『 雪の日、兄ちゃんが「あかつき」で・・・ 』(長崎市・JR長崎駅)
「兄ちゃん見て、ここん雪はまだ新しかバイ!」って、ホームのはしに残った雪にどんどん足跡をつけたけど、兄ちゃんはさっきからしんみょうな顔をして父ちゃんたちと話してる。
そりゃそうか。これから兄ちゃんは「あかつき」に乗って関西へ大学入試に行くとやけんね。
けさ起きてみたらあたり一面の雪景色。「初雪バイ!」ってうれしくなって、兄ちゃんば起こして、久しぶりに雪合戦やらして遊びまくった。
へいの上やら木の上やら近所中から新しい雪ば二人で集めて、でっかい雪ダルマまで作ったたのに・・・。
母ちゃんから「今から試験ば受けに行かんばとに、なんばしよっと! カゼばひいたらどがんすっとね」ってこっぴどくしかられてから兄ちゃんは、出発するまでむっつりだまって部屋に閉じこもりっきりやった。
いつもは駅に来ると、これから汽車に乗れるけんワクワクするとばってん、今日はなんかちがう。
母ちゃんはさっきから「タオルは入れたね? 薬はここに入れとくけん。」って何回も兄ちゃんの荷物ばまぜくり返しとる。
それから「もし京都で迷うたら、六条油小路に遠い親せきがおるけん、そこに電話ばせんね」とか、話が長い。
父ちゃんはひと言、「受験票さえあれば、何とかなる」って言ったきり黙って雪の降る空ば見上げとる。
でも、もし試験に合格すれば兄ちゃんは春からおらんごとなるったいねぇ・・・。
◇
平成20年3月14日で廃止された寝台特急「あかつき号」にはたくさんの思い出がある。
神戸の親せきを訪ねるとき、まんがやお菓子を抱えてワクワクしながら乗り込んだ。
進学した兄が京都へ戻るのを見送りに来たとき、やはり兄は無口だった。
あかつき号、職員の皆さん、約50年間本当にお疲れさまでした。ありがとう!
そして、さようなら・・・
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