2024年 大宮アルディージャ新体制について
2024シーズンの新体制が発表となった。カテゴリーをJ3に下げた中で、今まで以上に予算の兼ね合いも含めて厳しい編成を強いられている。現状ではどのようなメンバーでどのようなスタイルのサッカーに辿り着くか不透明ではあるが、わからないなりの先入観のないうちに今季の展望を考えたい。DFとMFにはメインポジション、併せてFP全員は考えうる兼務ポジションを併記しておく。また、J3のクラブであることを前提のうえで、各ポジションの項目の終わりにポジション毎の編成についてざっくり評価と短評を添える。
GK(4名)
1笠原昂史
昨年の最多出場GK。36歳となるシーズンだが、セービングは決してJ3レベルではない。しかしながら清水の権田を見れば分かる通り、下位カテゴリーはGKだけで勝てる世界ではない。フィード等の弱点を成長で補うのか、別の長所で補うのか。選手寿命を延ばすため今季は重要な1年になる。
21加藤有輝
北九州から復帰。J3での経験を積んでの帰還となった。起用法が定まらない中での3年間の在籍で、成長度合いは未知数。志村とは再びポジション争いをする形となったので、いっそ吉丸絢梓も獲得して欲しかった。大きい上田智輝といった感じで、これまで長所よりも短所が目立ってしまっていたが、今回の復帰はラストチャンスという危機感を持って頑張ってほしい。
40志村滉
正GKを確保したことで、怪我なく過ごせばGKが穴となることはなさそう。セービングも足元も平均点はクリアしているので、極端にポゼッションに偏重しない限りはどんな戦術でも起用されるだろう。短期間でめまぐるしくGKコーチが変わっているが、色々と吸収して欲しい。J3経験者であることも心強いが、今季は開幕からスタメンでお願いしたい。
50若林学歩
恐らく本人も自覚している、勝負の3年目。たとえJ3でも出場機会を得られれば世代別代表に復帰できる可能性は十分。素材としてはそこらへんのキーパーに真似できるものではなく、もう第4GKに甘んじてはいけない。長所だけで戦うのが難しいポジションだけに、GKの本質的なところを育成経験の長い高橋コーチと共に作っていってほしい。
評価…C
メインの笠原と志村はJ2でもまずまずのパフォーマンスだっただけに、昨年以上のプレーができれば十分戦える。衰えのあった南が加藤に変わったことにより単純な戦力としては昨年よりアップか。しかしながら加藤と学歩の突き上げがないと競争のレベルは上がらず、調子の落ちたほうとサブを何度も入れ替えながら1年終わってしまうことは避けたい。
DF(10名)
4市原吏音 CB
ユース昌平高校戦がラストマッチと思っていただけに、思わぬ昇格の報に多くのサポーターが歓喜したはず。守備面で穴がない上、フィードも武器で声もよく出る。1日1日が別れへのカウントダウン。もはやレギュラー当確で、強いてあげるならJ3の環境でタフさと駆け引きを磨きたい。代表のトレーニングパートナーでの経験値を持ち帰り、日々の練習もクバや健勇とバチバチやってほしい。
5浦上仁騎 CB
昨年は本領発揮できず、長野時代以来のJ3でのプレーとなった。J2上位で中心選手として戦っており、こんなものではない。ことごとく負けてしまった1対1や、弱気のポゼッションはイップスな感もあった。徹さんとの相性は良さそうなので、もう少し肩の力を抜いて相方のCBと上手いこと弱点をカバーし合い、実力通りの活躍を見せてほしい。
16植田悠太 SB
レフティ左SB2号。一応SBの頭数は揃ってる中での獲得は本職不在の昨年の反省か、左SBにどうしてもレフティを置きたいか、それとも鈴木の復帰の目処がまだ立たないか。長澤監督らの存在は大宮を選んだ大きな理由だと思うので、志向するサッカーを体現する存在になってほしい。「ゆうた」と誤表記した公式が謝罪していたが、無理もないと思う。
20下口稚葉 SB(CB)
