「自分はベストセラーなんかに興味がない」という言葉の裏に。

『自分はベストセラーなんかに興味がない』と言っている人こそ、売れているかどうかが基準になっている

そう指摘していたのは、eテレ「100分de名著」で、ハイデガーの『存在と時間』の指南役を務めていた戸谷洋志さん(関西外国語大学准教授)だ。その言葉を聞いて、僕はドキっとした。言葉にすることはないけれど、僕自身がまさに同じような価値観を持っている。ベストセラーにも興味がないし、アカデミー賞などの映画賞とも距離を置きたいと思っている。だけどそう思えば思うほど、個人の尺度を、大衆や権威と切り離せないところに置いているのかもしれない。

ハイデガーは本来性と非本来性という概念を置いている。

「自分は〜〜〜だ」と説明するとき、「〜〜〜」に入る言葉は、環境との比較であることが多く、それは非本来性に基づくという指摘だ。僕は経営者だ、というのも、「経営者でない人たちと異なる自分」という意味で、周りの環境から浮き出ている言葉というわけだ。ハイデガーは、全ての人間が「非本来性から避けることはできない」と説いている。

僕の存在とは、いったい何なのか。

かつて鑑賞した100分de名著を、ふと見直し、そんなことを改めて思うのだった。

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