2020 J2リーグ 3分の1を終えた大宮アルディージャを振り返る
激動の2020年、実質2か月でシーズンの3分の1が終わった。開幕4連勝とスタートダッシュに成功し一時は首位に立ったものの、その後の失速により9位にまで順位を落とした。完敗といえる試合は栃木戦と北九州戦ぐらいだろうが、日程が進むにつれ攻守がかみ合わなくなっていった。
大宮に関しては未消化試合があるため実際は13試合の消化ではあるが、過密日程を考えるとこの1試合をプラスに捉えることは難しいため、3分の1を消化したものとして振り返る。
1.過去の成績と今季の成績を比較した上での現在地
過去のシーズンの第14節時点での勝ち点数と比較する。今季は1試合未消化のため、福岡戦の結果如何で数字上はプラス1なり3になる可能性がある。
2015年…勝ち点28(4位・勝ち点差タイ)
2018年…勝ち点18(14位・勝ち点差9)
2019年…勝ち点26(3位・勝ち点差1)
2020年…勝ち点20(9位・勝ち点差11)
過去4年間で最も昇格圏から離されているのが今季である。2位以内を狙う中で、全試合消化できないままシーズンを終える可能性があるため、やはり試合数×2の勝ち点が早期に欲しい。序盤は開幕ダッシュに成功し、内容は伴わないながらも順調に勝ち点を積み重ねていたが、現状は内容通りの結果が出てしまっている。
リーグ全体のレベルは一昨年に比べると高く、去年に比べたら低いという感じだろうか。一昨年はトップの勝ち点も低い混戦の中、個で戦うチームの方向性ははっきりせず昇格を逃した。
去年のチームは積み上げが見てとれたものの、突出していた柏に比べ、横浜FCと徳島も完成度が高く、勝負弱さに屈した。今季J1で得点王争いをしているオルンガとレオナルドは、まさに去年J2で得点王を争った2人である。
今季は突出したチームはないものの、継続路線の徳島はもちろんのこと、新たな小林監督のサッカーを体現する北九州など、個の差を組織の力でカバーできるチームに溢れている。加えて過密日程により若手の躍進が著しい。今季の現時点での1・2位は、過去の大宮のJ2での4シーズンで最も勝ち点が多いのも特徴のひとつである。
2.,試合を通してのマネジメントとメンタリティ
開幕当初は守備力がポジティブな材料だった。1点取られると守りきられて負ける。先制点を取らないと厳しい。対戦相手にはそんな印象があったかもしれない。
シーズンは進み、研究もされて状況は刻一刻と変わっていく。今では2点目はとられない。先制されても諦めず得点を狙えば追加点を取れない大宮は焦る。そこを愚直に突けば勝てる。精神面で優位に立たれている可能性が高い。
前半の失点がある以外は守備は大崩れしているわけでもなく、攻撃もただ進歩がないという風に感じるが、進歩がないというのは当然に問題である。相手は研究を重ね進歩している。高木監督のチームには緻密な分析は欠かせないが、過密日程により分析やチームへの落とし込みの時間が確保できず、自チーム敵チーム双方の過度なターンオーバーにより、ゲームプランの想定が上手くいっていない可能性がある。
嫌いな言葉だが、過密日程下で勝ち抜く術は「自分たちのサッカー」である。分析に勝るのはどのメンバーを起用しても再現性のあるサッカーができることである。正直これについてはある程度はできていると思う。しかしこの点が仇となり、一定水準のサッカーはできていても誰が出ても点が取れないし、守備も我慢しきれない。現状はマイナス面の再現性ばかりが目立ってしまっている。
散々語られているように軸となる選手がいない。しかしながらひとりの選手に依存するのは難しい今シーズン、軸を失うリスクを負うよりは、それに勝る組織を成熟させるのが最優先である。いま採用している戦術が最適解なのか、残念ながらそれはシーズンが終わらないとわからないことである。それでもリスクを負わない=守備優先で取り組むことは攻撃偏重よりも計算は立つ。方向性は一見正しいように見える。
3.求められる選手たちの奮起
各方面からの指摘の通り、低迷の原因は得点力不足である。攻撃陣だけの問題ではなく、ビルドアップやボールの奪い方等挙げればきりがないが、やはり一番の問題は前線の3枚である。
今季のコンセプトとして得点を取りたいポジションはシャドー2枚である。しかしながらシャドーのレギュラー候補と目された4人(菊地・近藤・黒川・奥抜)のキャリアハイを足しても24点。実際は成長込みでそれ以上の点数を見込んでいたように思われるが、過度な期待は禁物である。しかしながら、13試合で現状の2点は寂しすぎる。CFに点を取らせるシステムでないことはわかってるが、前3枚でも6点しか取れていない。誰が取らなければいけないというのはないが、誰かが取らないといけない。
若手への負担は大きいが、例えば北九州は若手攻撃陣が飛躍の一因である。東京五輪世代の遠藤渓太や藤本寛也がこの夏海外移籍したが、果たしてこのチームの選手は海外に何かアピールができたのだろうか?
4.今後の展望
8月28日金曜日までの移籍期間。財政の厳しい新潟は4人を獲得している。そしてハスキッチの移籍報道。本気度が伝わらないと感じていた中でのイバ獲得である。国外からの獲得が難しい情勢の中、国内で獲得しうる最上位の選手であり、彼のストロングポイントはわかりやすくこのチームに嵌まる。
ハスキッチの残留にどのような意図があるのかはわからない。このまま使い続けるのか、移籍の成立を待つのかはわからないが、イバを軸にハスキッチを2トップやシャドーで使えれば攻撃力は格段に上がる。
ここに来て4バックを採用しているが、フォーメーションを変えてもやることは変わらない。それでも2トップの方がよりFWの特徴を活かせる気がする。単純に前の人数を増やし、互いのサポートの意識を高めることができれば、やるべきことをより実行しやすくなる。
現状は稀に見る大失速ではあるが、開幕直後は連勝しており、同様の成績をあげればまだ可能性はある。決して大型連勝が見込めないチームではない。例年序盤は燻るものの終盤に追い込みをかけるチームは存在する。2004年のようなドラマを作れるよう、まずは正念場の11連戦を乗り越えてほしい。