解散した、あの人が(ostooandell「君はまるでダンスしているみたいに」)
ひたすら音楽を聴き続けていた20代前半。
僕も今年で37歳になり、あの時代は遠い昔になってしまった。
当然といえば当然だけど、残念なことに、引退や解散してしまったアーティストも少なくない。
そのうちの1つ、ostooandellというバンド。曽我部恵一さんが主催するROSE RECORDSに所属していた彼ら。ライブを観たことはなかったけれど、「君はまるでダンスしているみたいに」という曲が大好きだった。
必要最低限の音数で、パズルを組み立てるように計算されたこの曲。
ボーカルは素人っぽいし、コーラスは輪をかけて粗いのだけど、どういうわけか彼らの演奏に耳を傾けてしまう。
喪失の歌だ。
「なくした銀のペンダント」「なくした日々」というように、昔あったはずの過去を思い返している。でも現実には戻らなければならない。現実が上手くいっているわけではない。それでも生きていかないと。
「イエーイ、イエーイ」とか「レッツゴー」とか、ビールを飲んだ直後のため息にも似た、間の抜けたシャウトが寒々しい。
でも、好きだった。救われた気がしたのだ。
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今年、ostooandellを聴きたくなって、「そういえば彼らは何をしているんだろう?」と調べてみた。
すると、ostooandellでボーカルとギターを務めていたyukaDは、今も音楽を続けていると分かった。今は地元・沖縄を拠点に活動しているそうだ。
そして彼女は、今年「Masterpiece Heart」という曲を発表した。
いまの彼女が歌う「いま」に、過去の決別を連想するのは、あまりに早計だとは思う。
でも、こう肩の荷を下ろしたように、ゆっくりと歌う彼女の音楽は、自然と「いま」の僕にも重なって。
ああ、いいなあって。こんな風に、ありたいなあって思えた。
不安も、野心も、理不尽も、怒りも、全部忘れてしまって。その余白から生まれた感情を、言葉にすることができてるんだなって驚いた。
音楽が持つ初期衝動は、多くの人たちを巻き込んでいく。
でも、そうではない、自然体が持つ柔和さ。それが、ひとの心を確かに打つのだと証明してくれたのだ、僕に!
また新曲やライブを楽しみに待っていよう。音楽が好きで、本当に良かった。
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