見出し画像

やっとTNRを行うことができた日

一昨日、やっとの思いで、野良仔猫2匹の不妊手術(TNR)を行うことができた。
昨年10月から試行錯誤を重ねて、実に3か月が経過していた。
まず今までにTNRの為の捕獲に使ってきた、特大のたも網で捕獲するつもりだったが、この2匹は今までの猫に比べて、異常に警戒心が強く、5か月近く経っても、触れることすらできなかった。
近寄れば、すぐに逃げてしまうので、網での捕獲はあきらめるしかなかった。

次に考えたのは、市が貸し出している捕獲ケージ。
実際に使用したことはなかったが、自力で捕獲できない以上、トラップに頼るしかないので、一応借りてきてみた。
貸し出している動物管理センターというのは、ほとんど人目につかない、薄暗く老朽化した建物の中にある。

正面が管理センターの入っている建物。意図的かどうなのか、通りから深く入った奥にあり、所在地すら一般には知られていない。左側は建設中の「ピース・スタジアム」まさに、「光と影」という感じである。

借りてきたものの、今回は2匹の仔猫を同時に捕まえなければならない。
もし、1匹が捕まる場面に遭遇してしまったら、恐怖のあまり、近寄ってくることさえ無くなる可能性が大だからだ。
捕獲ケージに親猫(既に手術を済ませている)が捕まっても、結果は同じだろう。
結局、捕獲ケージは一度も試すことなく返却した。

次に考えたのは、手製のトラップだ。
網を被せるか、敷いておいて上に引き上げるか。
しかし、猫の俊敏性はあなどれない。
わずか5㎝ほどの隙間があれば、そこから脱走されるということは、体験済みである。
いろいろ構造を考えてみたが、これも断念した。精度の高いトラップをつくることはかなり難しいし、これも一度失敗すると、二度と寄って来なくなる可能性が高かったからだ。
ネット上で、「猫の捕まえ方」で、いろいろ検索してみたが、有効そうなものは見つからなかった。

最後と言ってもいい可能性は、ねぐらとして使っている衣装ケース(側面に猫一匹が通れる穴が開けてある)に、二匹が中に同時に入っている時に捕獲する方法だ。
ケースは玄関の前に置いてあるので、中にいそうな時を見計らって、外から板のようなもので、閉じ込めようとした。
しかし、これだと中にどの猫が入っているか確認して閉じ込める余裕が無いため、まったくうまくいかなかった。
一度、二匹が入ってる時に蓋をしようとしたが、すんでのところで逃げられてしまった。
これを繰り返していると、ケースに入らなくなることは間違いなかった。

そこで、ケースに細工をして、入り口のところに、金網が落ちて閉じ込めるような仕掛けを作ることにした。
あれこれ試行錯誤をして、上方から水糸で網を吊って固定し、家の中から糸を切って網を落とすことができるようにした。
しかし、それでは、ケースに入っているのか、2匹一緒なのかも全然わからなかったので、wifiで飛ばすモニター・カメラを増設し、スマホからケースの中が確認できるようにした。

これで万事うまくいくはずだった。
しかし、ここからが実に3か月近くかかった。
他の牡猫(この牡も手術済み)がケージを占拠してしまったからだ。
いくら何でも、この猫をケースから追い出すわけにはいかない。
仕方が無いので、この牡猫が他のケージに移動するよう、もうひとつケージを買ってきた。
そして古い布団のマットレスを敷くなどして、居心地よくした。
それでもそんなに都合よくいくわけもなく、猫たちは入ったり入らなかったり、仔猫たちも大きくなって、あまり親猫と行動を共にしないようになった。
もはや無理かと半分あきらめの境地だったかもしれない。
それでも3か月間、カメラのモニターを覗くことだけは続けた。

そしてある日、ついにその日はやってきた。何の前触れもなく。
午後7時過ぎ、外は真っ暗であるが、モニターは暗視モードに変わっていた。猫の目はひときわ明るく光る。
ケースの中に2匹いれば、3,4個の目が光り、その存在がわかる。
しかし、いくら目をこらしても2つの光しか確認できなかった。
1匹はいるが、もう1匹がいる、しかも2匹が仔猫2匹であるという確証がなかなか取れなかった。
そのうち、二つの塊がじゃれ合うような動きを見せた。これは仔猫2匹である可能性が高い。
そして、1匹が正面を向いた時、それは特に怖がって近づかない方であることが確認できた。
もう迷いはない。
3か月の間、手を触れなかった水糸を切った。
正直、水糸が少しでも引っ掛かっていれば、そこで終わりだった。二度とチャンスは来ないだろう。
ストンと網が落ちるかすかな音がした。


こうしてやっと目的を遂行することができた。
思い返せば、「手を触れることさえ出来なかった対州馬を飼養する」という難題をクリアーする経験がなければ、とても気持ちは持たなかっただろうと思う。
無邪気に遊んでいる姿、親猫について歩き、お乳を飲んでいる姿。
何よりその姿を二階の窓から眺めていた娘のことを想い起こす。
そして、仔猫たちのこれからの、幸せな日々を願ってやまない。




いいなと思ったら応援しよう!

江島 達也/対州屋
※「チップ」は有難く拝受させて頂きます。もし、この記事が多少でも役に立った、或いは「よかったので、多少でもお心づけを」と思われましたら、どうぞよろしくお願いいたします。贈って頂いたお金は1円たりとも無駄にせず大切に使わせて頂きます。