真昼の星を探せ!
今から約80年前、真昼に星を見ることを試みたパイロットがいました。
はじめは空が明るくて、星は全く見えませんでした。
そのパイロットは、薄暮時に見える一番星を毎日眺め、その星が現れる時刻と方向を確かめました。
毎日、毎日少しずつ少しずつ早めに、一番星が現れる方向を見ました。
あるとき、いつもよりもだいぶ早い時間に、その方向にチラッと光る点を見つけましたが、まばたきした瞬間、その光を見失ってしまいました。
次の日は、まばたきしないように、慎重に星が出る方向を見ました。
また、チラッと光る点が見えました。
でもその時、誰かに声をかけられたので、そちらを向いて、また星の方を探したら、もう見えませんでした。
このパイロットが、いつも空を見上げる姿を見て、仲間のパイロット達は、はじめは「ん? 何やってんの?」。そのうち、「先任はプレッシャーで頭がおかしくなった。」と陰口までたたく言うようになったそうです。
でも、このパイロットは全く意に介せず、昼間の星を求め続けたのです。
彼は気がつきました。
視線を変えたり、首が動くと、かすかな星の光を見逃してしまうことに。
次の日から、彼は滑走路の横の芝に、大の字に横になり、頭が動かないようにして、星が現れるの待ちました。
星は、はじめは、小さな小さな、かすかな点でチラッと光るそうです。
目が慣れてくると、まばたきして目をつむっても、目を開けるとそこに星が輝きはじめます。
だんだんと周囲が薄暗くなるにつれて、その星は輝きを増していきます。
いつの間にか、昼の3時、4時頃でも星が見えるようになりました。
彼は確信しました。
例え周囲が明るくても、見ようとすれば星は見える。自分自身の眼球で。
体幹がブレないように、意識を星に向け、そこにあることを疑わずに、
心静かに呼吸して、見る気で見れば、容易に見える。
なぜなら、星はそこに「在る」のだから。
見ようとリキむのではなく、見る気になって、静かに見えるのを待つ。
「昼間に星は見えない。」という常識に、このパイロットは愚直に向き合い、とうとう真昼でも星が見えるようになりました。
そして、幾多の過酷な任務を遂行し、毎回の出撃で直属の部下を1機も撃墜されることなく帰還し、終戦を迎えました。
昼間に星を見つける努力は、どんなに過酷な任務の時でも、透き通った空を、誰よりも広く、そして静かに見渡すためのものでした。
おしまい。
※オマケ
この元零戦パイロットは、いつも、繰り返し繰り返し、私に仰いました。
常識を鵜呑みにするな。
秀才は常識だけで明日を語る。天才は20年先を語る。故に理解されない。
でも、なにごとでも真剣に向き合えば、誰だって10年ぐらい先は見えるようになる。真の天才は、秀才が理解できるように20年先のことを、明日のことのように説明できる人だ。
何があってもへこたれるな。がんばれ。でも無理するな。
決してあきらめるな。やりとおせ。でも無理するな。
自分を信じろ。振り回されるな。呼吸を忘れるな。
これは、英語の「Never give up!」とは意味が異なるのだ。
これは「不撓不屈」だ。真の不撓不屈は、女性でも子どもでも、年寄りでも、誰でも心に持っている。生きること自体が、不撓不屈なのだ。
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