Win 〜 失われた「お互い様」という言葉 〜
GDPや生活インフラを見ても、多少落ちたり古くなっていたりするかもしれないが、それでも間違いなく日本は豊かな国である。
しかしながら、そんな国でなぜか貧しさを感じている人は多いはず。
今回はその背景について、個人的に考えてみた。
個人主義の台頭
かつて日本社会は、コミュニティや家族の結束を重んじる文化が根付いていた。しかし、近年では個人主義が急速に浸透し、自分自身の利益を最優先に考える人々が増えている。あるいは、損切りが早くなった、ということも言えるかもしれない。
例えばこれまでの会社員の在り方は、同じ会社に40年勤めて定年を迎えるのが普通だったが、キャリアの中で転職を経験することは、現代では当たり前になっている。
またその影響もあってか、就職してすぐ仕事や環境が合わないと思ったら、退職代行などを使ってすぐ辞める人もいる。
これが別に、良い悪いという話はしていない。
ただ、かつては「お互い様」の精神で助け合うことが普通だったが、今では「自分が得をすること」が最優先とされる風潮が強まっている。
私は、もしかしたら「お互い様」という言葉を、ここ十年くらい耳にしていないかもしれない。
損得勘定の価値観
『7つの習慣』には、「win-win」を重んじることが成功し続ける人の習慣の一つであると記されている。
だが、現代の人の何割かはきっと「lose-win」でも「win-lose」でも「win-win」でもない、単純な「win」だけを求めるようになっている気がする。誰かとwin-winになって「2**2(2の二乗)」「3**2(3の二乗)」にするのではなく、自分一人で「3」「4」を作っていこうとしている。投資信託や株式投資への関心度や、FIREへの希望を抱く人を見ると、それを感じられると思う。
感覚的にだが、「No Give, only take」の価値観が台頭してきていると感じている。
車や家、デートでの損得勘定
例えば、車を買うかどうか、家を買うかどうか、デートで奢るかどうかなど、SNSでは頻繁に議論が交わされている。そして、多くの人が「お金を節約すること」「得すること」を最優先に考え、家を買うなら23区内が良いとか、それ以外なら賃貸の方がいいとか、そんな意見をする人もいる。
アンチ失われた30年
彼らの分析があってる間違っているというのは、誰にもわからないことだが、間違いなく言えるのは、こういう議論になる議題の多くは、失われた30年においていわゆる「普通」とされてきたものだ。
・結婚するのが当たり前
・指輪は給料3ヶ月分
・一軒家を購入
・満員電車で毎日通勤
・結婚式は挙げるもの
などなど
これら30年前の価値観にアンチテーゼを唱える人が増え、これの反対が今の時代の正解だと思っている人は、少なからずいると思う。
ただ、そう考えている人たちに問いたい。
果たしてそれは、あなたの価値観なんだろうか。
そして、失われた30年の価値観が全て正しいとは言わないが、間違っていないことも多々あると思う。
コミュニケーションの問題
さらに、一人を選択する人は、誰かと口論になったり、いざこざが起きることを避けるために一人でいるという価値観を持つ傾向があると感じている。コミュニケーションの摩擦やトラブルを避けるために、人と関わらない選択をする人が増えているということ。これが「Win」を持つ要因の一つになっていると思う。
愛国心と戦争
ちょっと話は逸れるが、現代日本では、愛国心に対する価値観も変化していると思う。もし日本が戦争になった場合、国のために戦うという人はどれだけいるだろうか。
かつては「国のために命を捧げる」ことが美徳とされたが、現在では多くの人が戦争を無意味と感じ、自分や大切な人の命を犠牲にすることを避けようとする。私自身も戦争が無意味であり、非戦闘地域に避難することを選ぶだろう。
しかし、ウクライナのサッカー選手で冨安選手と同じアーセナルに所属するジンチェンコという選手のように、戦争が起こったら国のために戦うとコメントする人もいる。
結び
私たち日本人の人となりは、「人」という漢字で言えば、良くも悪くも自立し始めており、寄り添っていかなくても立っていられる状況になっている。
しかしながら、今我々がこうして立っていられるのは、エッセンシャルワーカーをはじめ、様々な人々の行動の結果である。
その事実がありながら「いやいや、私は一人で立っているよ」という人がいるのであれば、ぜひ100%自給自足で暮らしてみて欲しいものだ。 そこには電気もガスも水道もない。
ほら、コロナ禍でコロナにかかった時、誰からかかったかわからないことも多かったでしょ?つまり、知らないところで繋がっていてウイルスを受け取ってしまったということ。
故に、我々は周りの人にもっと感謝する必要がある。全く関係ないと思っている人も、どこかで関係していると思って生きていくことがいいと私は思っている。
互いに感謝し合い、支え合うことができる社会こそが、真の豊かさをもたらすのではないだろうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?