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双津花きょぜつの事情

身支度を整えて職場へと向かう。
毎日同じルーチンを繰り返し、繰り返す。
家に帰ると娘がガラス張りの部屋で遊んでいる様子が見える。
娘の名前は”双津花きょぜつ”。以後きょぜつと呼ぶ。
きょぜつが4歳の頃、心理的な負担が大きい立地を考慮して、引っ越しを決意した。引っ越してから、きょぜつは駄々をこねるようになり、ある要求を求めてくるようになった。
自室をいつでも見れるガラス張りの部屋にする事を強制したのだ。
普通じゃないし、おかしいと思ったけど、私は、ガラス張りの部屋で監視されることを望むきょぜつの選択を受け入れた。
きょぜつは4歳の頃から、謎の”ゾロ目信仰”のようなものを抱くようになった。おもちゃ屋で私にパチンコ台のようなおもちゃをねだったのも、きょぜつの”ゾロ目信仰”の一環だったのだと思う。
数学的なものというよりは、とにかく、”ゾロ目が揃う”事に固執しているのだ。
きょぜつは、ガラス張りの自室の戸を開け、ゾロ目が揃う度に私に報告してくる。私は家でも仕事の処理に明け暮れているので、正直な所、ゾロ目の報告が頻繁に続いては参ってしまう。とても疲れる。
――――――早速きょぜつがガラス張りの部屋から出てきて、口を開けば、こう言った。
「222(にーにーに)」
私が返事を返すまで、こちらを睨みつけてくる。
私はきょぜつの頭をなで、「222(にーにーに)」と返した。

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