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子ども日本風土記 (福島) 「 須賀川きゅうりの出荷 」


須賀川きゅうりの出荷

夏休みのある日、父は上り番だったので、おばさんとわたしと弟でついて行くことにした。
夕方、荷物を積んだトラックで父がむかえに来た。
ほんとうは二人しか乗れないけど、後ろの寝台に乗れるというから、わたしと弟と交代しながら行くことにした。
四号国道に出て白河あたりにさしかかると、雨が降ってきた。
須賀川の方も降っているのかと思ったが、あとからきくとその日は降らなかったそうだ。
福島県を出て栃木県にはいると、車が混んできた。
やはり夏休みだから家族づれの車が多いんだなと思った。
もう、だいぶ日がくれてきて、どの車もライトをつけて走っている。
そのうちにわたしは、うとうとと眠くなって、寝台で眠ってしまった。
だいぶ寝たらしく、夜食をするため、ドライブインで、父に起されたとき、九時をまわっていた。
二、三十分休けいしてからまた走り続けた。
その日の仕事は、千住の市場にいって、きゅうりをおろしてくることだった。
約二時間ぐらいで市場についた。
やはりわたしたちと同じように、遠くのほうから野菜を積んで来る車が多かった。

夜の十一時というと、わたしはいつもとっくに寝ている時刻だ。
市場は野菜の山でいっぱいになっていた。
父は、トラックのシートをはずして、おろす準備をした。
きゅうりの箱がトラックいっぱいに積み重なっていた。
きゅうり一箱が十一キロというから、だいぶ重いし、それが六百何十個とある。
わたしもいくらか手伝ったが、なれないせいか、こしがいたくなって長続きしなかった。
それでもこの市場は、手伝ってくれるからいいと、父がいっていた。
もうすぐ時計は一時をさすというのに、まだ箱が残っている。
父は汗で背中がぬるぬるしている。
もちろんわたしも汗でびっしょりだ。
一時半ごろようやく終わった。
とても気持ちがよかった。
夜空に星が、はじめて見たような美しさだった。
そして、汗をふいている父の後ろ姿がとてもたくましく見えた。

                 (須賀川市須賀川三中三年 西間木敦子)



子ども日本風土記(福島)より

***

私の父は、三菱重工長崎造船所の事務職だった。
父は、三菱を定年まで勤めあげたが、働いている姿を、ただの一度も見たことがない。
幼稚園の頃、「お父さんが仕事をしている絵」を描くという授業があった。
おそらく父親がいない人は、母親か保護者などの絵だったと思うのだが。

だから、私は「父親は、船をつくる会社で働いている」と聞いて、父が他の人と一緒に潜水艦を組み立てている絵を描いた。

自分が教師をしていた時は、もちろん職場の姿を子どもに見せた経験は無いが、辞めてからは、幾度となく仕事の場に連れていったことがある。
まだ小学生などが手伝っている姿を見ると、お客さんも健気に思うのか、いつもよくしてくれたことを思い出す。

しかし、親にとっては、それだけではなく、子どもと一緒に仕事をするのは、何とも表現しにくいが、大変な充足感に包まれることになる。

作文を読むと、それは子どもにとっても同じなようで、とっても安心する。


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