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展示キャプションの英語タイトルに惹かれる

美術館に行くと、つい作品の展示キャプションに目がいってしまう。

素敵な作品にどんなタイトルがつけられているのか、何で描かれているのか、いつ作られた作品なのか。

その中でも妙に惹かれてしまうのが、英語タイトルだ。

英語が読めるわけでもない。だけど日本語タイトルと比べて、微妙にニュアンスが異なっているときに心が動く。

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例えば2019年、東京都庭園美術館で開催された岡上淑子さんの企画展「フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」。

《夜間訪問》……Visit in Night
《幻想》……Fantasy
《沈黙の奇蹟》……The Miracle of Silence 
《轍》……A Rut
《懺悔室の展望》……View from Penitentiary
《会議》……Meeting
《予感》……Premonition
《水族館》……Aquarium
《マスク》……Mask
(岡上淑子「フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」公式図録より引用。作品はこちらに掲載されています)

このような英語タイトルがつけられている。

作家である岡上さんの意図がどれだけ反映されているのかは分からない。ただ公式図録を読む限り、監修に頼りながらも作家が主導権をとっているのでは?と推測できる。

日本語と英語が併記されていることで、作家の意図が複層的にうつるから不思議だ。

懺悔はconfessionでなく、penitentiary。
幻想は、空想や夢想の意味もあるfantasy。
「轍」という作品にはaという冠詞がつけられている

どんな意図があるんだろう?と考えながら、改めて作品を見直すと、作品が自分の心に近接しているように感じられる。

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公式サイトには掲載されていないが、企画展で「散る」という作品が掲示されていた。

木から落ちる「葉」と並び、人間の顔がコラージュされている不思議な作品だ。

その落ちていることを示すように英語タイトルはFallingがつけられている。落下という意味がストレートに表現されているのだが、日本語タイトルは「散る」だ。

落ちる、でなく、散る。

散るとFallingが並んでいることで、両義性を感じさせるような趣がある。

落ちるように散る
散りながら落ちる
散ることは落ちることだ

様々なニュアンスを勝手に解釈してしまい、気付けば作品にのめり込んでいた。

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緊急事態宣言が発令され、都内の美術館は軒並み中止になっている。

いつか、気兼ねなく美術館を訪ねられるようになったら、ぜひキャプションもじっくりと眺めてほしい。

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堀聡太
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