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ペール・アンデション『旅の効用〜人はなぜ移動するのか〜』草思社

2章「ここではない、どこか」という憧れ
3章「明日は分からない」旅へ
4章 列車よ、私を遠くへ連れてってくれ
9章 いったいなぜ、私たちは旅をするのか
11章 遠い過去へと戻る旅立ち
12章 国境を越えて、自由に動き続ける
13章 自由な旅人、無鉄砲な旅人
14章 世界の旅行記を旅する
15章 人は旅で本当に変わるのか
16章 旅と病の間

目次

パッケージデザインから好印象を受けたということを動機として購入するのを「ジャケ買い」と言いますが、この本は「タイトル買い」しました。本のタイトル『旅の効用』も気に入りましたが、章ごとのタイトルも好きです。特に2章、9章、15章なんかは、学生時代から常に自問自答してきた問いでもあり、惹かれました。


印象に残ったこと

自力が頼りの旅のエッセンス

自分が来たいからここに来たのだ。何をするのも自己責任。旅行会社に予約したわけでもない。頼りは自力だけ。現実は予測がつかないし、絶えず変化する。昨日も今日も明日も、すべて当日の成り行き任せ。次に何が起きるか、夢にも思わなかったことが起きるかどうか、そんなことは誰も知らない。

穏やかなスピードが旅を彩る

私たちが目にしている光景と頭の中の考えとは、奇妙につながっている。壮大な思考を生み出すには、時には壮大な眺望、新たな考え、新たな場所が必要なのだ。

哲学者 アラン・ド・ボトン

目的地に至るまでの過程が旅の重要部分だのだ。目標、目的地に集中しすぎると旅に満足できなくなる。あまりスピーディに到着すれば、何も体験できなくなる。逆にかなり長い旅をすれば、観光地巡りばかりということはなくなる。

現代人は効率的かつ快適な旅をしなければならないと思っている

私たちは各地を何度も飛行機で飛び回っているばかりで、もはや旅を尊重していない。出発と到着の出来事は、むしろ負担と化している。旅行中の体験は軽視され、最終目的地への憧れだけが大きくふくらんでいる。

もっとゆっくり旅をしようではないか。道を探ろう。あまりに有名な観光地は避けるようにしよう。どこへ行くにしても、もっと長く滞在しよう。

旅は安ければ安いほど体験が豊富になる

旅先の公共交通機関を使って旅をしたり、家族経営の全寮制学校で泊まったりすれば、無限に多くのことが体験できます。それは他の旅行者みたいにA地点からB地点まで飛行機で移動したりホテルにしか泊まらなかったりする旅に比べ、圧倒的に豊富な体験なのです。

旅は安ければ安いほど体験が豊富になる

ロンリープラネット創業者 トニー・ウィーラー

感想

いったいなぜ、私たちは旅をするのか

この本を読んだ上での、暫定的な答えは、
「世界に対する好奇心を、ジグソーパズルのピースを合わせるようにして満たしたい」から。

・基本的に、一度も訪れたことのないところに行きたい
→ピースを埋めていないから

・国やエリアによって好奇心(=興味・関心)に強弱がある
→好奇心(強)…ピースが小さく、数が多い、沢山行かないと満足できない
→好奇心(弱)…ピースが大きく、少し行けば満足しやすい

・好奇心は数値で満たされない
→経験上、行った国・都市・世界遺産などの数で満足度は測れない
→〜に行ったというスタンプラリー的事実はいらない
→自分のこの眼で見た、この口で食べた、この耳で聞いた、この肌で感じた、この鼻で嗅いだという事実があればいい。他者に公表する必要はない

・いかに旅の“過程”を楽しむか
→素のままの自分(お金・スマホ・インターネット・ガイドブックに頼らない)を外国に晒し、偶然や予想外が舞い込んでくるのをドンと待つ
→トラベル(travel)はトラブル(trouble)と語源が一緒
→残りの日数を気にしないくらい長期間を確保し、ゆっくりと、そして成り行きと直感に任せた旅をすれば“過程”を楽しめるかな

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