最終ラインはどこでもこなせるユーティリティープレイヤー。過去の選手名鑑を見る限りでは、運動量が強みのようなのでなるべくSBで見たい。今治でそれなりに出ていたので満了になったのは驚きだった。経歴的にもきっかけを掴めば大ブレイクしそうな感はある。長澤サッカーをしる者としてのアドバンテージに期待。
22茂木力也 SB(CB)
2023年のMVPにも挙がった選手が嬉しい残留。SBとして突破力やスピードに長けているわけではないが、運動量で何でも解決するポジショニングや空中戦といった身体能力の高さで欠かせない存在となった。チーム事情でポジションをたらい回されたが、今季は決まったポジションに腰を据えてもらいたいところ。
26濱田水輝 CB
山田直輝ら浦和レッズユース黄金世代の大型CBとしておなじみ。岡山でキャプテンの経験もあるようなので、遠慮なく経験を還元してほしい。高さは申し分ない武器だと思うので、足元やスピードはどんなものか。もう34歳という印象だが、出場機会が少なかったのはCB陣が長所の岡山なので、まだまだJ3ならやれると思われる。
34村上陽介 CB
ユース時代は早生まれということもあり、世代別代表を引っ張った有望株だったが、名門明治大入学後は徐々に便りが聞こえなくなった。コンディションの問題だろうが、J3の大宮に大学経由で戻ってくることは予想できなかった(てっきりJ2だから昇格を蹴ったものと思っていた)。4年次の出場機会の少なさでは実力は未知数だが、ここでキャリアを立て直してほしい。
37関口凱心 SB(DH,CB)
特別指定にて実力は立証済み。大宮では経験の浅い右SBで起用されたが、山梨学院大学では主にボランチ。ハットトリックも達成するなど、強豪とはいえないチームの顔だった。即レギュラーもあり得るが、どこで起用するか便利屋にならないことを願う。過小評価されている選手と踏んでおり、さらなる伸びしろにも期待。
38鈴木俊也 SB
怪我なく1年過ごせば常時メンバー入りしそうだが、怪我人が沼にハマるこのクラブでは非常に望みが薄い。少しだけ見た試合出場時のプレーではショートパスを多用し、活かし活かされながら柔軟にポジショニングするタイプと思われる。実戦経験が少なく運動量は未知数だが、袴田なき今レフティ左SBというだけで戦力化しないと困る存在である。
46貫真郷 SB
J2でもなかなか良さが出せず、勝負の3年目。身体能力的には高い部類に入るはずなので、駆け引きや戦術的な部分で守備が安定すれば、攻撃面での良さも出しやすくなるはず。2022年オフは恐らくレンタル先が見つからなかったが、今季は早々に契約更新。試合に出続ける以外に未来はない。
CB評価…C
市原という軸の存在は大きいが、今現在の勤続疲労や夏の移籍、代表離脱を想定する必要あり。選手層は物足りない。濱田はおそらく計算が立つが、仁騎の復活と未知数な村上がどこまでやるか。SBの選手も何人かCBを兼務するが、4バックのCBとしては心許なく、状況次第では夏に1名追加が必須。
SB評価…D
茂木の1枠は当確。相方は下口が有力だが、タイプ的には守備の強度が強みで茂木と被る印象。攻撃時は連携で攻め上がるタイプが多く、岡庭のようなサイドを駆け上がってクロスを入れるタイプの選手が一見不在だが、植田はそれらしきプレーが得意と公言しているので、若手が誰か一人でも台頭してSBを一転激戦区にしてほしい。
MF(11名)
6石川俊輝 DH
聖人としか言いようがない、昨年の復帰の流れからの残留。本来J1でプレーしなければならない選手だったので、クラブ愛のあまり何とも言えないキャリアになってしまったが、クラブを浮上させたい本人の愛着と意地が上回っていると思われる。今季こそフルシーズン怪我なく戦ってほしい。
7小島幹敏 DH
5年間主力として活躍し度々移籍の噂もあったが、まさかの残留となった。能力的にはJ3でやるような選手ではないが、上手いが故に技術だけが前面に出てしまい、チームとして良い方向に作用していない感がある。水戸時代や復帰直後のほうがもう少し泥臭かった印象が。ここで変われるか、J3でレギュラーを追いやられるか、大事な1年になる。
