輪は点字ブロックの上。
ドゥルルル、ドゥルルル。
押しで4回、引きで4回。
一往復あたり計8回の振動が赤ちゃんに伝わる。
急に感じる不快な振動に赤ちゃんはぐずり始めた。
「おー、どうしたどうした」
前後に動かす手を早める父。
泣き叫ぶ赤ちゃん。
理由がわからぬ父。
電車に乗り込む僕。