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2023年の大宮アルディージャを振り返る(クラブ編)

選手編に続き、とにかく多かったクラブの問題点について。
例年放置されてきた課題が一気に爆発し、取り入れた外部の風もクラブの悪いDNAに全て飲まれてしまい、遂にトップチームの結果として表面化してしまった。今シーズンのクラブの問題について、大きく7つに分けて振り返る。


・急激な人件費の削減により選ばれないクラブへ


編成面での失敗を生んだ理由の一つ。2020年から2022年にかけて人件費は3分の1に。単年の予算規模ならこの金額なら充分J2を戦えるとはいうが、プロの強化部やコネクションを有していないうえ、急激な予算削減ペースは既存の選手に対する予算の割合は下げるのにも限界があった。左SB不在に代表される、競合する新たな選手の獲得に影響したものと思われ、単年の額面の問題以上に歪みが出た。構想外の選手を恐らく7人は抱えて開幕を迎えたが実績のある選手も多く、構想内の選手に充てがわれた人件費は更に少なかったものと思われる。
以前に原さんが複数年契約の弊害について言及していたが、結局霜田さんのために連れてきた選手(リクエストかは不明)も不良債権化。決して特異な戦術ではなかったはずなのに、このクラブの選手の従前からの弱点である戦術をやり遂げる力の無さと、クラブの定まらない方向性により無駄が発生した。首都圏クラブやクラブハウスといった設備面で選ばれた時代はもう終わった。

・適材適所の人員配置ができずブラック化する組織


理由は不明だがフロントの生え抜き人材が去っていく中で、補充ができず各ポストに空席が増えているものと思われる。アルチャンの再開についても反故される形になり、強化部兼務とはいえマーケットが閉まっていた以上原さんは何をしていたのか?と言われても無理はない。近年のフロントが批判される象徴的な出来事だと思う。
現場では実績のない原崎HCを監督に内部昇格させ、コーチの補充はなし。最終的には渋谷さんを呼び戻し解決したものの、元々少なかったコーチの補充にはトップ未経験の勝野さんを据え、怪我人多発の横山PCを更迭する形で岡本さんを復帰させるドタバタぶり。フロントは普及部が本職の秋元強化部長の継続、結果的に更迭され強化部には橋本早十ひとり。
クラブ本体の人員減が(本来クラブが目指しているらしい)成績にとらわれないファンを獲得する間口となるはずのホームゲームイベント等の質の低下にも繋がっている。以前のような創意工夫はなく、少ないスポンサーブースとグッズガチャのみで、集客を図れるようなイベントは皆無。太客から金を巻き上げることしか考えていないと思われても仕方なく、今のままでは新規は増えない。

・クラブ全体の運営方針の失敗


筋肉質なクラブ、選択と集中とぶち上げた佐野社長の就任時。J2に定着しており親のすねをかじってばかりいることを考えれば方針自体は必ずしも間違ってはいないが、結果は予算が削減されて降格しただけ。削減したお金はどこへ選択集中されたのか?アカデミー経費の維持だけではないはずで、それはVENTUSなのか?
贅肉を削ぎ落とすどころか、筋肉も落とし骨まで溶かした佐野社長。親会社からの天下りイエスマンのポジションなだけに経営判断には何かしらの指示もあったかもしれないが、降格指令は流石に無い。でなければ夏の補強もなかったし、終盤の無料招待だって企画されなかった。コストカットと最低限成績の維持を両立させてあわよくばJ1程度の認識で実績を上げるつもりだったのかもしれないがあまりにも考えが甘く、結果降格により入場料収入やその他スポンサー収入の先細りが予想される事態に。結果をうけて今度こそNTTのサッカー部門からの完全撤退も可能性も出てくる。やる気のない親会社と無能な経営者を送り込まれ続ける年月を考えればそのほうが良いのかもしれないが。

・歪なポジションバランスとコンバート頼りの編成


明らかな問題点としては、本職は怪我がちな大卒ルーキーだけという左SB。泉澤と柴山だけという本職SHの手薄さについては、山﨑を頭数として当て込んだと思われるが、ピッチでお目にかかる機会がほとんどなく、結果的にはリスクヘッジが必要だった。
また相馬監督の基本フォーメーションが4-4-2とわかっていながら構想内の純粋なCFは富山のみ、シャドータイプのFWばかりを抱え、逆にシャドーが活きる3バックをやるにはCBの人員の余裕はない。そしてボランチは余剰人員を放出できずダブついた状態でスタート。見るからに人数不足だった2022年と違い、人員整理ができなかったが何となく頭数とメンバーが揃ってる風で今季がスタートしたのは落とし穴だった。左SBについては昨年低調だった茂木の大活躍でどうにかなってしまったが、毎年恒例の負傷者ドミノが発生したときには適正ポジションでメンバーが満足に組めなくなった。
これらは強化部体制の弊害でしかない。スカウトとしては戦力だった西脇さん、素人である佐野社長の兼務を挟んで、普及部では活躍した素人の秋元さん、そして結局本職のわからない兼務の原さん。ここ3年の低迷と強化部のドタバタと時期が重なる。
しかし外国人選手補強は今季を見るとやはり必要だった。日本人選手にない異物感を持ち併せた3人の存在は間違いなくチームに刺激となり、対戦相手の脅威になった。マテウスを思わせる荒削りな素材感のカイケのような選手は自力でも発掘可能だろう。もう二度とコミュニケーション云々だの馬鹿げた言い訳つけた日本人のみの編成は見たくない。

