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「マヤの一生」を読む

「マヤの一生」を、この歳になって初めて読んだ。
SNSで「戦時中、飼っていた犬を供出せよと回覧板が廻ってきて子ども達が連れて行った。犬はどこかに散歩すると思って嬉しそうに尻尾を振っていたが、連れて行った先で、子ども達の目の前で絞殺され、泣きながら帰ったことを一生忘れられない」という投稿を読み、その中のやりとりで「マヤの一生」の話題が出たからだった。
もっと幼い頃、若い頃に、この本に出会うことが無かったことを悔やんだ。
私は教師であったが、この書を「戦争を考えるためのもの」として生徒たちに紹介することも無ければ、自分の担任であった教師たちから聞くということも無かったからだ。

この実話である物語は、戦争の残酷さを伝えるだけではなく、「人間と同等である全ての生命の尊厳を考える」ためにふさわしいものである。
その上で「戦争」というものを考える教材として、今の児童や若者たちに紹介したいものである。

今、うちの居間では、元野良の2匹の猫が暮らしている。
2匹は本当の意味で、妻や息子、娘の「癒しと元気の素」となっている。
この猫たちの「食べる餌が国家の無駄で、殺すから連れてこい」と言われたらどうだろうか?目の前で殺されたらどうだろうか?
かつて私は1頭の対州馬を亡くした。
この馬を、「お国の為に使う」として中国の戦地に連れていかれたらどうだろうか?どう感じただろうか?

以下、Amazonの書評からピックアップしてみた。

◎子供の頃に、担任の先生が読み聞かせをしてくれた作品で、その時先生が泣きながら読んでくれたのを思い出しました。その時の感動、戦争に対する怒り、悲しさは、原体験となって残っています。
戦争というのは、このように、家族の数だけ悲劇を生むということ、不幸を生むということを追体験しました、マヤの最期の気持ちを考えると、今でも涙がこみ上げます。後世に残してほしい作品です。


◎前半のマヤを初め動物たちのイキイキとした様子はまさに椋鳩十ならではの描写です。戦争前の時代なのにこんなにも犬や猫を家族として考えているのは、流石です。
家族と一緒にいたいがためにこっそり家に上がっていたマヤを叱った事を、
後に後悔しているところなど、しみじみします。
そして、後半の悲しいマヤの運命。家族の悲痛な思い。
お国のため、戦争のためと大切な家族の命を目の前で奪われた家族の思い、
子供達の悲しみはいかばかりか。胸が締め付けられます。
これが、戦争です。二度とマヤと家族の悲しみを繰り返さないために
私たちに今できること、見逃していることがあるかもしれません。


◎小学生の頃母に買ってもらって(留守番のご褒美のおみやげでした)
ラストで号泣したうえ、数日後学校で思い出し泣きしてしまった思い出の本です。
中身だけでなく、装丁も全く当時のままで懐かしいです。太平洋戦争のころのお話です。実話です。マヤは作者の家で飼っていたメス犬の名前です。
作者には三人の幼い息子たちがいて、とりわけ動物好きの次男に非常に懐いていたそうです。
すでに飼われていた猫と雄鶏との動物ならではの交流、子供たちとのふれあいが作者の鋭い観察眼を通して描かれています。楽しい時間はずっと続くと思われました。
しかしその当時の時代には逆らえず、マヤがやって来た数年後、他の飼い犬同様に悲しい最期を迎えます。しかも次男の目の前で。
最後の最後でささやかなどんでん返しがあるのですが、ハッピーエンドではありません。
でも、犬が飼い主を思う気持ちはなんて純粋なんだろうと思います。
ただの悲劇ではないところが、この作品が40年以上にわたって、そしてきっとこれからも名作と呼ばれる所以ではないでしょうか。
いちおう小学校高学年むけですが、漢字にはふりがながふってあるので、
普段から本を読んでいるなら2・3年生も読めると思います。私は2年生のときに読みました。


◎「親子の本になりました」
小学生の時、読書感想文の本を探していた時に先生に薦められた本です。
凄く心に残り、子供に良い本ない?と聞かれて思い出し探しました。難しいかな?と思いましたが、小3の子供も最後まで読みました。


◎子供の頃、椋鳩十さんの動物児童文学が大好きで、全作品制覇しようと手に取った中の一冊。私にとって一生忘れられない作品です。
最近、ウクライナ侵攻をきっかけに戦争と平和について一緒に考えましょうと呼び掛ける小さな活動をする中で、絵本や児童書の紹介をテーマにディスカッションしたときに、この本を思い出して40年振りに手に取りました。
初めて読んだときは、ただただマヤがかわいそうで、あまりのショックに声をあげて泣きました。そのシーンだけが強く心に残り、しばらくフラッシュバックに悩まされたほどでした。
先述のことがあって最近再び読み返したのですが、子供の頃とは大きく印象が変わっただけでなく、新しい発見もありました。これは動物文学ではなく戦争文学だと気づかされたのです。
マヤと猫のペルと鶏のピピの関係性が素晴らしい。さすが動物文学者だなと思わせる繊細な描写と優しい目線で描かれています。ちょっと悪ふざけが過ぎたときはきちんとたしなめ、誰かのピンチのときには全力で立ち向かう。人間同士もこんなふうにできるならきっと戦争は起こらなかったという一文も印象的でした。
3人の子供たちもけなげで可愛らしいだけでなく、非国民と罵られても世間の風潮に流されず荒みもせず、マヤを必死に守ろうと彼らなりの理屈を見出だす逞しさには心を打たれます。
前半が平穏でほのぼのとした雰囲気なだけに悲しすぎるラストシーンが際立ち、「子供に読ませたくない」とおっしやる方もいるようですが、戦争の本当の恐ろしさとはまさにこういうことなのではないでしょうか。小さな村のささやかな家族の暮らしを一欠片の慈悲もなく奪い取り、温厚で明るかった人々の心を蝕み尽くして鬼に変えてしまう。ほしいものに囲まれ命を脅かされることなく暮らす今の子供たちに戦争の恐ろしさを具に伝えるには、犬という身近な動物との関わりを縦糸にしたこの作品こそうってつけであると私は思います。

Amazonレビューより




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