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生存記録その5〜霧中行軍ウエストポイント〜

1993年9月12日。
ゾンビパンデミック「ノックス事件」発生から2ヶ月経った頃。

ここリバーサイドは既に電気や水道などのライフラインが止まり、不便な生活に困った僕は、友人達の開拓により発展著しい隣町・ウエストポイントへの移住を決意した。

1993年10月1日。
季節は秋に入り、朝晩涼しく過ごしやすくなった頃。僕は今まで集めた資材や武器、発電機と、3日分の食料を車に積み、夜が明けると今まで暮らしたセーフハウスに別れを告げ、ウエストポイントに向けて旅立った。

道中、なるべく車にダメージを与えないよう、道路を徘徊するゾンビを避けながら幹線道路を走る。
しばらく走ると住宅は無くなり、林道と農場ばかりが続く。典型的なノックス群郊外の風景だ。

と、前方の視界が急に真っ白になった。数メートル先しか見えない。濃霧だ!
なんてこった、このタイミングで。
僕は車のスピードを落とし、霧の中からいきなり姿を見せるゾンビにビビりながら、轢かないよう慎重に徐行運転する。1日車を走らせれば辿り着けると思ったが、こんなペースではウエストポイントに着くまで3日はかかってしまう。

ふと霧の向こうを注視すると、道路が何かで塞がれている。僕は急ブレーキをかけ車を止めた。
規制線だ。道路いっぱいにコンクリート製の柵が設置され、その向こうを2台のパトカーが塞いでいる。濃霧の中で、パトカーのそばに制服姿の人影を見つけた。助けておまわりさん!!
車から降りて近づくと、2人のお巡りさんはゆっくりとこちらを向き、両手を伸ばして唸り声を上げながら近づいてきた。警官ゾンビだった。
きっと死の直前まで仕事してたんだな。感染がこれ以上拡大しないように、規制線を敷いて往来を禁止してたんだろう。お勤めご苦労様です…。
僕はため息をつきながら、囲まれないようパトカーから離れた道路脇の農地へお巡りさんを誘導し、手製の槍でブスリと突いて成仏させるのだった。

そのとき、真横からいきなり2体のゾンビが現れた。同時に腕に鋭い痛みが走る。引っ掻かれたのだ。
迂闊だった。視界ほぼゼロの霧の中で、他にもゾンビが要ることに気づかなかった。僕は後退しながら、おそらく農場の住民だったと思われるゾンビを槍で始末すると、ひっかかれ出血する腕に包帯を巻き応急処置をした。命に関わる大怪我ではないけど、痛いものは痛い。とりあえず鎮痛剤を飲み、一息つくとこの規制線をどうするか考えた。

運良く霧が晴れたので、大工の腕を生かしコンクリーと柵を解体してみた。が、道を塞ぐ2台のパトカーは動かせそうになかった。ほぼ廃車寸前でエンジンもかからない。自分の車で牽引しようとしたけど、道路脇の柵と木が邪魔で車を入れられない。

万策尽きた上に夜になり、また霧が出てきた。僕は一晩車中泊しながら、怪我もしてるしこれ以上先へは進めないと判断し、一度セーフハウスに引き返すことにした。包帯を変えると怪我の痛みがひどく、襲われた緊張でまだトキドキしている。僕は失意と焦燥感に苛まされながら、車をリバーサイドに向けてUターンさせた。

希望に満ちた僕の旅立ちは、たった2日で振り出しに戻ったのだった。

※この物語はフィクションです。
筆者のゲームプレイをドキュメンタリー風に綴った日記になります。
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