青春な歌詞が、後ろ髪をひく
歌詞が好きだ。
特に、恋や友人、子どもの頃といった青春を思いださせるものにいつも後ろ髪を引かれる。
若さ由来の、ちょっとひねくれてて、それでいて控えめでうぶな歌詞が、耳というより思い出にガーンと響いてくるのだ。
〇
みんな大人になってく 1人道を歩いて
だけどいつもついてくる
そんな思い出作れたらいいのにな
(通学路/Whiteberry)
みんな少しずつ大人になる。
垢ぬけたスーツ姿。
いつのまにか仕事をはじめた友達。
まだ夢を追う幼なじみ。
だんだんみんなが遠い存在になっていくような気がする。
昔のことはすっかり忘れて、「君、誰だったっけ?」とでも言われないか、びくびくしてしまう。
でも、会ってみると相変わらずだったりしてホッとする。
通学路にあった押しボタン信号のこと。
帰り道に遊んだグラウンドのこと。
コンビニで買ったキャンディーのこと。
ささいなことでも思い出せば、みんながとびつくし、ゲラゲラ笑いあえる。
あの時間はもう戻ってこないけど、引き戻してくれる旧友がいる。
たそがれて うなだれて
恋こがれ 涙 風にたくして
何もかも忘れたい 君と僕の約束も
(涙 風にたくして/つじあやの)
「あなたの好きな人が、自分ではない」
そう悟ったとき、どうしようもなく抱いてしまう淡い想いが、ふつふつと湧きおこるもの。
やりきれなくて、芝生の上に寝転がったり、窓を開け放ってたりして空をながめ、物思いにふけることだってある。
どこかから聞こえてくる誰かの声が、あの人の声だったらいいのに。
意味もなく連絡してきてくれたらいいのに。
いろんな想いがごちゃ混ぜになって、ふいに服の袖で視界をおおってしまいたくなる。
また新しい出会いを探そう、と吹っきれたはずなのに、ふとした瞬間、かたく結んでいた糸がスルッとほどけてあふれてくることだってある。
忘れたいけど忘れられないことを「吹く風」にたくしたくなる、そんな気持ち。
こんなして再び会えたから 話そうとするけれど何でだろ?
知らぬ間に戻される 恥ずかしき炎
(P/スピッツ)
大切な人と久しぶりに会うと、何から話していいか分からなくなる。
そして、だいたいの場合そっけなくなってしまう。
ちょっといじわるな言葉をかけたり、意味もなく肩口をはたいたり。
相手を嫌ってるんじゃなくて、気恥ずかしいがゆえの奥ゆかしさなのだ。
特に、好きな人の前だと何を話したのかさっぱりだった。
知らぬまに頭の中がほてってきて、思考回路をパンクさせる。
あとでその記憶をたどっても、中々思い出せない。
ただ、"話せた"という事実だけがずっと残り続けるのだ。
「あまり目合わせてくれないね」
その言葉だけは、今でもはっきり憶えてるけど。
君はロックなんか聴かないと思いながら
少しでも僕に近づいてほしくて
(君はロックを聴かない/あいみょん)
自分が好きなものを誰かに触れてほしいと思うことはよくある。
「この人ならわかってくれそう」
「きっと好きになってくれるはず」
そんな人にはビビッとくる。
発する言葉とか、もってる価値観にふれてみて、明らかに心地よい感触があるのだ。
ただ、そうじゃなくても「この人と、この好きな感じを共有できたらな」と思うことだってある。
きっとこんな歌聴かないだろう。
きっとこんな話は好きじゃないんだろう。
そんなことは分かってるけどさ。
〇
歌詞が好きなのは中学のときから。
一番最初に好きになったのはスピッツ。
スピッツの歌詞は変だ。
有名な「チェリー」「空も飛べるはず」「ロビンソン」の歌詞をよく読んでみても、やっぱり変だ。
ただ、こんな独特な歌詞が世に放たれて、ミリオンヒットしているのはうれしかった。
僕も周りの人からすれば変なことを考えていたから、それがスピッツを通して認められたような気がしたのだ。
そして、スピッツに限らず歌詞を好きになるきっかけにもなったし、紡がれる歌詞が、自分をふりかえるときの目印にもなった。
きっとこれからも人生のいろんな場面で、僕を導いてくれるはず。
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