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思春期と更年期のソーダ水
一生の楽しきころのソーダ水 / 富安風生
ソーダ水方程式を濡らしけり / 小川軽舟
ソーダ水べつに何でもない二人 / ほりもとちか
ソーダ水、プレーンソーダ、レモンソーダ、サイダー、シトロン、ラムネ……いずれも夏の季語である。
なかでも、私が好きなのはソーダ水。季語としても、飲み物としても、贔屓せずにいられない。
某ペットボトルのお茶の俳句コンテストで佳作を貰ったのも、ソーダ水の俳句だった。
大人の都合でここには載せないけれど、ソーダ水と思春期のムスメと更年期の私を詠んだ句である。
大人の事情がない載せられる句なら、今年、俳句甲子園応援句会(通称『税悦杯』)のために詠んだ句がある。
ソーダ水げに頼もしき季語と友 / ほしのあお
ソーダ水という季語が使われるようになったのは大正の頃で、その本意は若い男女、特に少女のイメージらしい。
つまり、アラフィフの私が気軽に使える季語ではないのだが、ソーダ水を詠んだ句には好きなものがたくさんある。(上記はその一部)
我が家にはソーダ水の似合う年頃のムスメがいる……はずなのだが、暑さが嫌いで、人間に興味がなくて、すべての趣味が1人で完結する人なので、まったく青春に向いていない。
しかし、向いていない人にもそれなりにやってくるのが青春である。
私やオットがそうだったように、親の知らないところで何かしらあるだろう。……あるよね?たぶん。詮索しないけど。
しかし、我が子が17歳だなんて、今でもふとした瞬間に信じられない気持ちになる。
彼女を妊娠した時と同じくらいの信じられなさで、びっくりしてしまう。
(私たちのところへ)よく来てくれた、(今日まで)よく生き抜いてくれた、と思う。
悪阻が酷くて1日スプーン1杯のおじやを口にするのもやっとだった私は、最初の1ヶ月で7キロ痩せた。
それでも水分だけはなんとか取らなければいけないということで、オットが箱買いしてくれたのが、悪阻に悩む妊婦さんでも飲みやすいという、味も匂いも色もついていないプレーンなソーダ水だった。
それまでは味のない(甘味のない)炭酸水をわざわざ飲む意欲も、きっかけもなかった私だったが、悪阻と格闘していたときに飲んだ冷たいソーダ水は、大袈裟ではなく、命の水に思えた。
ソーダ水は、それを飲んでいる間は悪阻が少し落ち着く気がする、お守りのような存在になった。
程なくして、切迫と診断されて一度目の入院を経た頃(ムスメはやたらとフライング気味の赤ん坊で、私は切迫早産で2回入院している。)、やっと悪阻が治り、微かに胎動を感じるようになった。
私の体内で何か(ムスメです。)がポコポコと自己主張している様子は、炭酸の泡が弾ける様子に似ていた。
たくさんソーダ水を飲んだから、ムスメの何%かはソーダ水で出来ているのかもしれない。
悪阻の頃に好きだった食べ物は、その時にお腹にいた子の好物になるという都市伝説(?)みたいな話がある。
ムスメはfussy eater(食べ物にうるさい人)なので、飲み物に関しても、その種類や飲み方にかなり細かいのだけれど、プレーンなソーダ水は好きで、思春期の今日も文句を言わず飲んでいる。(夏はプレーンなソーダ水を常備している我が家なのだ。)
それが「一生の楽しきころのソーダ水」だったらいいな。マミィはいつもキミのHappyを願っているよ。