この日記が書かれたのは、日記が終わる5か月前のこと。
長い日記の中でも、アンネがひとつの結論めいた決意を記したといってもいい部分かと思う。
一見、両親への反発、特に母親への嫌悪のように思えるかもしれないが、もはや精神的に、そういう段階を遥かに過ぎていることがうかがえる。
つまり、自分を「未熟者あつかい」或いは「子どもあつかい」するという差別に対し、敢然と決別する決意を表明し、また独自のパラダイム(価値観を伴った、物事の見方・捉え方)に従い、より高い理想に向かって旅立つという、強い意志が、この日の日記から感じられる。
アンネは、物理的・精神的に、ナチス・ドイツというファシズムから差別・迫害を受けていたのであるが、それは人種差別であり、「劣等民族あつかい」だったわけである。
しかし、相手のことを「自己と同じく尊重するべき存在」として扱わない、「子どもあつかい」や「年寄りあつかいなども、相手を傷つけ苦しめる差別であることには変わりないのだ、ということをアンネの日記は訴えているように思える。