8高柳郁弥 SH(DH)
相方の室井は移籍、間違いなくオファーはあったろうが残留。恐らく移籍金が発生する立場だけに折り合いがつかなかったか、責任感が勝ったか。中盤ならどこでもできるのは強みだが、今季の編成的にはSHが有力か。キャンプでよりフィジカル面を高め、得点とアシストで10以上は欲しいところ。
13山﨑倫 SH(CF)
純粋なドリブラーというわけではなく、駆け引きやオフザボールにも秀でた選手。FWとして生きていくならよりゴールに直結する動きが、SHなら守備の強度や連動性が求められるが今季からMF登録。こちらも怪我なく1年過ごせればレギュラーが務まる素質はあり、今季こそ13番にふさわしい活躍を。
14泉柊椰 SH
アニメの登場人物のような格好いい名前。育ったJ1神戸で3年次に内定を得た大学No.1ドリブラーで、大卒2年目の彼がJ3を選択したのは出場機会への危機感だろう。左サイドでのドリブルが武器ということで、既にJ1ではゴラッソもお披露目している。スタートから躓いたが、チャンピオンクラブへの復帰のため、ジョーカーとは言わず頭から出続けてほしい。
17中野克哉 SH
レフティでカットインと得点力が強みの右SH。ここに来てよくやく柴山の穴を埋めに来る補強が叶った。実際にJ2でも数字を残していることから、是非ともレギュラーとして計算に入れたい。パスやポジショニングの評価も高そうなので、喜名ヘッドの指導を受けている点を強みに戦術面でも中心となることを期待したい。
30アルトゥール・シルバ DH(CF)
Jでの経験豊富なボランチ。プロフィールだけ見るとカイオ・セザールやジョアン・シミッチを思わせる長身だが、得点力も魅力。ボール奪取が強みには見えない得点数を見ると、本当に守備的ポジションで機能するのか不安で仕方ない。外国人ボランチは恐らくカルリーニョス以来と伝統的に少ない。
31阿部来誠 DH
タフなリーグでの戦いとなるが、ここ2年の実戦経験が少なく、とにかく実力は未知数。怪我の影響がどれほどなのか気になるところではあるが、ユース年代で結果を出しているのは事実。唯一の昇格となった同世代の代表のつもりで戦ってほしい。
35清水祐輔 DH
細谷世代でプレミアEAST2位となった柏ユース出身のボランチ。かねてからボランチ過多だったクラブが求めたのはおそらくキッカーとしての役割。大学の先輩高柳のみだったキッカー枠に風穴を開けられるか。また柏ユース経由の大卒といえば森海渡など良い選手が多いので、その系譜にも期待したい。
39泉澤仁 SH
似たようなタイプで似たような名前の泉の加入により移籍かと思われたが残留となった。10年前はJ1大宮でプレーした富山と泉澤がJ3大宮で揃い踏みしたのは何とも言えない気持ちになる。この二人は大卒一期違いで出戻りという共通点があるが、一緒にいるところは見かけない。古参同士手を取り合って、昇格に導いてほしい。
45種田陽 SH
10番ドリブラー枠の選手だが、大学ではなくJ3を選択。他のドリブラーとの違いは運動量があり、連続的な動きができる印象。少し見た印象では得意な形を複数持たないとすぐ研究されてしまうので、周りのレベルが上がるのと一緒に使ったり、使われたりといったところを高めていってほしい。高卒の年齢でも即戦力として期待。
DH評価…B
構想外の中堅が大卒新人と新外国人に入れ替わった形。個の能力はJ3クラスではないが、戦術を遂行できるかが全て。課題は定例の俊輝の負傷離脱で、守備力と運動量には不安があるだけに、シルバが機能すれば一気に充実するが果たして。
SH評価…C
右の中野は当確として、左はボランチが万全なら高柳、そうでなければ他の選手で左とサブの2枠を争う。純粋なアタッカーとして泉が増員されたのが大きい。FWの得点力が不安視されることから、なるべくは攻撃に特化した選手を並べたいところだが、運動量やSBとの縦関係が不安。数字が求められる。
