株式会社ティムス(2022年11月22日)|事業計画及び成長可能性に関する事項の雑感
今週も、グロース市場に上場している企業の「事業計画及び成長可能性に関する事項」をチェックしました。(過去アーカイブはこちら)
今週読んだ資料は、2022年11月22日に東証グロース市場に上場したばかりの株式会社ティムスです。東京農工大学発ベンチャーとして2005年に設立、臨時雇用者を除き、現時点で従業員数は14名だそうです。
株式会社ティムス(2022年11月22日)
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経営数値をみる限り、基本的には赤字基調であることが分かります。
最近ではいわゆる「赤字上場」も珍しくありません。資金調達の一環として広く公募に至ったというのが、今回の上場に至った決め手のひとつではないかと推察します。(もちろんVCの存在も大きいと思いますが)
ティムスの売上の源になるのは、急性期脳梗塞(AIS)の治療薬候補として開発中のTMS-007です。グローバルバイオテック企業のBiogenとの独占契約を結んでおり、いまのところ一時金として2,200万ドルを受領しています。(開発等が全て順調に推移すると、3億3,500万ドルの報酬が期待できるそう)
既存の脳梗塞治療薬「t-PA」の実効性が疑問視されている中で、アメリカの死亡率5位にあたる脳梗塞への特効薬(資料では「AIS治療の第一選択薬」と表記)として期待されています。その辺りの成長可能性の示し方は独特ですが、医療領域に携わる事業ということで学びになります。
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TMS-007だけにフォーカスするのは事業運営上リスクが大きすぎるので、新たな抗炎症剤候補としてTMS-008/009の研究開発を行なっていると資料には書かれています。
ただ従業員数14名であり、赤字基調という体制を鑑みると、この辺りは「参考までに」という意味合いが強いように感じました。(資料もそこまで分量が割かれているわけではありません)
主力製品であるTMS-007の開発プロセスの一部を転用できるのか、いくつかの研究を並行して進めることで主力事業への相乗効果があるのかなど、この分野に精通していない投資家への説明も必要かなと感じました。
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一番気になってしまうのがリスク情報です。
ティムスでは「医薬品の研究開発、医薬品業界に関するリスク」として3点、「事業遂行上のリスク」として2点挙げていますが、5点のうち、ひとつでも顕在化すると、会社経営にクリティカルな影響を与えるのではないかと懸念します。
日本でもここ数年注目されているバイオベンチャー。メガファーマと呼ばれる大手製薬会社への売却など「選択肢」は多岐にわたり、それゆえ国内外の競争も激化しています。研究開発費が増加傾向にあるのは、電子機器など他分野とも共通していますが、開発の末に明確なアウトプットを出せずに終わってしまうというのがバイオベンチャーの「ハイリスク・ハイリターン」ゆえんでもあります。
代表取締役の若林拓朗さんは、2011年より2018年まで当社共同代表取締役を務め、2018年から現職に。創業者の蓮見惠司さんが研究者として開発部分を担う一方で、VC経験のある若林さんが事業を円滑に遂行できるよう舵取りを行なっているような体制のようです。
上場はゴールでなく、あくまでスタート。ティムスの成長曲線が、日本におけるバイオベンチャーのロールモデルになっていくことを期待したいです。
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こちらに過去調査した企業のアーカイブをまとめています。
よければ、ぜひ覗いてみてください。
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