・埋まらない途中退団の穴と夏の補強の失敗


相馬体制で構想外だった河田の個人昇格、結果指揮官は代わり河田自身も鳥栖で活躍できなかった。移籍市場はかろうじて空いていたがクラブは構想外の選手の補充は行わなかった。結果論だがFWは負傷者だらけで得点力のない小島をFW起用、二列目の柴山らが大ブレーキで噛み合わず。15試合勝ち無しの要因となった。
柴山の個人昇格は能力的にも妥当だが、エース級の引き抜きに対しても追加補強はなし。昨年の開幕時にはドリブラーを大量に余らせていたが、遂に泉澤ひとりになってしまった。黒川はサイドで打開するタイプではなく穴は全く埋まらず。個の突破力と昨年9アシストのお膳立ては弱体化。サイドからの精度の低いクロスに終始した攻撃パターンで得点力不足を克服できず、終盤勝負どころのセットプレーをことごとくふいにした。
夏の移籍市場で獲得したのはシュヴィルツォク・黒川・飯田・カイケの4人。実力の片鱗は見せたものの、清水戦で降格が決まるまでの大事な最終盤5試合でこの4名はスタメン無し、出場時間はクバ24分、黒川25分、飯田18分、カイケ44分、合わせて111分。この数字が補強の成否を表している。

・結果より理想を求める最下位クラブ


相馬監督の志向するサイド圧縮サッカーは8節終了時点で5分の成績と相応の結果は出していたが、そこから監督交代も含めた15戦勝ちなしの長いトンネルに入る。対策を跳ね返す選手スタッフの力のなさと、怪我人の多発による選手層の薄さであっという間に最下位に低迷。相馬体制末期では原崎HCのアドバイスか理想を捨てた時期もあったが悪循環は止まらず(弱すぎてどんなサッカーしてたかすらよく覚えていない)。クラブと選手一人ひとりの面談の結果、選手の希望するボールを握るサッカーをするため監督を更迭した。
原崎支持を打ち出したクラブだが、皮肉にも戦術変更まで改善せず。いわき戦の大敗で原崎体制1勝1分5敗となって迎えた23節町田戦から5バックを導入し、ごまかしごまかし勝点を稼ぐようになった。あくまで配置の話だが、もっと早くやっていれば順位も変わっていた可能性がある。負けがこんでもなおボールを握りたいと言うお花畑な一部の選手に、彼らに支持された監督。勝負の世界であるプロの世界に自己満足を持ち込みチームをどん底に落とした罪は重い。

・こんなはずではなかった、史上最低イレブン


このクラブの温さについて語る際に避けられないのはアカデミー出身選手について。常時5〜8人程度がメンバー入りしていたが、ピッチ上でリーダーシップを取れる選手は不在だった。闘える選手を挙げるとすれば該当するのは俊輝や高柳、仁騎のような外の空気を吸った経験のある選手だけだ。
キャプテン副キャプテンの人選についても、適性を考慮している感のない人選が過去にも多かった。今季の3人は皆責任感の強い選手たちだが、適性だけで見ると妥当なのは栗本。しかし袴田以外はレギュラーに定着せず、3人共ピッチに居ないこともしばしば。キャプテンシーはピッチに居てこそ発揮されるのでは無いか。戦力としての立ち位置も考慮して決める必要がある。
今季は相馬さんの構想外の選手の整理が進まずシーズンインしたが、恐らく期待以上の活躍ができたのは泉澤だけでないか。その泉澤も彼の能力を考えれば物足りないが、他の選手も意地を見せて欲しかった。
今季に限ったことではないが、危機感を感じている風なコメントはするが、結局誰も他人事で実行に移さない。一番の問題はピッチ上なのかクラブ全体なのかはわからないが、本来は各個人ではなくチーム一体で取組まなければならないはずだ。

・まとめ


1年を振り返るとあの時あぁなっていれば…とも色々思うことはあるが、たとえば判定を恨んでも何も生まれない。栃木戦の神の手ゴールにしろ、仙台戦のハンド見逃ししにろ、取り返す時間はいくらでもあったはず。
ターニングポイントとなったのは間違いなくHいわき戦。大事な試合とわかっていながら結果だけでなく姿勢も見えず異例の選手と相対する居残りとなった。2017年H札幌戦を思わせる両クラブの先行きをはっきり分けた試合だろう。シーズン終盤の粘りはあったが、H熊本戦を落とした時点で終戦だった。
来季重要なのは目標設定と確固たる方向性。クラブがどうなりたいのか明確でなければ、ただでさえ少ないNACKのスポンサー看板も減るばかり。誰も口にしなかった今季の目標、絶対無理だったが原崎さんは公式のコメントで昇格したいと言ってくれた。本来クラブが責任を持って発信しなければならない。
来季編成については選手を選ぶ権利のないJ3クラブである以上、今現在の編成を見て弱点や編成バランスを語る意味はない。ただ強いて挙げるなら若手でも東洋大コンビは主軸になってほしいし、富山にはあの時の菊地のように喜びのスピーチをしてほしいし、中堅となる最大勢力の96年組にはJ1初昇格後の主税たちのように率先してチームを引っ張っていってほしい。
コーチングスタッフ含めて全く違うチームになることが予想される来季だが、誰もが指摘する霜田→相馬→原崎の戦術的なブレは今後仮に監督交代があっても是正されるのか。大宮にないものを持っていた霜田さんと相馬さんを切ったが、新体制がクラブの弱点を補い結果を出せるのか、勝利から逆算しチームカラーを構築できるのか見ていきたい。
屋号さえ変わらなければサポーターから注がれる想いは変わらない。選手たちにはたまたま所属したクラブでも大事なキャリアの一部、ひとシーズンを人生をかけた1年と重く捉えてほしい。審判やグラウンドの質も著しく下がり観戦する側としても厳しいリーグとなるが、クラブは具体的な結果を追求し、良い2024年だったと断言できる1年にしてほしい。

選手編はこちらへ。


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