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私の父は、三菱重工長崎造船所の事務職だった。
父は、三菱を定年まで勤めあげたが、働いている姿を、ただの一度も見たことがない。
幼稚園の頃、「お父さんが仕事をしている絵」を描くという授業があった。
おそらく父親がいない人は、母親か保護者などの絵だったと思うのだが。
だから、私は「父親は、船をつくる会社で働いている」と聞いて、父が他の人と一緒に潜水艦を組み立てている絵を描いた。
自分が教師をしていた時は、もちろん職場の姿を子どもに見せた経験は無いが、辞めてからは、幾度となく仕事の場に連れていったことがある。
まだ小学生などが手伝っている姿を見ると、お客さんも健気に思うのか、いつもよくしてくれたことを思い出す。
しかし、親にとっては、それだけではなく、子どもと一緒に仕事をするのは、何とも表現しにくいが、大変な充足感に包まれることになる。
作文を読むと、それは子どもにとっても同じなようで、とっても安心する。