一枚のイラストは、世界を変えうる
一枚のイラストは、世界を変えうると思っています。
私は、中学美術教師でした。美術科というのは、はっきり言って「窓際」です。高校入試にも無いし、卒業式や体育大会などの行事も、さして関りがありません。
美術の時間は、削りに削られ、大した作品もできません。また、不得手な生徒にとっては、「遊び、息抜きの時間」です。
美術教師の扱いも、ひどいもので、持ち時間が少ないと、技術の時間や英語など他教科の負担を減らすために他教科をおしつけられます。
しかし、最近確信したことは、「一枚のイラスト(アート)は、世界を変えうる影響力を、世界にもたらす」ということです。
先日、デザイン系の専門学校に通う娘の為に、歴代のディズニーのポスター集を見ていました。
世界のトップともいえるアーティストの競演とも言うべき、すばらしいものであったのですが、ひときわいいなと感じたのが、下のポスターです。
これは、グレッグ・マレティックというアーティストが2010年にディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーのために制作したものです。
一枚のイラストの中に、いろんな「ストーリー」が見えてきます。
「夕暮れ時、傾いた日差しが、遠くにある山と、塔のある建物を照らしている」
「小さな赤いトラムが停車していて、若い男女がうれしそうに乗り込んでいる」
「向こうでは、風船売りがいて、3人家族の中の小さな子どもが、ひとつ風船を買ってもらった」
「遠くの山肌から察すると、火山なのか?」
「ヤシの木が見えるということは、比較的温暖な地域なのだろう」
等。
「何気ない日常こそが、人の幸せなのだ」ということが、言葉でなく、感覚として伝わってきます。
考えてみれば、こういった「一枚のストーリー」は、身の回りにいくらでもあります。
幼い頃、身に付けていた洋服や、食事の時に使っていた食器、弁当箱にも、こういった「一枚のストーリー」がありました。
こういったイラストが、街から、世界から全て消えてしまったとしたら、どうでしょうか?
たとえ、名も無き多くの人たちが描いたイラストであっても、その一枚一枚が、
人の世という社会をつくっているのだと思います。
私たち、美術教師は、そこを軸として学習を組み立てるべきだったのではないかと、今更ながら考えています。
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