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言葉遣いがまずい人は、けっして仕事が うまくいかない ~ パリの美術館と琵琶湖有料道路で

かつて日本語学校の校長をしていた時、外国から来たばかりの青年たちに言ったことがある。
『 日本にきたら、「ありがとう」と「こんにちは」を沢山使ってください。その言葉が、将来きっとあなたを助けてくれるはずです。』

彼らが、卒業後もずっとこの2つの言葉を使い続けていたら、きっとどこへいっても、どんな職場でも温かく迎えられただろう。

どんな外国にいったとしても「笑顔」「ありがとう(現地語で)」「こんにちは(現地語で)」は世界共通なのだ。

一方、仕事をする上で「世界共通の大事な言葉」がある。

それは、日本語で言う「すいません」という言葉だ。

若い頃、パリのオルセー美術館にいた時のこと。
ロダンか誰かの彫刻を触っていたら、館内にいた若い女性監視員から、
「シルヴプレ、ドント・タッチ!」と声をかけられた。
「シルヴプレ(s'il vous plaît)」は、「お願いします」といった、 人に何かを頼む際の意味のフランス語である。
私はとっさに「ソーリー」と謝った。
注意をされたのだけど、少し嬉しい気すらしていた。少なくとも悪い気分には、ならなかった。
若き異邦人に対して、監視員の女性は「シルヴプレ」という敬意を払う言葉を付けることによって印象をまったく別のものにしたのだ。
「ドント・タッチ」だけだったら、非常に憮然とした気持ちになっていただろう。場合によってはフランスという国そのものを嫌いになっていたかもしれない。(自分が悪いにも関わらずである)


またある時、家族を載せて群馬県から九州まで車で帰っている途中、琵琶湖大橋の有料ゲートを通過しようとした時のこと。

お金を払うブースに車で近づくと、中からいかにも「関西人」といった感じのおじさんが顔を出して叫んだ。
「えらい すんませ~~~ん!〇〇円、おねがいします~~!」
私は、今でも、そのおじさんが、日本一商売上手な方のひとりだと思っている。
有料道路を通るのに、お金を払うのは当たり前のことで、この方が「すいません」などと言う必要は全くないのだが、この方の明るい掛け声と態度は、今でも心に残っている。
そして、「流石は、近江商人の地の人、関西の人はすごいね」というイメージが私の中で定着している。

「一言つける言葉」とは、そのような強いパワーを持つのだ。


すいません!」を、仕事をする上で、この2人のように冠詞のごとく常用するといい。
それに「笑顔」を添えれば、全世界共通・最強の商売道具となる。

「そんなに相手にペコペコすることは無い!」だとか、頭から相手に横柄な態度をとるような人間は、どこのどんな立場であれ、けっして仕事の上で、成功できない。


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江島 達也/対州屋
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