なんとなく消費すること
田中康夫の『なんとなく、クリスタル』は、1980年に雑誌「文藝」に、第17回文藝賞受賞作品として発表され、単行本として発売されてからはミリオンセラーとなった。モデルの仕事をしながら大学に通う主人公の由利や彼女を取り巻く若者たちの生活は、夥しい数のファッションブランド、レストラン、ミュージシャンに囲まれている。本文に登場する固有名詞には注釈が付けられておりその数は442にも上るが、これらの効果もあって『なんとなく、クリスタル』からは当時の東京における若者の生活がリアルに感じら