「劇場版 アナウンサーたちの戦争」の舞台挨拶で橋本愛さんが語ったこと
9月10日、TOHOシネマズ日比谷にて、「劇場版 アナウンサーたちの戦争」の舞台挨拶が行なわれた。
登壇したのは、俳優の橋本愛さん。司会を務めたフリーアナウンサー・原元美紀さんの質問に対して、終始言葉を選びながら、真摯に回答されていたのが見事だった。
取材をしたWebメディア各社の記事は、紙幅の関係もあるのだろう、橋本さんの発言の一部のみ掲載に留まっている。
せっかくなので、私がメモした内容をもとに、30分弱の舞台挨拶で橋本さんがどんなことを語ったのか、noteに記したい。座席に座りながらボールペンで走り書きしたものなので、ニュアンスに微妙な差異があり得ることはご容赦ください。(ちなみに映画も、素晴らしい内容なのでぜひ!)
「劇場版 アナウンサーたちの戦争」
(演出:一木正恵、2023年製作)
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Q. NHKのテレビドラマが劇場公開されたことについて
テレビドラマの形で戦争映画をつくれること、携われることの意義と幸せを感じていた。(もともと本作は)映画になったら嬉しいと思っていたので、実際に劇場公開されて嬉しかった。
Q. Instagramに「とても大切な作品です」と投稿していたことについて
携わってきた作品はどれも大切なもの。過去の戦争から現在に至るまで、何を大切にしているのか/何を守りたいのかが問われている。それを映画というものづくりで作品をつくれたことの意義を感じている。
本作は、罪に向き合って罪を描いた作品。主人公の和田を中心に過去の人の物語だが、今も地続きになっているように感じる。こういったテーマに無関心ではいられるかもしれないけれど、無関係ではいられないと思う。
Q. この作品によって愛さんが変わったことは?
この作品だけで変わったことはないかもしれない。
この作品は「言葉」について描かれている。言葉に救われた経験、私は言葉が好きだしなくてはならないものだと思っている。言葉を信じて生きてきた。
自分の言葉によって、相手の人生を変えてしまうことは知っていた。その上で思ったことは伝えようと生きてきた。本作で学んだのは、「何を言葉にしないか」ということの方が大切ではないかと思ったこと。「言葉にしない」ことで守れることについて思いを馳せた。
Q. (来場されている新人アナウンサーに向けて)エールを贈ってほしい
原元さんがおっしゃった、「アナウンサーは根拠のないことは話してはいけない」という教えに共感する。その上で、手応え、これが私のやるべきなんじゃないかという感覚がたくさん降り注いでほしい。声も、身体も、たくさん守ってください。
Q. 森田さんと共演しての感想
もともと森田さんが出演する映画や舞台を通じて、ものすごくパワー/エネルギーを受け取ってきた。撮影前からすごく楽しみで、「あのエネルギーを直接受け取ったらどうなるんだろう」という期待感を抱いていた。そして、森田さんの演じる「和田」を一番近くで感じることができた。
森田さんはどこか、獣のような印象がある。普通の人間は、求められたものに収まるようなところがあるが、森田さんははみ出している。五感の感度が、何を超えてきているようなエネルギー。羨ましいし、素敵だ。そういう表現を私もできるようになりたい。
森田さんの人間性が、和田とリンクしていた。真実み、真剣さが伝わってくる。
Q. 演技に関して、森田さんとコミュニケーションはとったか
特になかった。お芝居で会話し合うような感じ。それだけで十分、相手が何をしたいと思っているかが伝わったと思う。
Q. 演出を務めた一木正恵さんの印象は?
私が中学生のときにお会いして、これまで何作品かご一緒している。一木さん、森田さんとの本読みのときに、その関係性のことを話したら「ズブズブなんですね」と森田さんから言われたのを覚えている。
一木さんは、中学生という私にとっては許せないような自分も肯定してくれた存在だ。いつもエネルギーが螺旋状に沸いていて、止まらない。本作の一木さんはさらにすごかった。この作品に賭けているという思いが伝わってきた。俳優陣はみんな、監督(一木さん)のエネルギーを受け取っていたと感じた。
Q. 演出で印象に残ったことは?
演技に関する演出が少なくなったシーンがあった。一木さんは「真実を伝えたい」という思いがあったのだと思う。そこに渦巻く全て、カメラに映るもの全てに向き合おうとしていたように思う。
Q. 最後にメッセージを
言葉に尽くし難い作品だ。
一木さんの手紙で私のことを「仲間」だと言ってくれたが、私はここにいる皆さんも「仲間」だなと思う。皆さんは自ら選択して、この映画を観ようと思って来てくださった。観るのにエネルギーを使って、帰る頃には疲れているかもしれない。
俳優をしていると、(演技を通じて伝えていることが「伝わった」と)頭では分かる。でも本当に伝わっているのだろうかと、心の中で孤独感を抱くこともある。ここに来てくださった方を見て、改めて仲間であり光だなと感じた。また明日から生きていく力になる。
共に手を取り合って生きていきたい。折を見て、この映画のことも振り返っていただけると嬉しい。
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「劇場版 アナウンサーたちの戦争」は、TOITOITOが運営している映画メディア「osanai」でも紹介している。執筆は、フリーライターやエッセイストとして活動している三好優実さん。素晴らしい内容なので、ぜひチェックしてほしい。
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