FW(6名)
10シュヴィルツォク
契約を1年残しているという情報があったので、既定路線の残留。怪我の程度はどうなのか、そしてこのレベルの選手がJ3のピッチで本当にプレーするのかまだ信じられない。能力的にはJ3歴代トップのストライカーであることは間違いないが、長澤監督のサッカーにフィットするのか。クバの大活躍で昇格なんてそんな都合のいい話はないはず。良いイメージは湧かないので、過度な期待はしないでおきたい。
11中野誠也
ポテンシャルを考えれば引き合いはありそうだが契約更新。怪我や調子の波で中々安定した成績が残せていないが、年齢やカテゴリーを考えればここでキャリアハイの成績が欲しい。駆け引きの質は計算が立つので、あとは確実に枠を仕留めるのみ。中野克哉とのホットラインは誰もが期待するところだろう。恐らく1年通して1番計算の立つ選手なので、色んな相方と上手くやってもらいたい。
23杉本健勇
ネームバリューは抜群の元J1得点ランキング2位。2017年A川崎戦で小林悠にハットトリックを食らわなければ彼の人生も変わったはずなので、恨まれてないのかな、よく来たなという感想。シュートに至るまでは抜群に上手い選手なので、クバや誠也にガンガン点を取らせてほしいし、自身もせめて5得点ぐらいはしてほしいと思う。
28富山貴光
気がつけば実働9年目、チームの顔としても様になってきている。しかし低迷の責任を負う姿ばかりを見続けるのは辛く、そろそろキャプテンの職を解いてほしい。出場時間相応に得点はしているものの、意外に点を取れる時期と取れない時期の波が大きい。昔よりも簡単なシュートを決めきれるようになってきた気がするので、その調子で難しいのも簡単なのも全て決めてほしい。
42藤井一志
特別指定では出場機会を得られず、シーズンインからチームに合流することにより一層のアピールが必要。FW陣は悪いメンバーではないが突出した選手はおらず、藤井の計算が立つだけで層の厚さが大きく変わる。昨年のチーム得点王は5得点、2桁得点が複数出るだけで昇格にぐっと近づく。関東2部得点王の実績がある以上、サポーターが期待するのはゴール。
49大澤朋也 (SH)
愛媛FCでJ3を経験し思うような実績を上げられず、また昇格を逃したことからその厳しさは理解しているはず。新体制で重視されるハードワークは持ち合わせているので、あとは生粋の点取り屋だったユース時代の輝きを取り戻せるか。良さを消してまでハードワークする姿は見たくない。
FW評価…C
メンバーの質は決して低くないし人数もいるが、クバの状態如何で誰が点とるか問題は未解決。また人選によっては点は取るが守備しないジレンマが。昨年終盤のようにFWを2セット用意して後半途中で入れ替えるようだが、波のある選手も複数いることから今季は安定した戦いを見せてほしい。
まとめー選手個々人に対して
多くの選手に対して「フルシーズン戦えればレギュラー候補」と注を付けたほど、能力的には期待できるがあいも変わらず怪我がちな選手が多い現状。新たなスタッフ陣で怪我やコンディションの波が減り、より個々のポテンシャルが発揮できることを願う。
そしてユース出身を中心とした若手選手はただ頑張る、少しでも貢献する、というような抽象的な決意表明ではなく、もっと自分の力でクラブをJ2に上げる、全試合出る、と言うぐらいの気概が欲しい。いくら若くともJ3でダメならもうプロとして通用する可能性は低いということを自覚し、全員即戦力として戦えなければ明日はないカテゴリーで主力として活躍するための努力と成果を期待したい。
名前だけならどのチームよりも上回っている“雰囲気“はある。しかしながら志向するサッカーはまだぼやけていて、今現在何も方向性が公表されていないのは岩瀬体制に近いにおいがして不安はある。かき集めた選手たちが長澤監督のやりたいことをこなせるのかも含めて疑問。長年の成績不振でサポーターも疑心暗鬼になっており、そんな空気を選手スタッフは結果で払拭してほしい。